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【第3弾】教育・学びの未来を創造する教育長・校長プラットフォーム「教育・学びの未来と学校組織」オンラインイベントレポート

<イベント詳細>
■日時:2020年10月17日(土)15:00~17:30
■テーマ:教育・学びの未来と学校組織
■参加地域:北海道〜鹿児島県
■話題提供者:
岐阜市教育委員会/早川三根夫教育長  
長野市立長野中学・高校/菅沼尚校長

本日のテーマ「学校組織の在り方」について

まず、事務局の方のご挨拶として、今回の開催の目的や想いなど共有いただきました。

プラットフォーム (2)

新型コロナウイルス 感染症が世界を席巻した2020年。「今だからこそ現場みんなで」を掲げ、4回連続で開催を決定。

第1回は「学びの保障」、第2回は「学校再開」といった過去から現在の時間軸のテーマで開催しました。
第3回目の10月は、どんなテーマでイベントを開催しようかと考えたとき、「未来」にテーマ据えさせていただきました。
本日は2、3年後どういう教育が必要になっていくのか?教育の未来を議論したいという想いで実施しています。

ぜひ様々な方と活発な議論を通して新たな一歩を築いていただければ嬉しく思います。

今回の事態がどのように未来に繋がっていくのか?
話題提供や参加者の声から未来を想像し「今」をどう積み重ねていくのか、これを読んでいるみなさんと一緒に考えていければと思っています。

1.コロナ前に逆戻りしない地方発の教育の大きな絵を描こう(岐阜市教育委員会・早川三根夫教育長)

まず一人目の話題提供者は、岐阜市教育委員会の早川三根夫教育長です。

「コロナ禍を触媒にし、教育を強くする絶好の機会」

早川教育長からは、地方から新しい教育のあり方を示し、短期的には来年度の教育課程の編成に盛り込み、中期的には教育政策や学校のあり方を見直し、長期的には教育を通して産業構造の転換を促す、そのたたき台として「コロナ禍を触媒にし、教育を強くする絶好の機会」というタイトルで、話題提供を行っていただきました。

論点は「岐阜市の3つの局面」。

第一の局面 「5年先行く岐阜市の教育」について。

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子どもたちの才能開花のためには、個の可能性を最大化するように心掛けるよう呼びかけ、これまで上記のスライドに掲示されているように様々な取り組みを行ってきたとのこと。

そんな中「第二の局面  いじめの重大事態」が発生します。

子どもたちは学校で期待に応えようとする中で大きなストレスを抱えており、そのストレスによる不安が攻撃性に変わり、大人たちの知らないところでいじめが起きてしまった。

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先生たちは、活発な生徒たちの姿に安心していた一方で、生徒たちは、成績をよくするために日々役割演技を強いられており、先生たちはそんな子どもたちの話を聞く時間を確保できる環境ではなかったと言います。
こういった課題において、活発な授業をすることではなく、生徒一人ひとりを大切にできる教員評価に変えていくべきだと方向性を示されていました。

そして「第三の局面 コロナ禍とGIGAスクール」

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GIGAスクール構想は、このコロナ禍において最高のタイミング。GIGAスクールを成功させるには、優れた教材と、子どもの学びの進捗の分かりやすい把握が必須。これは、カリキュラムマネジメントの力量を発揮する時が来たということ。
働き方改革も推進させなければなりませんし、そのためには教育委員会が率先して、これまでやってきたことで優先順位の低いものに関しては「やめます」という発信の必要性を訴えていました。

※話題提供の詳細はこちらの資料からご覧ください。

参加者の声として、話題提供中のzoomのチャット欄では以下のような意見が飛び交いました。

参加者の声1

そして、早川教育長の話題提供に対して、早速様々な質問が上がり以下のような回答をいただきました。

>働き方改革でやってることは?

特効薬はないのが現状ですが、先生たちには夏休みを16連休を取ってもらっている。新人の先生たちは、岐阜市でよかったと言っています。
また、先生たちが忙しすぎるというのを子どもたちが気にしているため、子どもに向き合う時間を作ることは必須です。
コロナ禍で、儀式的な行事をバッサリ切ったことはよかったです。練習がなくても卒業式ができることがわかりました。
休みが取れるように教育委員会がリーダーシップを取って「行事をしない」と発信しています。

>コロナ禍以前に逆戻りにならないためには?

