転職や、転職回数を令和ではどう捉えるべきか
先だってTwitterで炎上していた話題として、転職回数に関するものがありました。シリコンバレーで働いている方があるインフルエンサーについて転職回数を根拠に「その程度のビジネスマン」と卑下する内容があり、人材紹介や人事のインフルエンサーを巻き込んで大火になっていました。
私自身3社経験した後に色々と悟って起業したため、このシリコンバレーに居られる方からすると「転職が多い」という区分になります。今回は転職回数についてのお話です。
ファーストキャリアを全うする世界
ファーストキャリアを全うする世界というのは今でも残っています。
私の実家は四国香川県ですが、転職という概念がほぼありません。ファーストキャリアは定年まで全うするものであり、ファーストキャリアを辞めるということは「再就職」「再雇用」という言葉に繋がります。待遇は足下を見られる傾向にあります。四国では想定給与レンジが280ー350万円というプログラマの経験者採用の求人も多くあります。内容的に都内の定年後の感覚です。
こうしたことからITエンジニア専業で大手人材紹介会社などは進出していないようです。転職や転職回数を否定するということはこういった人材の流動化が起きていないエリアと近しい状態です。
私自身も御多分に洩れず、父は自営業、母は公務員の家計であるため、当時在籍していた人材紹介会社の話をすると異世界の言葉を聞いたようにキョトンとしていました。
転職回数を少なく抑えるには無理がある世界
ITエンジニアに関しては、2019年くらいまでであれば「次で3社目、各社在籍年数1年以上」という条件を設定しても中途採用できていましたが、2022年現在ではスカウト対象すら見つかりにくいほどになっています。転職理由も下記のような自身ではどうにもならないものもあるため、少なくとも転職理由の回収をしてから判断することをお勧めします。
企業方針は時と共に変わる
中途採用で候補者をアトラクトをする際、あの手この手で訴求をしていきます。報酬、福利厚生、MVV(Mission Vision Value)、事業の社会貢献制、新規事業、今後の展望、現在の企業の立ち位置、既存社員の人柄、雰囲気・・・様々な要素で口説きます。
しかしこの口説き文句をよく見て頂きたいのですが、どれもこれも永遠では無いのです。報酬は特にアテにならず、数ヶ月もすればもっと提示する企業が出てくることもざらにあります。企業の立ち位置も競合や世界経済のような外的要因や環境要因で変わってしまいます。既存社員の人柄などは、中小企業ではムードメーカーのキーマンが退職すると別の会社になりがちです。経営フレームワークを入れて数ヶ月で不機嫌な会社になることだってあります。
転職を決意した理由が外部要因、環境要因によって無くなったり、優位性が弱くなったのであれば、それは転職しても仕方がないことです。企業としてもかつて強みだったり、ウリだったりした要素が消えてしまわないように努力するべきだと考えています。逆に言うと企業はすぐに変動してしまうような「雰囲気」「接触した人の人柄」などは重要な要素ではあるものの、最優先で採用時に推すべきものではないです。
変わらない企業など無い。終身雇用なども無い。企業に永遠も無い。定年前に企業が潰れるリスクも高い。そう考えたときに転職回数を問うのはナンセンスだと考えています。
中間管理職の短期離職
あらゆる会社で見られる事象として、経営層・中間管理職層・メンバー層とぱっくりと分かれ、経営層は実働部隊であるメンバー層には優しく接する一方、中間管理職には無茶振りをし続けるという組織があります。「生産性を高めるためにもっとメンバーの残業を増やして欲しい」という強い要請が来るという組織もあります。
厳しい売り上げアップの指示があったり、パラシュート人事でそれまでの組織にはなじまない経営フレームワークが降りてきたり、肩書きが立派な謎コンサルが経営会議に立っているケースもよくあります。真っ先にこの影響を受けるのが中間管理職です。
上下の板挟みになってメンタル不調になる方も少なくありません。個人的にも思い当たるところはあるのですが、この立ち位置で中間管理職が短期離職してしまうのは一定仕方が無いことかと感じます。こうした中間管理職については面談時にどういう経緯があったのか話を聞いてからやむを得ない短期離職か否かを判断してあげて欲しいところです。
