アドベンチャーツーリズム
アドベンチャーツーリズムって知っていますか?
たぶん、ほとんどの方が初めて聞く言葉ではないでしょうか。
100 ヶ国 1400 会員で構成される世界的なアドベンチャーツーリズム推進団体「Adventure Travel Trade Associatio」はアドベンチャーツーリズムをこう定義しています。
「アクティビティ、自然、異文化体験の3要素のうち、2つ以上で構成される旅行」
これだけだと、ちょっとイメージしにくいですね。
アドベンチャーと言えば、映画「インディージョーンズ」のような”冒険”ですよね。断崖絶壁でのロッククライミング、山道を100キロ以上歩くロングトレイル。危険でハードなものをイメージしてしまいますが、意外にも散策や文化体験等が主流のようです。
重要なのは、地域をより良く知り、地域の方々と深く接するための旅行であることです。
基本的にはエコツーリズムと同じような旅行形態ですが、アドベンチャーのほうは海外の富裕層をターゲットにしています。
いま、東京と京都に外国人旅行者の7〜8割が集中して、住民が路線バスに乗れないなど、完全なオーバーツーリズム(キャパシティ以上の観光客が押し寄せている状態)になっています。
そこで政府はもっと地方に足を運んでもらい、旅行者を分散したいと考えていますが、あまり大勢の外国人が地方に押し寄せても、受け入れ先が対応できません。
そのため、少人数のリッチな旅行者をターゲットに長期滞在型のアドベンチャーツーリズムを推進しています。
さて、19日は縁あって、アドベンチャーツーリズムのシンポジウムに参加しました。このシンポジウムはJALやJTBなどの民間企業や観光関連団体、大学で構成される日本アドベンチャーツーリズム協議会が主催したもので、環境省、観光庁、文化庁など行政担当者も講演されました。
「コロナでこの3年間辛かったが、官民一体となってインバウンドを盛り上げていこう!」そんな官民の熱気を感じました。
具体的なアドベンチャーツーリズムの事例としては、「1泊100万円」で天守に宿泊できる城ステイ(愛媛県大洲市)や眺めのいい茶畑の真ん中に「天茶台」を設置して、茶師が淹れる最高級のお茶を楽しむティーツーリズム(1時間1万円/佐賀県嬉野市)などが挙がっていました。
パネルディスカッションでは、以前ご紹介した熊野古道のエコツアーの先駆者である内山裕紀子さんが登場されました。(実はこのシンポジウムは旅行業界の関係者向けで、内山さんからのご紹介で私は参加できました)
内山さんはエコツーリズムの第一人者ですが、このアドベンチャーツーリズムのシンポジウムでも注目を集めていました。
なにせ、講演者の方々がほぼ全員口を揃えて、「内山さんのような人材が各地に必要」と話されていましたから。
大型バスで移動し、既存の観光名所を駆け回り、添乗員が全て説明してしまうようなツアーに関心を持つ外国の富裕層はいません。訪れる土地の人々と語り合い、その土地でしかできないリアルな異文化体験を求めています。
そのような体験旅行を実施するには地域の協力者が必要です。
内山さんのツアーがおもしろいのは、超地元密着だからです。民家のトイレを借りるなんてざらです。外国人からすれば、新鮮な体験です(笑)。
内山さんはあえて地元の小さな商店を休憩場所にしたりします。自然と地元の商店にお金が落ちる仕組みです。
地域の人が自然にどんどん集まって、旅行者に郷土料理をふるまうという嬉しいハプニングもしばしば。旅行者と住民の両方に喜ばれるツアーを実践しています。
これは通常の旅行会社ではできません。というか、普通の会社員では無理です。地域の人脈がありませんから。
その点、内山さんはもともと地域活動でボランティアの観光ガイドを始め、その後地域で観光会社を立ち上げました。「地域活動を仕事にした」稀な人です。現在も複数の地域団体の役員を務めています。
いま、旅行会社は内山さんの活動を参考にして、地域のディープな魅力を発信できる人や団体との連携を模索し始めています。
今後、観光ビジネスと地域づくりの融合は進むでしょう。これは地域団体にとってもチャンスではないかと思います。活動の拡大や知名度の向上、さらには協力の対価として報酬を得ることもできます。
ちなみに、私は内山さんに憧れて、6年前から東京都港区のまちあるきグループ「芝の語り部」に所属して活動しています。
今はボランティアですが、いつか内山さんのような地域密着の観光ビジネスをやってみたいと密かに企んでいたりします(笑)
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