”Spatial Computing” - 技術結束点としてのミラーワールド -(前編)
【全体】
1.次世代プラットフォームとしてのミラーワールド
2.技術結束点としてのミラーワールド -前編-(本記事)
3.技術結束点としてのミラーワールド -後編-
4.ミラーワールドにおけるユースケースとアプローチ
ふりかえり
”Mirror World(ミラーワールド)”と”Spatial Computing(空間コンピューティング)”については以下のようにまとめた。
フィジカル空間のセンシング、クラウド・コンピューティング上への保存、ARグラスやMRゴーグル(以降、総称のXRと表記)可視化といった、一連の流れで登場してくる技術を”Spatial Computing(空間コンピューティング)”と呼ぶ。
フィジカル空間側から、コモン・グラウンドを見たときにXR技術を用いて可視化された世界がミラーワールドである。
本記事では、ミラーワールドのインターフェースである”Spatial Computing(空間コンピューティング)”についてまとめようと思う。
ミラーワールドが技術結束点の1つである理由
抽象的な図になってしまうが、ミラーワールドを構成するであろう要素技術をまとめると下図のようになる。
それぞれの要素については図中で説明させていただいているので、なぜこのような配置になっているのかに絞ってお話ししたい。
・空間コンピューティングによるセンシングとインタラクション
XR・Haptics・Avatar・3DMap・Photogrammetry・AR Cloud・LiDAR・IoT Sensingが代表的な要素技術。フィジカル空間のモノを読み取ることでDigital Twin(デジタル・ツイン)を生成し、デジタル空間とのインタラクションを生む。(次の章で詳しく説明)
・5Gによる”神経回路”接続
それぞれの要素技術間の通信は高速大容量(20Gbps)・同時多接続(100万台/1k㎡)・低遅延(1ミリ秒)によって、同時に多くの人のインタラクションを可能にする。
・AIによる”意味づけ”
空間コンピューティングによって生成されたデジタルツインにAIが様々な情報を判定・付与すること意味づけがなされる。第三次AIブームの出口戦略として重要な領域。
(この”意味づけ”は認知科学、知覚論などを含む大きなトピックなので別途切り出してまとめようと思う)
・Block Chain(ブロック・チェーン)による”トランザクション管理”
デジタルツインはXRデバイスによるインタラクションが可能となる。例えば、有名な絵画のデジタルツインをマーケットプレイスで購入し、自室の仮想空間に飾るなどの経済活動などがあげられるだろう。
その際に発生した、ミラーワールドにおけるインタラクション(上記の場合は、”購入(=所有)”と”飾る”)はブロック・チェーンによって記録管理されるだろう。
・社会実装という観点
IoT・Haptics・クラウド技術・AI・ブロックチェーンは、どれも多くの技術者が取り組んできた難易度の高いテーマであることは間違いない。
ただ、技術的な難易度というよりも、社会実装の難易度が高いように思える。
ユースケースが限られる、収益化を鑑みるとBtoBになってしまうなど理由は数多くあると思うが、どれも単体では社会実装(=コモディティ化)には遠いように感じる。
そこに、ミラーワールドという目標を設定してみると、偶然にもそれらの技術が目標に向かって収束するのである。加えて、COVID-19の影響により世界中で人々の”距離”に対する認識がバーチャル空間に向いているのである。
このように考えると、IT革命以降世界中で取り組まれてきた技術が、ようやく一つの世界観に向かって一致し収束し、社会実装されていく。
これが、ミラーワールドが技術結束点の1つである理由である。
空間コンピューティングの技術レイヤー
空間コンピューティングの要素技術は様々な機能をもっている。
それぞれどんな役割を持っているのか?まとめてみると以下のようになる。
・アプリケーション層
ユースケース毎にXRコンテンツ(視覚)がある。
コンテンツのリアリティを増幅させる効果のあるSynesthesia(共感覚)を生むためには、視覚以外の感覚器官へのインタラクションを組み込むことが重要になる。認知科学でのクロスモーダル現象。
・ミドルウェア・プラットフォーム層
(1)IoT、LiDAR、Photogrammetry(写真測量法)はフィジカル空間の情報をセンシングしデジタル化するためのインプット機能を担う。簡単に3Dモデル化する技術が重要。
(2)インプットされたデータはAIによる意味づけ、ブロックチェーンによる記録管理され、3Dモデル化された状態でARクラウドに保存される。
(3)誰かの化身(=Avatar)、大きな建物から小さな花のようなデジタルツインだったり、都市の3Dマップだったりと色々なメタ情報を含んだアウトプットが存在する。
ミドルウェア・プラットフォーム層では、エコシステムを築くことが重要ではあるが、国・業界・地域など文脈の違いを意識することも重要。
・インフラ層
5Gによる高速大容量・超多端末接続・低遅延のインフラ機能。
他にも電力発電所やデータセンターなど該当するものはたくさんあるが、UX(ユーザ・エクスペリエンス)を鑑みると5Gの特性が重要である。
まとめ
・ミラーワールドはIT革命以降の技術結束点
‐ IoTデバイスの小型・軽量・高性能化
- クラウドコンピューティングによるAI技術のコモディティ化
- 通信技術革新における高速大容量・同時多接続・低遅延の5G
- エンターテインメント領域のXRのコモディティ化
- P2Pと分散管理のブロックチェーン
- LiDARとクラウドコンピューティングによるARクラウド
・空間コンピューティングをレイヤー構造でとらえたときに
- アプリケーション層では視覚以外の感覚(共感覚、および、クロスモーダル現象)を意識する。
- ミドルウェア・プラットフォーム層では、エコシステムと文化文脈のバランスが大事になってくる。
今回は、ミラーワールドのインターフェースである空間コンピューティングについて、抽象的な内容でした。
次回は、CEATEC2019、CES2020に参加し触れてきた世界の技術動向、トレンドの内容を織り交ぜながら、ミラーワールドの中心となる技術を具体的に紹介したいと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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