見出し画像

就活を巡る企業選び傾向の図示と、偏った情報収集チャネルについての危機感

就活中の皆様とお話しさせて頂くことが増加中なのですが、その中でも複合的な要因によって本人が損をする図式があることが気になってきました。今回は特に就活中に取得する企業選び・情報収集の場所に注目し、お話をしていきます。

新卒の層構造と企業選びの場所

昨年3月に下記のようなスキルセットやマインド別に見られる新卒の層構造と就職先についてこのnoteでもお話しさせて頂きました。

一方で2023年現在となり、企業選びの場所の観点も入れたものが下記となります。全体の傾向として、単一の場所を利用して就活をする方を多く見かけます。あくまでも目安や傾向ではありますのでご注意ください。良い意味でも悪い意味でもハズレ値は居ます。

新卒エンジニアの層構造と、企業選びの場所の傾向 2023

初任給の見直しが行われる昨今ではありますが、手取りが少なくても下記の条件が揃えば、いわゆるメンバーシップ型雇用の範囲で活きることができます。

  • 年功序列で給与が上がる

  • 格安で寮が借りられる

  • 福利厚生が尋常じゃなく手厚く、金額に換算するとそれなりの金額になる

  • 食事代などに補助がある

  • 所帯を持つあたりで年収が上がる

  • 全く問題なくローンが組める

こうした企業であれば人生計画次第では残り続けるのも手ですし、私自身、相談者のお話を聞いた上で転職の再考を推奨することもあります。ただし、これまで上記のような取り組みをしていた企業であっても45歳で早期退職を募るケースも見られるため、賭けの要素は出てしまいます。

しかし、より問題なのは、こうした要素がない状態にも関わらず、暮らせないレベルの初任給を提示した上で都内近郊に住むことを求める企業の存在です。物価が上がっていることを考慮していない安価な給与体系の企業では、真剣に暮らせないケースもあります。足らないお金を穴埋めするために、スキマ時間でギグワークをしたり、情報商材を売っている方や、不本意ながら夜職をしている方にもお会いしました。

層構造ができた背景についての考察

ではどうしてこのような層構造が誕生し、企業選びの場所も層によって分断されているのかについてお話をしていきます。

スキルの高い層を対象とした企業の採用コスト増加

新卒のスキル幅は年々拡大傾向にあります。

上位層であれば実務型のインターンであっても「中途のオンボーディングよりもキャッチアップが早く、楽だった」というフィードバックが現場からあったときもあります。

ポートフォリオがある状態でサマーインターンなどに臨む人が居る一方で、無い状態の人も増えている傾向にあります。

自社事業の中核を担う優秀な人材を採用しようと思うと、インターンやイベント、会食といった費用も、面談にかける工数も掛かっていきます。新卒採用コストが増加していく中で、しっかりそのリターンである事業貢献を得ようと思った企業において、選考や求める人物像は年々厳しくなっていきます。これまでの傾向として、新卒・中途問わず好景気下であれば企業側も余裕を持って甘めの選考をするのですが、不景気下であれば辛めの選考をする傾向にあるということも頭の片隅においておく必要があります。

人材紹介会社に支払う費用にも上昇傾向があります。5年ほど前であれば学歴や専攻で金額が松竹梅に分かれているケースが多かったですが、現在は採用企業側から特別な支払いの申し出もあります。こういうことが起きると、現在の中途エンジニア、マネージャー、コンサル採用などと同じく、「人材紹介目線で最も粗利率が高い企業に紹介してしまう」という傾向も残念ながら確認されています。アンテナ感度の高い就活生上位層ではこうした人材紹介会社の行動はバレてしまっており、悪評が回っているというお話も耳にしました。流石に新卒ということを考えると、人材紹介の粗利率稼ぎの争いに重要な新卒カードを巻き込む風潮というのはいかがなものかと思います。

一方、サイバーエージェント社のようにこれまで受け入れてきたデジタル人材の傾向を分析し、育てられるであろう人物像を未経験採用するというトライも起きています。新興企業が真似をするとリスクがありますが、非常に興味深い動向です。

マーケティング合戦の結果

マーケティングの鉄則ではあるのですが、人材を採用したい企業、紹介したい人材紹介会社共にペルソナを明確にした上で、そこに効果的に訴求できるようにアプローチを行います。

就活生にはマーケティングによって最適化された情報が直接届くため、CVRを上げるための心地よい謳い文句と共に誘導されるという具合です。その結果、企業が想定しているペルソナに近い人たち以外には、気付いてもらえなくなっている傾向があると考えています。就活生というのは大筋で選考を受けながら変化したり、考えがまとまっていくものなので、固定化することで効率化は図れる気がする一方で、取りこぼしも多いのではないかと感じています。

コロナ禍による学校のオンライン化に伴う、オフラインでの情報入手機会の低下と、耳障りの良い情報チャネルの盲信

2020年3月から丸3年続いたコロナ禍は、全世界の大学生からオフラインでの(就活に関わらず全般的な)情報共有の機会を奪ってしまいました。従来であればキャンパスに参加して友人らと情報交換することによって何となく就活の仕方や、お勧めの就活イベント情報を共有し、自然と就活方法にあたりが付いていきましたが、そうした機会がここ数年間すっかり奪われています。それ故に、情報収集の仕方によっては取り残される方が多く存在しています。

