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終身雇用・年功序列を覆す投機的キャリアはどのように産まれたか

 前回、明治からバブル期に繋がる好景気とそれに付随して成長してきた従来型の新卒一括採用、年功序列、終身雇用、定期人事異動が成り立ってきたことをお話しました。問題はそれ以後の長い不況です。

 IT革命華やかりし2000年のSFCに居た一人としてはうまくムーブメントに乗れた大人たちの潤い方が印象的だったのですが、非ITも含めた社会全体の就職氷河期は継続されていました。雇用に影響するような景気には至らなかったと言えるでしょう。

 その後もIT業界ではソーシャルネットワーク(2004年頃)、ソーシャルゲーム(2007年〜)、スマートフォン(2008年頃〜)、パブリッククラウド(2006年誕生、盛り上がりは2012年以降)…ぐっと遡ってブロックチェーン、現在のAI、機械学習、RPAなどIT業界の内側に居ると大きなムーブメントに見えましたが、いずれも社会全体の景気に影響するわけではありませんでした。

 つまりは近年の各種IT技術の勃興に伴うバブルの特徴は「局所的なバブル」と言えます。それ故に終身雇用とは対象的に、トレンドの起こりを観察してサッと波に乗るような転職(の繰り返し)やフリーランスといった投機的なキャリアが産まれました。私自身はキャリアパスを語る際に「日当たりの良い場所に移動する」と表現しているのですが、一時期流行った「3年で転職しましょう」というのも投機的キャリアの一種と思われます。

 企業サイドとして注意すべきことは2点あると考えています。

 1点目は組織を構築する上で、一見して活きが良く、人数として増加の一途を辿る投機的キャリアの人たちだけ集めると組織への定着性が危うくなってきます。詳しくは後述しますが労働者の多様性を考慮しつつ程よくバランスを見ていく必要があります。

 2点目は収益の柱を増やす意味合いだけでなく、優秀な人材を繋ぎ止める意味でも事業の多様性と、折を見ての柔軟な異動を伴う人事制度が求められるということです。一方、少数の事業で上場したベンチャーの社員数が伸び悩むところにも繋がると考えています。

 次回は技術やトレンドの「サイクル」についてお話します。

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