今までやってきたいことは全て意味はあるが、子どもの話を聞くための時間は必要。先生方は良い学級を作ろうというところに全力を上げていたと思うが、それ自体に苦しんでいる子どももいる。
タブレット導入によって子ども一人ひとりを見ることができるので、先生たちも今まで全力でやってきたところを手放して、息苦しさからの開放が必要。もう少しルーズさを持ってもいいと思っています。

>16連休中の部活は?

全国大会レベルは認めているが、それ以外はお休みとしています。

これらの質問や回答から、現場の課題が「働き方改革」にあることも、感じられるやり取りとなっていました。

<ブレイクアウトルーム①>

話題提供の後、早川教育長からは「コロナ前に逆戻りしないために、私たちができることは何か?」という問いをいただき、それぞれ4、5人のグループ(ブレイクアウトルーム)に分かて議論を行いました。
出た意見をいくつかピックアップしたいと思います。

ブレイクアウト1

『コロナ前に逆戻りしないために、私たちができることは何か?』

中学校校長Aさん
確かに儀式的な行事はなくなりましたし、それがなくても学校が機能するのはわかったのですが「本当にそれでいいのか?以前のやり方の中にも意義はあったのでは?」と考えています。
例えば、参観日はフリー参観として人数分散で行いましたが、保護者の方は関心が高く、1週間の間に8割は来たんです。
そのような現状からも、全てをなくすのがいいのというのは一概には言えないと感じています。
菅沼校長
振り返ると、登校再開直後の40分授業はよかったです。放課後に余裕ができて、子どもたちとの時間が取れたので。実質放課後2時間くらい余裕ができました。
今は50分に戻さずに45分でやっていますが、遅れた授業を取り戻すだけではなくて、時間の使い方を考える必要があると思います。
行事もオンラインやリモート参加など、新しい武器を持てたので、文化祭も今までのやり方でない方法でやることができるようになりました。
中学生に行う学校説明会は、オンラインの映像配信で、短時間に多くの授業・部活等を見ることができるメリットもありました。
良い悪いより、新しく見えたものをどう生かしていくかが大事だという気づきを得ました。
中学校校長Bさん
自分自身は、革新的なタイプで、YouTubeの動画配信をドローンなどを飛ばして映すということにもチャレンジしました。逆に先生方は保守的な人が多く、新しいことに対して批判も上がりました。「保護者が見たいんじゃないのか?」ということを伝えても、合意を得るのが難しかったので、先生方の意識改革が必要なんじゃないかと思っています。
最終的に授業をどうするかは教員次第。ここは校長としてはどうしようもないところではあるんですよね。校長に裁量や権限があるからといって、校長の意識次第でなんでもできるわけでもないのです。

様々な方からお話を伺っていると、同じ日本でも、地域や学校、子どもたちによって課題は様々で、ただ一つの正解などないことが分かります。
そのような難しい状況の中で、そもそも何が良くて何が悪かったのか、子どもたちにとって何が最適なのか?という根本的な問いが論点となっていることに、とても心強さを感じました。

2.Afterコロナを考える-新しい学校の日常に向けて-(長野市立長野中学校・長野高等学校・菅沼尚校長)

二人目の話題提供者は、長野市立長野中学校・長野高等学校・菅沼尚校長です。

長野市立長野中学校・長野高等学校は、1919年に女子校としてスタートし、昨年百周年を迎えました。10年ほど前、男女共学、単位制総合学科に衣替えした長野県下唯一の市立高校です。2017年に中学校が併設され中高6年間一貫した教育内容を模索しています。斬新な教育内容が特徴的で、NPO法人との協働など外部連携にも積極的に取り組まれています。
菅沼校長は、2018年4月に着任されました。

菅沼校長は、自分たちの世代が「様々な問題を先送りにしてきてしまったのではないか」との見解から、「せめて若い人たちがイキイキと学べる環境を作ってあげたい」という気持ちで校長を務めているということで、今回のテーマ「学校組織の在り方」について以下のようにお話いただきました。

