いずれ忘れるきみへ【詩】
きみが生まれたのは、錆に覆われた街の、冬のはじまり。
きみの顔は誰も知らない。きみの顔は頭の中でぼんやり霞んで、八重歯だけが柔らかに覗く。
きみに関して知っているのは、きみの声が産毛がざらりと震えるように低いこと。引きずる左足が砂を噛むこと。きみのその背を、硬い骨がまっすぐに貫いていること。
きみはぼくたちの前であらゆる言葉を話し、
(そりゃ今まで色々あったし、)
生きて、
(ずいぶん長いこと生きたけどさ、)
死んだ。
(もう何も言うことなんかないよ。)
きみの最後の言葉は今