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”Mirror World” - 時空を飛び越え体験を伝えるプラットフォーム-

いま世界中で新しい生活様式が、意図しない形で求められている。
それは新型コロナウイルス(COVID-19)によりもたらされるWithコロナ、Afterコロナ、NEW normalといった言葉の浸透が想像に易い。

COVID-19がもたらした最も大きな変化の1つと言えば、"距離"だと思う。
感染予防のためソーシャル・ディスタンスを保つ。それは日常会話における人同士の距離、旅行や外食など嗜好からの距離、ライブや観劇など文化からの距離。あらゆる体験において距離への意識が改に生まれている。
そして、この数か月でバーチャルな世界での経済活動、コミュニケーションへのニーズが急激に高まった。

ICTの世界では、インターネットやソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)などで体験を伝えること(=情報技術)への挑戦が続いてきた。
そしてインターネット、SNSは見事にコモディティ化した。

では今、世界のイノベーターはどこを目指しているのだろうか。
間違いなく、”Mirror World(ミラーワールド)”はそのうちの一つだ。

ミラーワールドについて、以下構成でまとめようと思う。

【全体】
1.次世代プラットフォームとしてのミラーワールド(本記事)

2.技術結束点としてのミラーワールド -前編-
3.技術結束点としてのミラーワールド -後編-
4.ミラーワールドにおけるユースケースとアプローチ


ミラーワールドとは何か?

簡単に説明すると、現実世界の物体が鏡に映したように仮想空間上にデジタルのコピー(デジタル・ツイン)が存在する世界のことである。
(ミラーワールドは概念・プラットフォームであって、時流によって仮想空間、メタヴァースとも言われてきた)

もちろん、ミラーワールドが勝手に生まれるわけではない。

フィジカル空間はIoTセンシングによってデジタル化され、デジタル空間と重なる領域”共有基盤(コモン・グラウンド)”が形成される。

フィジカル空間のセンシング、クラウド・コンピューティング上への保存、ARグラスやMRゴーグル(以降、総称のXRと表記)可視化といった、一連の流れで登場してくる技術を”Spatial Computing(空間コンピューティング)”と呼ぶ。

フィジカル空間側から、コモン・グラウンドを見たときにXR技術を用いて可視化された世界がミラーワールドである。

フィジカルワールドとミラーワールド


WIRED創刊エグゼクティヴ・ディレクターであるケヴィン・ケリーが20年前の書籍『New Rules for the New Economy』以来、XRのプラットフォームが来ると言っており、昨年はミラーワールド特集がWIREDで組まれているので興味がある方はミラーワールド特集を読むことをオススメしたい。


体験を伝えるインターフェースの変遷

上記のWIRED特集や多くの有識者が語られているように、ICTのプラットフォームはインターネット・SNSを経てミラーワールドに至る。

これはIT革命以降のインターフェースの変遷であるため、理解を深めるために、体験を伝える手段の変遷について遡って図解すると以下になる。(MESON,inc梶谷さんの図解されている変遷図を大いに参考させていただいた。最後にリンクを貼っておくのでこちらも読むことをオススメしたい)

MW_体験の変遷

初め、情報は”特定の場での伝達”が行われていた。情報伝達は人間自身の所作や口伝によって行われてきた(師匠に弟子入りして見て学ぶイメージ)。

次に、グーテンベルクの活版印刷技術による印刷革命により、による”情報の大衆化”が起きた。

IT革命以降、Internetの登場により”情報のデジタル化”が進み、次にSNSの登場により”つながりのデジタル化”が進んだ。

そして、空間コンピューティングにより”モノのデジタル化”が訪れ、身の回りのすべてがデジタル化される。


ミラーワールドの価値

ミラーワールドに至るユーザ・インターフェースの変遷については先述の通りであるが、ミラーワールドの到来によって何がもたらされるのか自分なりの解釈は以下となる。

MW_もたらす価値2


普段の生活空間は当たり前のように3次元であるが、文章の印刷された紙、インターネット、SNSでは情報が2次元に圧縮されてしまうため、情報の欠落、もしくは、欠落を補完するためにロー・コンテキストになってしまう。

一方、ミラーワールドでは、元来のフィジカル空間における情報伝達と同じ3次元の情報伝達となる。そのため情報落ちの少ない、ハイ・コンテキストなプラットフォームになりうる。
(活版印刷以降、体験・価値が何世代も受け継がれるという特性を鑑みると4次元と言えるかもしれない)

ミラーワールドの価値は、時間と空間を飛び越えてリアルに価値を伝えるプラットフォームであることだ。


ここで、よくいただく質問を紹介したい。

Q:”Second Life”や”アメーバピグ”とはどう違うの?

200年代後半にブームとなった"Second Life"、2011年に1,000万ユーザーを突破した"アメーバピグ"は、より臨場感のあるコミュニケーションを求めアヴァターを実装したSNSであり、多くのユーザーを獲得した。

回答は以下だ。

A:”Second Life”や”アメーバピグ”がバーチャル空間で完結しているのと対照に、ミラーワールドはフィジカル空間あってのバーチャル空間である。

つまり、ミラーワールドという概念は、都市・街や公園、演劇場、博物館といった、特定の場所が持つ”重力”を大切にするものである。


ミラーワールドをイメージアップする

ミラーワールドをイメージアップするには、SF作品を観まくるが良い。
以下該当する作中のデバイスを中心に紹介する。

日本のアニメーション作品だと
・スカウター(ドラゴンボール,1989)
・東のエデンシステム(東のエデン,2004)
・電脳眼鏡(電脳コイル,2007)
・オーグマー(SAO オーディナル・スケール,2017)
海外の作品だと
・R2D2が映し出したレイア姫のホログラム(スターウォーズ,1977)
・マトリックス(マトリックス,1999)
・ジェスチャーグローブ、空中投影ディスプレイ(マイノリティ・リポート,2002)

今から観るという方は、電脳コイルをお勧めしたい。ミラーワールドを目指す世界中のイノベーターに”電脳コイル”というコンテキストが通用するのである。

というのも、(ネタばれになるため明記しないが)日本のSF作品らしくユートピアを描いているためワクワク感が得られることに加え、電脳コイルの世界観が色々な意味でちょうどよく、サイバー・セキュリティや未来への示唆も含んでいるからだ。
(対して、海外の作品はディストピアの傾向が強い)

ミラーワールドをイメージアップしたい、色々な人と取り組んでみたいという方は、コンテキストを共有するために電脳コイルから始めることをお勧めする。


まとめ

・ミラーワールドとは、現実世界の物体が鏡に映したように仮想空間上にデジタルのコピー(デジタル・ツイン)が存在する世界のこと

・フィジカル空間のセンシング、クラウド・コンピューティング上への保存、ARグラスやMRゴーグル(以降、総称のXRと表記)可視化といった、一連の流れで登場してくる技術を”Spatial Computing(空間コンピューティング)”と呼ぶ。

・ミラーワールドは、リアリティのある体験・価値を時間と空間を飛び越えて伝えるプラットフォームであり、特定の場所が持つ”重力”を大切にするものである

・電脳コイルを観ると、界隈の人とコンテキストが一致しやすい。


最後まで読んでいただきありがとうございました。


<<参考にさせていただいた記事>>



余談だが、「ミラーワールド」で検索していると”このほど194カ国目の国連加盟国となることがジュネーヴの国連本部で4月1日に発表された”というエイプリルフールネタにより、思わぬ時間の使い方をしてしまうので注意しておきたい。
僕はありえなくない話と思っているので1時間ほど国連のホームページを検索して回ってしまった。現実にしたいですね。







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