特に大きな要素は各種情報チャネルです。採用企業や人材紹介会社だけでなく、PVを集めてアフィリエイト収益を得たり、有料情報商材で銭を稼ぎたい謎の就活アドバイザーが広告展開をしていきます。Twitter、YouTube、TikTok、LINEグループなど多岐にわたっています。時にはインフルエンサーも利用されており、「身近に感じられるインフルエンサーの推薦なので何となく信頼してしまう」という現象に繋がっています。

度々このnoteでも話題にしていますが、私の長文noteなどはマスに響きにくいため、偏ったり誤った情報であってもライトなメディアの方が見られやすく、信じられやすいという傾向を感じています。このことも踏まえ、今回のnoteは追ってYouTube公開を予定しています。公開され次第、別途共有します。

業界構造が複雑化したことによるキャリア再現性の低下と、半歩先のロールモデル

「巨人の肩の上に乗る」とは先人の積み重ねた発見に基づいて何かを発見するというものです。IT業界などは目覚ましい速度で進化していますが、同時にヒトが分かりにくいところは考慮しなくて良いようにラッピングされるため、巨人の肩には乗りやすいものです。

しかし逆に言うと「巨人の肩が多すぎる」「巨人の構成要素が不明で難しそうなので巨人の内訳を理解することに抵抗がある」ということにも繋がっています。今の30代中盤以上であればインターネットやWebの黎明期から成長期に立ち会えたため、自身の成長と共に技術進化をキャッチアップすることができました。しかし今の若い世代は良くも悪くも技術が高度化した状態からキャリアがスタートするため、巨人の内訳などは膨大すぎるトピックとなっており、そのキャッチアップコストは年々高まっている状態です。

もちろん、しっかりと巨人の構成要素に取り組む若い方も居られますが、やはり少ないと言わざるを得ません。キャッチアップ要素が多すぎた時、20年前からIT業界に身を置く人の背中を追いかけてキャリアを再現するというのは現実的ではありません。そうした複雑性の問題もあり、遙か先にキャリアをスタートした先人より、自分が真似するとキャリアの成功を体現できそうな2ヶ月~6ヶ月先を行くロールモデルが好まれることに繋がっていると考えています。多少しょぼかったり、誤っていたり、虚偽だったりしたとしても再現性が期待される以上、身近に感じられる以上好む人は多いです。

企業による意図的なやりがい搾取

就活生に対するアンケートにて気になる傾向として、企業選びの際に重要視する点が「安定性がある」に続いて「社風や働く社員が良い・良さそう」が2番めにあります。もちろん会社の雰囲気が良いことに越したことはないのですが、ここにブラック企業が付けいる隙が生まれます。会社の雰囲気などは、社内で就業経験をオフラインで積まない限りは多くの場合、選考期間のような短い接触時間であれば取り繕えます。そしてそういう取り繕うのが上手い企業はそれなりに多いです。

加えてこうした印象ベース、直感ベースのものを企業選びの優先順位をあげてしまうことで、入社後に「思っていたのと違った」という短期離職理由に繋がります。

就職先の決定について初任給が低すぎるのでは?という質問をすることがあるのですが、複数の方より次のようなリアクションを頂きました。

  • 「今の自分だとこんなものではないか」

  • 「後から上がると言われている(いつどのくらいになるかという開示は特にない」

  • 「節約して切り詰めれば生きていけるような気はする」

中には労働条件通知書を受け取っていなかったりするケースもありました。夏冬のボーナス制の場合、夏は試用期間中のため支給されないというケースも多く存在するため、想定年収は更に下回るケースことが多いです。

人件費が低い新卒や第二新卒について採用コストが低い企業選びの場所から好んで採用し、成長機会という言葉で煽りながら高稼働を求めていく企業は残念ながら存在します。こうした企業の話を聞いていると、数ヶ月から半年で新卒が辞めることを計算に入れていたり、2年で採用した新卒が全滅することすらも想定し居ているような企業もあります。これは企業の新旧を問わず、就職氷河期時代から見られます。今は就職氷河期ではないので、駆逐されるべきだと考えています。就職氷河期に纏わる話は鋭意まとめていますので、また別の機会にさせていただきます。

効率に拘りすぎず、広く情報収集をするところから始めよう

当該業界のプレイヤーを調査したり、OpenWorkなどで口コミをチェックしていくことは必要です。企業にとって「粗利の余裕は心の余裕」なので、上場企業であれば受けたいと思う企業のIR情報を見ることも必要です。表面的に売り上げが上がり、派手な広告をしていても粗利が低くて社員還元や社員教育が乏しい会社も多くあります。新卒カードの重要性を踏まえると、これらの情報を取りに行かないのは非常にもったいないことです。

是非何かお悩みの方は下記よりご連絡頂ければと思います。ポリシーとして個人からのキャリア相談についてはお金を頂いておりませんので、お気軽にご連絡ください。


頂いたサポートは執筆・業務を支えるガジェット類に昇華されます!