現在、MicrosoftのTeamsを使って時間割どおりに授業を進めることができるようになっているとのこと。
市教委等の努力もあり、全生徒にタブレットの配付ができることになったそうです。遠隔授業に関しては、日々走りながら改善しているとのこと。

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生徒たちの現状は、学校再開で多くの子どもが喜んで登校している一方で、学校に行くことがこれまで以上に辛い子もいる。もともと、「学年・学級制」というものが学校での「同調圧力」でもあり、生徒一人ひとりが変わることで全体に馴染むことを求めている。コロナ禍の中で、このような雰囲気がより強まっているように感じているとのこと。

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例えばラグビーのワールドカップで話題になった「ワンチーム」という言葉も安易に使うのは危険であるとのこと。今は、生徒たちに全体に合わせることを求めるのではなく、学校の仕組みの方を変える必要があるとお話されていました。
そして、仕組みを変える上では、学校に様々な学びの場があることが必要で、生徒たちが多様な人と交流しながら、多様な価値観に触れることができるために、同年齢や人生の大先輩より、少し先を行く大学生や若者との関係(ナナメの関係)が重要と考え、外部連携などにも積極的に取り組まれていると話していただきました。

高校生年代をどう捉えるか?

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これらの低い数字は、50年間、学校を社会から切り離してしまったことが原因ではないかと考えている一方で、VUCA の時代と言われる時代の変化を一番敏感に感じ取っているのが若者であるとのこと。自分たちが動かなければ未来は拓けないことは彼ら自身が実感し行動に移しているということを現場の視点から伝えていただきました。

※話題提供の詳細はこちらの資料からご覧ください。

参加者の声として、話題提供中のzoomのチャット欄では以下のような意見が飛び交いました。ここでは拾いきれないほどで、文字だけでみなさんの熱気が伝わってくるほどでした。

参加者の声2

<ブレイクアウトルーム2>

話題提供の後、校長からは「生徒の主体性を引き出すために、我々自身がどのように主体性を持って動くべきか?」という問いをいただき、それぞれ4、5人のグループ(ブレイクアウトルーム)に分かて議論を行いました。
ここでも出た意見をいくつかピックアップしたいと思います。

『生徒の主体性を引き出すために、我々自身がどのように主体性を持って動くべきか?』

小学校校長Aさん
教員の特徴として言ったことができる優等生の人たちが多いですが、その反面、指示待ち人も多い。そういった人を動かすような仕組みを小学校で作っている。
例えば、校務分掌。仕事をこなすだけの校務分掌にはせず、プロジェクトベースにして主体的に取り組めるようにしている。
そういったタスクフォース型の組織づくりを進めてきました。
某自治体教育長Aさん
職員室だけを見回してもリソースがありません。
外部の人と連携しながらとかコミュニティスクールなどとの連携の中でやってもらう必要があるが、基本的にはお金がかかります。
今後は、お金がないことが課題になると思っていますが、長期的に見れば、良い教育をしていけば、住民が増えて住民税によって潤沢になる。
ただ、スタートアップは資金がないです。スタートアップの資金を、クラウドファンディングやふるさと納税などで集めていきたいと考えています。

スタートアップ以降どうしていくかに関しては、人が住むようになってくれば、学校に若い人が関わってくれるようになるのではと想像しているので、学生らが学校に関われる仕組みがあればいいなと思っています。

教員の「働き方」について

そして、早川教育長の話題提供後の質問でも関心の高かった「働き方」について、最後のブレイクアウトルームでこのようなやりとりがありました。

早川教育長
教員の仕事は「生きがい」と「(仕事の)やりがい」が近い距離にあるから、24時間子どものこと考えてしまうなど、タイムマネジメントが難しい。
現場での起こることも大変なことの方が具体的に表現しやすいので、そればかり語ってしまう。日々の幸せなことを言葉になかなかできてないことも多い。
また、いい学級を作ることと、いい学校を作ることにはギャップがあると思っている。学級経営と学校経営は≒(ニアリイコール)なところもあるけれど、そうじゃないところも増えている。そのための学びは管理職にはほとんど用意されてないだろう。
どのようにしてその学びを入れていくかは、教職大学院など有効だ。積極的に学びをぶち込んでいくことがキャリアパスの中では大事。
また、そういった学びの中で管理職がマネジメント能力を身につけることが、遠回りのようでいて働き方改革には有効だ。

どうしたら教員の仕事が「楽しい」ということが伝わるでしょうか?

