戯曲『走れよ!』

場所は外(宮殿へ続く道みたいな)
王様と衛兵が民衆をいじめている
明転
 
王様 民衆!このやろ!てめーこの!民衆ッ!
 
メロス、止めに入ろうとするも衛兵に止められ、投げられる
その間も民衆をいじめ続ける王様
メロス、止めに入ろうとするもまたも衛兵に止められ、投げられる
民衆をいじめる王様
メロス、もう一度止めに入ろうとするも三度衛兵に止められ、投げられる
 
 
怒ったメロスはどこからか(客席?)パイプ椅子を取り出し衛兵1の腹を小突き、パイプ椅子を振り上げたところを衛兵2に止められ、無理やりはけさせられる
王様は一連のやり取りに気づかず、民衆をいじめつづけている
 
メロス、それを横目に見ながら通り過ぎる
 
暗転
 
 
場所はセリヌンティウス宅
板付きはセリヌンティウス
 
明転
 
セリヌンティウスは何かごちゃごちゃしている。
 
ノック音
 
セリヌ はいよー
 
メロス入り
 
メロス いきなり押しかけてごめんな。
セリヌ いいんだ、気にするな。
 
メロス&セリヌ、椅子に腰掛ける
 
メロス 最近調子はどうだ?
セリヌ まぁまぁだな。そんなことより、なにか相談があってきたんだろ?なにがあったんだ?
メロス ・・・
セリヌ わかった!一週間後の妹の結婚式のスピーチで、何を言うか悩んでるんだろ。
メロス まぁそんなところだな。
セリヌ なんだ、違うのか?
メロス なぁ、お前はさ、最近の政治についてどう思う?
セリヌ どうしたんだいきなり?今まで、お前からそんな話をするなんて、なかったじゃないか。
メロス 実はさっき、王様が民衆をいじめてるところを見たんだ。
セリヌ あぁ、あの王様ならそれくらいやるだろうな。
メロス 俺には政治はわからないよ、でもさそれってやっぱりおかしくないか?あの王様が来てからというものの、国の景気は悪くなる一方だし。
セリヌ 確かにその通りだ。しかしそれがいったいどうしたっていうんだ?
メロス でさ、王様が民衆を苛めてるのを見てたら、腹たってきちゃってさ、ぶっ飛ばしてしてやろうかと思うんだよね、王様。どうおもう?
セリヌ え?ごめんごめん。俺の聞き間違えかな?ぶっ飛ばすって言ってたような気がするんだけど、気のせいだよね?もう一回言ってもらっていい?
メロス だからさ、王様が民衆苛めてんのみたら腹立っちゃって、王様ぶっ飛ばしてやろうと思ってるんだよね。どう思う?
セリヌ え?王様をぶっとばすって言ってんの?
メロス だからそうだって言ってんだろ!
セリヌ なんでお前が切れてんだよ!
メロス お前が何回言っても理解しないからだろ!そんなことより、どう思うよ。
セリヌ どう思うも、こう思うも無いだろうが!そんな馬鹿げたこと絶対するなよ。絶対成功するわけないし、捕まったらお前も間違えなく、他の民衆と同じように処刑されるからな!
メロス ・・・そうか・・・そうだよな。俺が間違ってたよ。やっぱりお前に相談して正解だったわ。持つべきものは友だな!
セリヌ わかってもらえてよかった。俺もお前には死んで欲しくないし、もうすぐ妹の結婚式だからな。
メロス 相談したらすっきりしたよ、ありがとう。
セリヌ いいんだ、気にするな。そうだ、一杯飲んでいくか?いい酒が手に入ったんだ。
メロス いや、おとなしく帰るよ。酔った勢いでぶっ飛ばしにいきそうだから無そうだからな。
セリヌ いや笑えないわ!まぁ気をつけて帰れよ。
メロス あぁ、またな。
 
メロス、はける
 
暗転
 
王宮内王様の部屋
王様板付き
 
明転
 
手にナイフを持ったメロスが入ってくる、酔っ払ってる
 
メロス 王様!
王様  何事だ!
メロス かくごー
 
メロス千鳥足で王様に近づくが、たどり着く前に倒れる
 
王様  !?衛兵!こやつを捕らえろ!
 
衛兵  王様。こやつ寝てますけど、どういたします?
王様  寝てる!?なんなんだよ!とりあえず、牢屋にぶち込んでおけ。目を覚ましたら、私のところに連れてきなさい。
衛兵  はっ!
 
