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採用市場の変化を踏まえた人事採用担当者に求められることと、OODA型採用

先立ってエバンジェリストを拝命しておりますサポーターズさんにて「エンジニアを中心に採用に関わる人事担当者向けセミナー」を実施させていただきました。この回ではIT業界の現状についてデータを引用しながらお話をしつつ、人事担当者への企業の期待値の変化についてお伝えしました。採用そのもに関するセミナーは多い中、目新しいテーマだったこともあり非常にご好評頂きました。第二回目以降もあるのではないかと思いますので是非ご確認頂ければと思います。

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今回はその中でも採用業務に注目し、弊社でも支援している経営層や事業部との関わりについてお話をします。

エンジニアバブル以前の頭数を揃える採用

2015-2022年11月までのエンジニアバブルでは、手が動く人材の採用が活況でした。ジュニア層の採用も活況だったため、他業界からのエンジニア転職の動きも多く見られました。

人月精算が可能なクライアントワークでは稼働人数が増えれば増えるほど利益が上がります。また、スタートアップでは事業進捗の一環として正社員採用状況が投資家に報告されていました。結果として投資家や株主に対して採用人数についての目標合意をしていた企業が多く見られました。

採用は確かに簡単ではなかったのですが、2023年現在と比べると採用ハードルが低く、定時年収も高かったため人事採用担当者としては成果が上がりやすかった環境と言えます。

エンジニアバブル後の厳選採用

2022年11月以降の景気後退により、人事採用担当者にとって不都合な事象が起きるようになりました。

人事採用担当者としてのバリューの伸び悩み

エンジニアバブル後の現在では、次のような事象が発生しています。

  • 自社内での採用ハードルの上昇に伴う、決まりやすかったジュニア層受け入れ枠の減少

  • 提示給与の上振れ機会減少

  • スカウト返信率の大幅低下

  • 転職意向が低い候補者の増加(実らないカジュアル面談の増加)

こうした条件により、人事採用担当者としてはバリューに相当する入社者数を積みにくくなりました。

例外は新卒で、少子化とは言え社会まとまって出てくるために供給数が期待でき、加えて中途や第二新卒と違って比較対象となる前職が存在しないことからカルチャーマッチが期待できるため、育成体制が整っていたり予算投下できる企業からは安定した需要が存在しています。「安価で素直な労働資源」として採用を継続している企業も多数あるため、新卒採用に関する業務は当面存在し続けるでしょう。ただし、新卒採用専任にはリスクもあるためご注意下さい。

無視できない採用工数

エンジニアバブル下ではCTO、VPoE、EMなどが採用に関わり、人事とエンジニアがスクラムを組んで採用するというスタイルが理想でした。今でも比較的景気の良い受託開発企業の一部では継続した動きが見られます。

しかしエンジニアバブル後の現在は特に景気後退の観点から、エンジニアの採用への無尽蔵な協力を期待することが難しくなっています。

具体的には経歴が薄いスカウト媒体プロフィールや、転職意思が固まっていないような人の面談に開発の手を止めてまで工数を割く企業が減少しています。私が見ている範囲では、カジュアル面談を設定した方のうち5-6割ほどは転職に対する熱意が低い状態です。明確に好待遇で殴りかかってくる企業が減ったため、決めきれない候補者の気持ちというのも分からなくはないです。

特にクライアントワークでは業務時間に面談・面接を設定し、なおかつ採用に結びつかないとなると「業務をして顧客にその時間を請求したほうが良かった」という話になりやすいためシビアに見られます。
スカウト媒体などでは「展開率」などと呼ばれていますが、カジュアル面談から入社までのパーセンテージが注目されつつあります。つまりいかに自社の即戦力となりうる人に声掛けをし、無駄な面接を減らして入社者数を確保していくかということです。

