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母親が孤独死した話❹

まきぐそ

母親が孤独死した話❸

見つかった公正証書

火葬を終えて母親宅に入ってから数日間、遺品整理に追われるが一向に終わる気配がない。
私達は在宅勤務や出勤をこなしながらも遺品整理のためにN県に足を運んだ(この時、ちょうど老害さんがコロナに感染し、その穴を埋めるべく通し勤務をしながら遺品整理に通っていたので、2日間で2時間しか寝られず、瞬きした途端に寝たことが何回かあった)。

寝室側の整理を進めていると「○○公証役場」と書いた茶封筒が出てきた。
中身を見るとそこには

公正証書第○○号
「所有するマンションと口座のお金をまきぐそと○○子(妹)に相続させる。そのお金で仏壇とお墓を守ってください。マンションは使わないのであれば法要の時のためだけに使ってください。兄□□にはたくさんお金をあげたので分かってください。もし、全ての整理が終わってお金が余るようであれば兄にも少しあげてください。」

といったことが書かれてあった。
しかし、この公正証書が作成されたのはもう何年も前であり、マンションはすでに他人の手に渡っていた。
口座のお金など通帳も出てきていないのに把握しようがない。
私達はこのことを頭の隅に置きながら遺品整理を進めることにした。

隠されていた通帳

2人で同じところを整理していても意味がないと思ったので、寝室側がだいたい終われば今度はエリアの狭い玄関の整理に移った。
玄関にも大きめのタンスがあり、そこにはハンドタオルやポーチ、折り畳み傘やカッパなどが収納されていた。
同じものを何枚買ってるんだと呆れるほどハンドタオルが出てきたり、こんなポーチいつ使ってたものなんだと言うものがわんさか出てきた。
するとその奥に中身の入ったポーチがあったので、中を探ると銀行の通帳が何冊か出てきた。
通帳を見てみると一つの口座にはごく最近記帳したのか100万単位の残高があった。
もう一つには50万円ほど。そしてあと二つは「2円」とか「2000円」くらいだった。

これまで整理をしていて見つかった母親の書いたメモによると実家があった団地からここに引っ越してきた時に実家のマンションは売り払われていた。
その2000万にも満たないお金を持ってここに引っ越してきたらしい。
それが約10分の1になってしまったのだ。
遺体を預かっていた刑事によると母親はガリガリだったらしく、ケアマネージャーによるとしばらくご飯も食べていなかったと言うことなので、もしかしたら母親は緩やかに自殺をしたのかもしれないとも思った。
大金を持って暮らしているのが好きだった母親はお金が目減りしていくのに不安を覚えていたに違いない。
私達はその日の遺品整理を終えて、帰途にあるスターバックスに入った。

見落としていた定期預金

2人で頭を突き合わせて通帳と睨めっこしていると普通預金の方ばかり見ていたが定期預金のページもあることに気づいた。
どうにもこうにもその通帳の見方が分からない。
ググってみるとその銀行の定期預金通帳の見方がYahoo!知恵袋に載っていた。
(Yahoo!知恵袋って役に立つことがあるんだね)
するとこの口座には定期預金に250万ものお金があるらしいことが分かった。
私達は「え、250万もあんの?めっちゃあるやん。」と言いながら、帰りの電車の中で財産の総額を計算するExcelシートを作った。
警察署で預かってもらっていた母親の手持ちのお金、遺品整理中に出てきた封筒に入ったお金、口座にあるお金を全て計算すると400万円ほどになった。
しかし手放しでは喜べなかった。ここから遺品整理代やらの全てを捻出しなければならない。
そして、あの公正証書が生きてるのかどうかを確認しなくてはいけなかった。