メロス、衛兵につれられはける
 
王様  まったく、王宮に乗り込んで寝るとは大胆なやつだ。
 
暗転
 
 
明転
 
衛兵入り
 
衛兵  王様、やつが目を覚ましました。いかがなさいますか?
王様  連れて来い。
 
メロス、衛兵に引かれながら入り
 
メロス 王様、昨日は大変申し訳ありませんでした!それでは。
王様  いやいや、帰れると思うなよ。
メロス ですよねー
王様  お前、私のことを暗殺しようとしたよな。だから処すよ、明日には処すからな。
メロス ちょっとまってくださいよ、王様ー昨日のはあれですよ、魔がさしたというか、酔っ払った勢いみたいなもんですやん!
王様  言っとくけど、酔っ払いながら、暗殺しにきたのはお前が始めてだからな!ていうか、最初で最後だからな!
メロス 酔っ払いの侵入を許しちゃうような警備もどうかとおもいますけどね。
衛兵  はぁ!?
王様  それはそうだろ!
メロス 本当にすいませんでした!じゃっこれで!
王様  無理だっつってんの!なめてんの?王様なめてるよね?あんま私のことなめてるとあれだよ、処すよ!
メロス ほんとすいませんでした!なんで、処すのだけは勘弁してもらえないでしょうか。
王様  無理でしょ。お前よっぱらってて覚えてないかも知れないけど、私のこと暗殺しようとしてたんだからね。常識的に考えたら処されるでしょ。
メロス 覚えていないなんてとんでもない!しっかり覚えてますよ。言っときますけどね、私お酒飲んで、記憶なくしたこと無いですからね。
王様  なおさらだわ。しっかり覚えてるならなおさら処すわ。
メロス そこをなんとか、処すの以外の罰ならなんでも受けるんで、処すのだけは勘弁してください。
王様  無理無理、もう明日には処すから、他の民衆への見せしめの意味もかねて処すからね。
メロス わかりました。自分の代わりに人質を置くんで、処すのを4日後にしてもらえないでしょうか。
王様  え?え?ちょっと何言ってるかよくわからないんだけど。
メロス だから、人質を代わりに置くんで、処すのを4日後にしてくれませんか!
王様  なんで切れてんの!?お前、自分の立場わかってんの?
メロス あぁ、すいませんでした。でも3日後に妹の結婚式があるんです、なんで処すの4日後にしてもらえません?ひとっ走りして式参加してこっち帰ってんで。
王様  信じられるか!?そんなこと言って逃げる気だろ、わかってるんだからな!
メロス 逃げるなんてとんでもない!必ずかえってきます!信じてください!なので、処すのは4日後に!
王様  人の心は、あてにならない。人間は、もともと私慾のかたまりだ。信じるわけが無かろう
メロス 騙されたと思って!
衛兵  王様、ためしに人質をとって4日後まで待って見ましょう。帰ってこなければ、代わりに人質を処せばいいじゃないですか。
王様  というと?
衛兵  こやつはどうせ帰ってきません。人質を殺すことで、人を信じることの馬鹿らしさを証明してやりましょう。
王様  貴様!!
衛兵  失礼しました!
王様  名案だな。お前、今から隊長に昇格な。
衛兵  ありがとうございます!
王様  メロスとやら、代わりの人質はどこのどいつなんだ?
メロス ・・・すこし考える時間をいただいてもよろしいでしょうか?
王様  よかろう。
メロス ・・・あいつは忙しそうだし、あいつは代わってくれなさそうだしなぁ・・・そうだ、あいつならきっと・・・王様、交渉したい相手がいるのですが、してきてもいいでしょうか。
王様  よかろう。私も行こう。
 
暗転
 
セリヌンティウスの家
ノック音
 
明転
 
セリヌ おぉメロス、どうしたんだ?
 