現在の人事採用担当者に求められる経営層・事業部との関係性

事業部の工数を無尽蔵に頼れず、かつ採用ハードルが上がっている現状で求められるポイントについてお話をします。

PDCA型採用は自身・自組織の理想の押しつけ

日本のエンジニア採用は新卒にせよ中途にせよ複雑化しているため、計画立てて動く必要があります。日本企業でよく見られるのがPDCAサイクルの採用です。セットで「PDCAを高速で回す」という言葉と共に語られます。

採用においてPDCAは悪手だと考えています。PDCAはPlanから始まるわけですが、これは言い換えると「なりたい自分」「なりたい自組織」の像を設定してDo(行動)に移すというものです。

厳選採用自体において事業部が求める人物はハードルが非常に高いです。幼少期、実家の隣にある用水路で釣りをしたことがありますが、魚が居なければ何も起きずに時間だけが経ちます。これと同じで欲しい人物像に対して適切な母集団が居るところで、適切な費用をかけなければほぼ決まりません。

現在自組織が置かれている採用市場、自組織の認知度、予算などを総合してすり合わせなければなりませんが、なりたい自組織が先行するPDCA型では適切な着地をするまでに時間がかかりすぎます。

OODA型採用で現場に即した採用を

PDCAサイクルに比べ、採用プロジェクトによりフィットするのはOODA型であると考えています。

OODAについてはアメリカ空軍の航空戦における意思決定から始まったものと言われています。まずはObserve(観察)から始まります。次に情報収集結果をもとにOrient(状況判断)を行います。そして3番目にDecide(方針決定)をし、Act(行動)に移ります。

これを採用に当てはめると下記のようになります。私が採用に関わるときも意識している項目です。

弊社合同会社エンジニアリングマネージメントで提唱しているOODA型採用

特に重要なポイントは下記となります。

  • Observe

    • 既存社員の状況

      • 出身大学、企業の傾向

      • 活躍している人の傾向

      • 入社理由と、入社後の感想

    • 事業部がどういった人物を求めているか

      • スキルセット

      • 志向性

      • キャラクター

    • 事業部が思う想定給与水準

    • 社内での職種名と、採用市場での職種名の相違はないか

    • 採用市場動向

      • 当該人物はどの採用チャンネルであれば存在するのか

      • 採用市場における自社の位置付け

  • Orient

    • 自組織の立ち位置についての仮説立て

    • 採用戦略の仮説立て

  • Decide

    • 自社や自事業のエンジニアでの知名度と予算を鑑みて、どの採用チャンネルであればコストパフォーマンスやタイムパフォーマンスが良いか

    • 選考フロー

    • 面接官ピックアップ

  • Act

    • 採用活動の開始

特に採用市場はエンジニアバブル後に大きく変わりました。昨年までの感覚で意思決定をすると金額と時間がいたずらに溶けてしまいますし、そこに寛容な企業もほぼ見なくなりました。どのような人物であれば内定が出るかだけでなく、どのような人物であれば定着し、活躍できるかに重きを置くことが事業貢献という観点では重要です。これらの整理は弊社でもお受けしますのでお気軽にお声掛けください。

事業部の良き相棒として何から始めるか

事業部の良き相棒としての人事になるためには、単純なプログラミング言語や年齢によるキーワードマッチから脱することが第一歩として必要です。

たまに「それでは人事採用担当にもプログラミング教育を受けてもらおう」という組織があるのですが、そこまでは不要だと思います。ただ事業の軽い経験や、定期ミーティングの同席、開発部の月次報告会などに参加して何が起きているのかを知ることはお勧めです。出てきた用語で知らないことを調べたり、開発部に聞くようなアクションをすると更に有用です。まずは興味を持つところから始めましょう。

最後に「これからDXに取り組むような企業さん」にお勧めしている本を貼っておきます。エンジニアの生態やデジタル人材が関わる業務を大まかに把握する第一歩として位置付けると良いでしょう。僭越ながら拙著書と共にご紹介しておきます。

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