キャリアの自己責任論と日当たりの良い環境
このnoteでも取り上げていますが、終身雇用制度は明治に誕生し、高度経済成長によって存在し続けられたものです。その後は緩やかに滑空してきた日本経済ですが、リーマンショックで決定的になり、リストラなどの話が多く出るようになりました。現在ではファーストキャリアに定年まで残ることは、一部の老舗大企業を除いて難しくなっています。
一昔前は上場するのが一つの安定した企業の指標でした。今でもスカウト媒体には企業選びの条件設定に「上場企業で働きたい」などとあるところもあります。しかし今は上場企業であってもTOBされる時代です。
一見押しも押されぬ企業、例えばGAFAMに入ったとしても、レイオフされることもあれば、飽きて自身で起業する人も居ます。
職業選択の自由が言われる中で、残るのも自由であれば移るのも自由。その結果は自己責任なのです。
それでもこんな人は気をつけた方が良い
転職は自己責任で実行すれば良いものの、それでも落ち着いた人が良いパターンはあります。事例を3例挙げます。
転職をステップアップとして位置づけている方
転職をステップアップとして位置づけたり、現職を「卒業」という風潮には違和感があります。転職によって年収が上がる方も居られますが、別にRPGのように転職と同時にスキルアップするわけではありません。イメージとしてはレースゲームでコースが変わるようなイメージではないでしょうか。人によっては新しいコースの方が気持ちよく走れるでしょうし、移ってみたものの上手くいかなかいコースもあるでしょう。晴れている新しいコースは良かったけども、雨が降ると前のコースより酷いということもあるでしょう。
キャリアの節目は喜ばしくはあるものの、奨励するのは違うなと感じています。
毎年転職をしている方
スカウト媒体を見ていると毎年転職をして10年10社、5年5社以上のような方が一定居られます。あるスカウト媒体でITエンジニアを見ていると20人に1人くらいでこうした方を見かけます。
理由はもちろん色々とあるでしょう。上司と会わなかったとか、思った仕事と違ったとか、声がかかったとかあると思います。
「転石苔むさず」を理由に転職の繰り返しを肯定される方にもお会いしたことがありますが、石(対象者)が小粒だと転がっていくうちに消滅リスクがあります。
企業の側からすると、採用コストを考えると2年くらいは居て貰わないと採用コストがペイできずに事業リスクになる企業が少なくありません。激しく転職している方に声を掛けるのは採用RPA(自動スカウト)の上で特に事業PLを見ていない企業か、短期離職でも採用コストをペイできる企業・事業のみです。
良いなと思うのであれば居続けた方が良いですし、目的の無い転職はお勧めできません。リファラルや直接応募であっても、オンボーディング期間を除くとバリューが発揮できている期間が短いと言えます。声を掛けてくる企業も少なくなるため、転職リスクが高まっていきます。
現場が合わないという理由で転職を繰り返しているのであれば、SESやフリーランスも視野に入れた方が履歴書が無駄に多くならなくて良いでしょう。
転職先が高確率で潰れている方
多くの方はずらりと並ぶ職歴は「一身上の都合により退職」が一般的なのですが、企業が潰れまくる方も居られます。企業の中には社員の「運」を見る企業もあるため、不利になるケースがあります。しっかりとした企業を冷静に選びましょう。
他人の転職を笑うな
一部の例を除いて、他人の転職を指してとやかく言うものではありません。終身雇用を全うすることも結構なことですが、「企業が終身を保証してくれるのであれば」という条件がつきます。他人の転職回数を指摘するのなら、残った結果としてその方が損害を被ったときに面倒を看るくらいの気概が欲しいところです。
結論「他人のキャリアを笑うな」と言うことですし、志の無い人材紹介・スカウト媒体担当者、情報商材屋については「他人のキャリアで遊ぶな」と声を大にして言いたいですね。
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