メロス入り
 
メロス また、お前に相談したいことがあってな。
セリヌ なんだ?今度こそ、結婚式のスピーチについてか?
メロス まぁ、そんなとこだな。
セリヌ あれ?そっちの人は?どっかで見たことあるような?
王様  わしはこの国の王じゃ。
セリヌ 王様!?おい、メロスどういうことだよ!
メロス 実は昨日、王様の家に忍び込んだんだけど見つかっちゃってな。明日処刑される予定だったんだ。でも、3日後に妹の結婚式あるじゃん、どうしても行きたいから、処刑は4日後にしてください。ってお願いしたの。そしたら、人質がいれば処刑を4日後まで待ってくれるって王様が言ったんだよ。だから、人質になってくんね?
セリヌ 断る。
メロス なんでだよ!
セリヌ もし、お前が4日後までに帰ってこなかった場合、人質の俺はどうなるの?
メロス ・・・どうなるんですか?
王様  人質が代わりに処刑されることになる。
セリヌ てことは、もしお前が帰ってこなかった場合、俺が殺されるわけだ。
メロス うん。
セリヌ 引き受けるわけないよね、そんなの。
メロス お前しか頼めるやついないんだ、頼むよ。
セリヌ 無理なもんは無理だ、こんなことで死にたくないしな。
メロス どうしましょう。王様。
王様  どうしようといわれてもな。
衛兵  王様、提案があるのですが。
王様  なんだ、言って見ろ。
衛兵  やつに「人質を引き受け、メロスが4日後までに帰ってきた場合は金をやる。」と提案するのです。そうすれば、やつも引き受けましょう。どうせ、メロスは帰って着ません。なので、お金が無駄になることは無いでしょう。
王様  なるほど、それで行こう。隊長頼んだ。
衛兵  はっ!おい、セリヌンティウス。貴様が人質を引き受け、メロスが処刑までに帰ってきた場合、貴様に日本円にして約百万円くれてやる。これで人質を引き受けないか?
セリヌ ・・・
衛兵  日本円にして約一千万。
セリヌ (首を横に振る)
衛兵  日本円にして約五千万。
セリヌ もう一声!
衛兵  えぇい!日本円にして約一億円!
セリヌ 乗った!
王様  お、おい、そんなに金額を上げて大丈夫なのか?
衛兵  大丈夫ですよ、メロスが帰って来るわけ無いじゃないですか。
王様  そ、そうか・・・?
衛兵  さ、城に戻りましょう。
王様  あぁ・・・
 
全員はける
 
 
牢屋前
衛兵と囚人が板付
 
衛兵  はい、突然ですが、今日は皆さんに新しいお友達を紹介します。セリヌンティウス君入って。
 
セリヌンティウス入り
 
衛兵  はい、みんな静かに。セリヌンティウス君自己紹介を。
セリヌ (戸惑いながら)セリヌンティウスです、よろしくお願いします。
衛兵  はい、じゃあみんな仲良くしてあげてくださいね。じゃあ、セリヌンティウス君の牢屋は…フィロストラトスの隣が空いてるな。一番奥の牢屋だ。
セリヌ ん?
囚人  あ…
セリヌ囚人 あー!お前は今朝の!
衛兵  なんだ、お前ら知り合いか?
セリヌ囚人 いや、なぜか言わないといけないような気がして。
衛兵  はぁ?よくわからんが、フィロストラトス、セリヌンティウスにこの牢屋の案内してやってくれ。頼んだぞ。
 
衛兵はける
 
囚人  セリヌンティウスさんは何で牢屋に入れられたんですか?
セリヌ 説明しにくいんですけど、知り合いの代わりにというか、人質というか・・・
囚人  へー、自分、この牢屋に入れられて結構長いですけど、そんな人初めてですよ。
セリヌ そうですよねー。えーっと・・・
囚人  フィロストラトスです。
セリヌ フィロストラトスさんはなんで牢屋に入れられてるんですか?
囚人  いろいろやってきましたらねー
セリヌ 色々っていうと?
囚人  強盗、殺人、強姦・・・他にも色々やったけど、挙げていくとキリがないなー
セリヌ ・・・冗談ですよね?
囚人  冗談じゃないですよ。・・・そんなことより、セリヌンティウスさんって、いい体してますよね。
セリヌ ・・・メロス、早く帰ってきてくれぇぇぇぇぇぇぇ!!
 
暗転

明転
 
メロス、走りこんでくる
 
妹   お兄様どうなさったんですか?お疲れのご様子ですが。あ!また二日酔いですね!町に行くのはいいけど、飲みすぎには気をつけてとあれほど言ったのに。
メロス 違うんだ。いや、少し頭は痛いけど。私は町に用事を残してきたからすぐに戻らねばならない。明日、お前の結婚式を挙げる。村の皆に伝えて来い。早いほうがよかろう
妹   本当ですか?
メロス あぁ、本当だ。さ、村の皆に伝えてこい。結婚式は、明日だと。
妹   はい!
 