小学校教員Aさん
楽しいということに気づいている人は声を出していないと思う。
自分は、中休みに子どもと遊んでいて、給食食べてる時間も、授業中も何やってもいい空間が与えられていて、その時間全部お給料をもらっており、いい仕事だと思っている。
あまりに準備をしすぎて、その路線に子どもたちが乗らないとイライラしてしまう人が多いように感じる。子どもに学ばない権利があってもいいのではないか。
ただ、行事は多すぎると思ったので、減らせるところは減らしていく必要があると思っています。
小学校教員Bさん
2年前まで残業するタイプだったが、新しく着任した校長が、早く帰って自分の時間作った方がいいとおっしゃられたので、この一年は定時に帰って、都内で勉強会に参加して、色々学んでいる。教員自身も学ぶ時間が必要だと思っている。
同僚にも同じ考えを持っている人には学びをシェアしている。
教員のライングループにも共有しているが反応があまりない。
周囲にも『アクティブな教員』になるように支援や働きかけをしている。

みなさんからは、管理職や教員としての「学び」というキーワードが出てきましたが、学び続ける原動力はなんでしょうか?

早川教育長
私が学ぶ理由はただ1つ。リーダーは人を説得する言葉が必要。それを得るために色んな話を聞こうと思うし、色んな人と接しようと思う。人を説得する言葉を持つということが私の学ぶ原動力です。
事務局Aさん
そもそも、人として教育に携わりたいという思いがあって、その自分がたまたま文科省というところで働いている感じです。今は文科省職員という立場にいて、その立場で出来ることも現実を変える上で大事ですが、その思いが原動力で、そこに繋がることであれば何をしていても楽しい。
もう一つは、仲間の存在。このプラットフォームもそうですが、手弁当でやっている同じ想いを持った仲間や応援してくれる人がいることはすごく大きい。
小学校教員Bさん
原動力は子どもたちの笑顔。
しんどいことやってても吹っ飛ぶ。一番嬉しいのは卒業式があること。その瞬間に色んなことを思い出して、それを迎えられた時に最高だと思うことが多々あった。
小学校教員Cさん
原動力は「想いを伝える」こと。
ジャーナリストの番組作りのノウハウを今習っているが、それを生かして学級経営や授業指導に生かしているところです。
小学校教員Aさん
今が楽しいからという感じ。こういうイベントもみなさんのお話伺うのが楽しくて参加している。「子どものために」で動いているのではなく、子どもから学ぶというのが今とても楽しい。

「教員の働き方」というと、社会問題化していることもあり、こういった側面から先生方の仕事が語られることが少なくなってしまったように思いますが、話していくうちに、みなさんの表情や声のトーンが明るくなっていく様子が印象的でした。

修学旅行の実施について

今回、第2回の話題提供者である、京都府南丹市立園部中学校の國府校長も参加されており、前回話題に上った「修学旅行」について共有いただきました。
詳細は、インタビュー記事(前半後半)にまとめられています。修学旅行の意義や、実施に至った背景、実施の様子、また関係者との徹底したコミュニケーションなど丁寧にお話してくださっています。学校関係者、保護者の方などにもオススメです。

最後に

このレポートを書くにあたり、連続開催の第1回から関わらせていただいておりますが、開催当初に比べ、現場の方たちの力強さが増している様子を感じています。
心強さを感じる一方で、この状況を乗り越えていくには、学校任せにするのではなく、現場の方々が目の前の子どもたちと日々対峙して見えてきたことに、もっと学校外の人も耳を傾けていく必要があると思っています。
現場の方以外にも関心を持っていただければ嬉しいです。

次回は4回連続開催の最終回です。
12月19日(土)の開催となりますので、これまで参加された方も、関心を持たれた方もぜひご参加ください。

◆第4弾申し込みページ

◆連続開催第1回レポート

◆連続開催第2回レポート


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