見出し画像

【詩をひとつ。】WARNING

かたむけると

やけどするおそれがあります

と 書かれているポット


なおすことより

おそろしい副作用が書きつらねてある

くすりびん


おちるはずないといわれながら

おちることを想定して配備される

迎撃ミサイル


の そなわった国のちいさな街で

ポットをかたむけながら

紅茶をいれる私


さやさやと春の風がふいて

私の手にこぼれおちる

熱湯

に 気づきもせず


赤んぼうが泣いているから走りより

くすりびんに手をのばしてふと外をみると


空はいってんのくもりもなく

ただれた手はすこしも痛みはなく

赤んぼうは泣きやんで眼をひらく


あざやかな桜がまねく

いくどもまたたきする雪柳


おちるはずのないミサイルは

軌道をはずれてゆっくりと

罰のように落下する 私へ。


           (詩集『正夢』収録)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?