妹嬉しそうにはけていく
 
少し時間が経ち、結婚式が終わり祝宴が開かれていた
メロスはすでに酔っ払っていて、妹に管を巻いている
 
妹   お兄様!すこし飲み過ぎじゃないですか?
メロス なにを言ってるんだ!こんなにめでたい日に飲まないやつがあるか!
妹   けどお兄様、町に何か用事を残してきたからすぐに戻らないといけないんじゃないですか?
メロス あーそれはな、明日の朝一で行けばなんとかなるからいいんだよ!
妹   そうなんですか…
メロス そうそう、そんなことより今日は宴だ!お前が遂に結婚したんだからな。いいか、俺が嫌いなことは人を疑うこととウソをつくことだ。だから亭主との間に秘密を作ったら駄目だぞ。俺は。人を疑うことと、ウソをつくことは、大ッ嫌いだからなぁ。あ、あと、俺はたぶん偉い男になるから、おまえもその誇りを持っていろ!
妹   はぁ
メロウ よーし、じゃあかんぱーい!!!
 
と言ってさらにお酒を飲むメロス
 
妹   お兄様!?お兄様、起きてください!朝ですよ!
メロス ん?あぁおはよう。うわー頭いてぇ…ちょっと水持ってきて
 
妹、水を持ってきて手渡す
メロス、一口水を含む
 
妹   お兄様、町になにか用事があるのでは?
メロス ぶー!!(水を口から毒義理のように噴出す(出来れば妹に))そうだった!行かないと!いつまでも幸せに暮らすんだぞ
 
二日酔いに苦しみながらも家を飛び出すメロス
 
妹   お、お兄様??
 
困惑しながらはける妹
メロス、城を目指して必死に、真面目に走っている
ナレーション メロスは走った。雨にも負けず、風にも負けずに走った。途中で川の氾濫や山賊に襲われたけど、その辺の件は面白くないのでカットすることにして、とにかくメロスは真面目に走った。
 
メロスはける(1ゲロしてもいいかも?)
 
 
王様に続いて衛兵に連れてこられるセリヌンティウス
うなだれるセリヌンティウス。今にも処刑されそうな雰囲気
 
明転
 
王様  セリヌンティウスよ、残念だったな、メロスは逃げ出したようだ。
セリヌ ・・・
王様  さて、処刑の時間だ。隊長、やれ。
衛兵  はい!(セリヌを磔にする)
王様  最後に何か言い残すことはないか?
セリヌ (口を開こうとする)
メロス その処刑待った!
 
メロス入り(かっこよく登場OR二日酔いに苦しみながら)
 
メロス 王様よ!約束どおりに帰ってきたぞ!セリヌンティウスを解放してくれ!
王様  まさか、本当に帰ってくるとわな。隊長、解放してやれ。
衛兵  (セリヌを解放する。)
王様  ワシは君たちの友情に感動した!メロス、君を処すのはやめにしよう!
メロス 本当ですか、王様!?
王様  本当だとも。
メロス ありがとうございます。・・・セリヌンティウス、すまなかった。走っている道中、君を裏切り、城に帰ってくるのを諦めようとしてしまった。本当にすまなかった。
 
セリヌ、メロスを殴る
 
メロス ちょっとまて、まだ何も言ってないだろ!!
セリヌ 裏切りそうになっただと!ふざけんな!
メロス ふざけるなって、お前この3日間俺のことを疑ったこと無かったのかよ!
セリヌ あるよ。山ほどあるよ。
メロス よし、俺にも殴らせろ。
セリヌ なんでだよ、俺は本当はやりたくなかったけど、お前がどうしてもというから人質になってやったんだぞ。むしろ、人質になる前から、帰ってくるか疑ってたわ。
メロス なってやった?なってやったんじゃなくて、金のために人質を引き受けたんだろ!
セリヌ そうだよ、わるいかよ。おい王様!お金持ってきて!
衛兵  王様、これ本当に、友情ありますか?
王様  なさそうだな・・・とりあえず、セリヌンティウスに金を渡してやれ。その後、メロスを磔にして、やつを処そう。
衛兵  はい!(セリヌに金を渡し、メロスを磔にする。)
セリヌ (金を持ってニヤニヤ、パタパタ)
メロス (抵抗しながら)えっ、えっ、ちょっと待ってくれよー
 
明かりが徐々に暗くなっていく
 
 
終わり

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