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梶井基次郎「桜の樹の下には」

梶井基次郎「桜の樹の下には」を朗読しております。

31歳で肺結核で夭折した梶井基次郎(1901(明治34)年~1932(昭和7)年)。
「桜の樹の下には」は、1929年に季刊同人誌「詩と詩論」に掲載、1931年に作品集『檸檬』に収載されました。
同人誌掲載時に書かれていた、次の最終部分は、『檸檬』収載時には削られています。
死の前年、梶井はどんな思いで、この部分をカットしたのでしょうか…。

―それにしても、俺が毎晩家へ帰つてゆくとき、暗のなかへ思ひ浮んで来る、剃刀の刃が、空を翔ぶ蝮のやうに、俺の頸動脈へかみついてくるのは何時だらう。これは洒落ではないのだが、その刃には、
Ever Ready (さあ、何時なりと)
と書いてあるのさ。

私は子どもの頃、小児結核にかかっていました。小1でそのことがわかり、ストレプトマイシンの投与などにより、幸いなことに小学4年生のとき完治しました。
片肺の何分の一かは石灰化していて、いまもレントゲンを撮るとそのあとが写ります。
病にかかっていたときは毎日、夕方になると熱が出て、夜になると天井がくるくる回っていたので、子ども心にもどこかで、死というものを意識していたように思います。
その頃、桜の花は、あまり好きではありませんでした。どうしてそうなのかは、わからなかったのですが……。

すっかり元気になってから、十代の終わり頃、初めてこの作品を読んだとき、「ああ!」と思わず声をあげ、心をもっていかれたのをおぼえています。