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次良丸忍さん『ばーちゃる』

次良丸忍さんの『ばーちゃる』(金の星社)をご紹介。

<本のカヴァーより>
充希は放課後、データ入力をしてこづかいかせぎをしている。
母が会社から持ちかえってきた機械「シップ」に、二年前に亡くなった祖母の日記や写真をデータ化して入力するのだ。
ある日、母がシップのボタンをおすと、リアルな祖母の立体映像があらわれた。
それを見た父は「ばあちゃん」じゃなくて、「ばーちゃる」だという。
ばーちゃるは、しだいに人間の感情を理解し、家族の一員になっていくのだが……。

序盤での、充希の母と、充希(みつき・男の子)のやりとりが印象的です。

「(前略)機械だとしても需要はあるはず。亡くなった人にもう一度会いたい、もう一度話したい。そういう心残りをかかえている人は、世の中にたくさんいるからね。そんな人たちのなぐさめや、心の支えになる存在には、このシップでもなれると思うの」
「ニセモノでも?」
「そう、ニセモノでも」

けれどそのニセモノが、心をもってしまったら……?

ソフトで軽快な筆致にユーモラスな味つけ。
楽しみながら読むうちに読者の胸には、物語のもつ深いメッセージが、じんわりと沁みていくことでしょう。
「ばーちゃる」の変化の過程や、周囲との関係、どんな出来事が起こり、どのような結末をむかえるかは、ぜひ御本を手にとってご覧くださいませ。

あなたには、もう一度会いたい亡き人が、いらっしゃいますか……?

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