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熊野古道の「エコツアー」の先駆者(三重県尾鷲市)

エコツアーってゴミ拾い?


「エコツーリズム(*)」という言葉は地域づくり関係者や旅行好きの人たちにはおなじみかもしれませんが、それ以外の人にはまだまだ知られていないように思います。ゴミを拾うツアーでも、格安ツアーでもありません。

簡単に言えば、地域を巻き込んで観光振興と環境保全の両立を図る少人数ツアーのこと。SDGsにも通じるため、実はいま世界中で注目されている地域活性化のキーワードのひとつなのです。

(*)エコツーリズム・・・地域ぐるみで自然環境や歴史文化など、地域固有の魅力を観光客に伝えることにより、その価値や大切さが理解され、保全につながっていくことを目指していく仕組み。

環境省

私が毎年動画制作をしている総務省の「ふるさとづくり大賞」の受賞団体でもこの10年間で、白神マタギ舎(青森県 西目屋村)知床ネイチャーオフィス(北海道斜里町)を経営する松田光輝さんなどエコツアーに取り組む6団体(個人)が総務大臣表彰を受けています。

熊野古道のエコツアー

私とエコツアーとの出会いは、平成28年度「ふるさとづくり大賞」を受賞された三重県尾鷲市の内山裕紀子さんの動画取材でした。正直それまでは普通の観光ツアーとエコツアーの違いがよくわかっていませんでした(苦笑)。

以下の動画をご覧いただければ、エコツアーについてよくわかると思います。

内山裕紀子さん・・・1967年三重県尾鷲市生まれ。2003年より熊野古道伊勢路の多くの事業に参画し、2008年「くまの体験企画」を設立。熊野古道と地域文化の保全と活用につながるエコツアーを企画・実施している。

内山さんの取材で印象に残ったこと

「観光は儲かりませんよ」
6年前の取材中、内山さんは笑いながら言われました。

エコツアーの先駆者として、全国的に注目を集めていた内山さんのイメージとかけ離れた言葉だったので、私は驚きました。

しかし、その後内山さんをよく知る三重県庁の方を取材して腑に落ちました。その方は内山さんの経済事情を心配されていたからです。「決して儲かるようなものではない」と。

観光地でよく見かける地域の住民ガイドさんの料金は一人平均500~1000円程度です。自治体主催のまち歩きツアーなどは無料の場合も多々あります。

それに対して、内山さんの少人数ツアー(約3時間)の参加費は内容によって異なりますが、一人平均4500円~6500円(4~5人対象)。この値段を高いと思うか、安いと思うかは個人によって分かれると思いますが、内山さんのツアーはリピーターが多いです。

ちなみに、プライベート型(最大5~6名)のエコツアーの料金は半日で3万円くらいのところが多いようです。そういう意味で内山さんのツアーの金額は平均的と言えます。

住民ガイドさんとの明確な違い、エコツアーの意義と魅力がより社会に理解されなければ、参加費を引き上げるのは難しいように思います。

内山さんその後

このような状況の中で、内山さんは15年間エコツアーを開催し続けてきました。昨年は環境省等が主催する「エコツーリズム大賞」で念願の大賞を受賞されました。

表彰式のスピーチで内山さんは涙で声を詰まらせながら「これからも地域の人たちと歩んでいきたい」と話されました。私も熱いものが込み上げてきました。

第17回「エコツーリズム大賞」表彰式でスピーチをする内山さん

私の思い

実は私、東京の港区公認のボランティアガイド「芝の語り部」のメンバーなのですが、内山さんとの出会いがなければ、ガイドをしようなんて夢にも思わなかったと思います。それだけ内山さんの存在が印象的だったのです。

JR田町駅前にある<西郷隆盛・勝海舟の会見の碑>をツアー参加者に説明する私。

私の人生に影響を与えてくれた内山さん。私は「エコツーリズム」がもっと広く知られるよう情報発信をしていくことで、お世話になった内山さんを応援したいと思います。

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