みっことさかみち団地②

「みっことゴーヤおじさん」

みっこの住む団地には、みんながつかえるお庭がある。

お庭はひろくて、たくさん走れて、さくらの木もある。

春は、さくらの花でお庭がピンク色になる。
みっこは家のベランダから、ふわふわピンク色のさくらをみるとワクワクした。

ある日、みっこがお庭のよこを通るとおじさんのあたまが地面からはえているのをみつけた。

くびからしたは、土にうまっていてみえない。
遠くからだと、だいこんがとちゅうまで畑からでてきたみたいにみえる。

人が土からはえるのをみっこは初めてみたので、びっくりしてじっとみつめてしまった。

おじさんは「ごめんよ、ごめんよう。」と上をむいてあやまっていた。

おじさんのあしもとには、こわいかおをしたおばさんが立っていて「だからあたしは言ったんだ!」とおじさんをおこっていた。

みっこは学校でだれかをたたいたり、ものをこわした子がろうかに立たされているのをみたことがある。

でも、土にはうめられていなかったなぁ。
おとなは土にうめられるのかなぁ。

なんだかみてはいけないものをみてしまった気がして、みっこは家までのかいだんをいちだんとばしながら走った。

お母さんに「おじさんが土にうめられておこられてたよ。」とつたえたら…
「あらあら。Aさんご夫婦のところかしら。」とこまったかおでふりむいたあと、りょうりをしに台所へもどってしまった。

みっこはどきどきしながら、そーっとベランダに出てお庭をみた。

さくらの木のえだが広がって、上からはよくみえなかったけれど、おじさんは立ち上がってからだをパンパンとはたいているみたいだった。

おばさんはシャベルをもって、おじさんをまだおこっていた。

「おばさんが土をほったのかなぁ。」

かぜがふいて、さくらの花びらがふわふわまって、いっしゅんみっこが目をつむり、もういちど目をあけるとふたりのすがたはみえなくなっていた。


つぎの日、みっこはおじさんのうまっていた場所へいくと、そのあたりだけ土がこんもりふくらんでいた。

季節がかわりおじさんのいた場所はだれかがゴーヤのタネをまいたのか、ゴーヤがたくさんはえていた。

ヒョロロンとながいゴーヤは、おばさんにおこられてこまっていたおじさんの顔とすこしにていた。

夏のあつい日、みっこがお庭のよこを通ると近所のおばあさんがゴーヤをもいでいた。

「ごめんよ、ごめんよう。」
みっこが見つめると、ゴーヤからおじさんの声がきこえた気がした。

「もう、あやまらなくてもいいよう。」
みっこはつぶやき、にだんとばしでかいだんを駆けた。

みっこのせなかを見送るように、ゴーヤのきいろい花がセミの大合唱にさそわれて、ゆうらりゆらりとゆれていた。

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