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独立のための⑨:事業計画書をつくる~施肥設計をする~

みなさんこんにちは。
営農計画書を作った次は施肥設計をしていきましょう。
何の肥料をどれくらい使うのか。これがわかれば最終的には生産費の計算する材料がほぼ出そろいます。

①5年後の売上と所得を決める
②ネギの相場、単収、収穫時期を調べる
③ネギをどれくらい売れば①の売上を達成できるのか計算する
④どのくらいの面積をやればよいのか計算する
⑤作付け計画を作成する
⑥施肥設計をする
⑦どれくらいの経費が掛かるのかを計算する
⑧5年目の事業計画を月単位で試算する
⑨所得が①で設定したものになるように調整する
⑩最初に必要な農機類を整理する
⑪1年目から4年目のストーリーを作る
⑫1年目から4年目の経費を計算する
⑬1年目から5年目までのキャッシュフローを試算する

では作っていきましょう。
施肥設計の手順は以下の流れです。

①県の施肥基準を調べる
②対応する肥料を選ぶ

この流れで作成していきます。

①県の施肥基準を調べる

まずは県の施肥基準を調べていきましょう。なぜそのようなことをするのかというと、土質によって施肥の内容が変わってくるからです。
例えば関東地方の黒ボク土であればCECが22付近で保肥力が高いのに対し東海エリアの赤土であればCECが1桁で保肥力が低いです。
保肥力が高ければ基肥中心の施肥設計になるし、低ければ追肥が中心の施肥設計ということがあります。そのため、就農する地域には各県が作成するその土地に合わせた施肥の目安となる数値が大概設定されています。
今回は群馬県の基準でその施肥基準を参考にしていきます。

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黄色いラインが引かれている箇所を利用します。これを見ると秋冬ネギは

基肥
N(窒素)→14kg/10a
P2O5(リン酸)→30kg/10a
K2O(カリ)→14kg/10a

1回あたりの追肥(合計3回)
N(窒素)→3kg/10a
P2O5(リン酸)→0kg/10a
K2O(カリ)→3kg/10a

これをもとに使う肥料を選んでいきましょう。

②対応する肥料を選ぶ

土づくりにおいて重要な部分である肥料の選定ですが、私の考え方では以下の考え方を採用します。
「堆肥(草本系)+粘土鉱物+ク溶性Mg+NPK肥料」
ですが、今回の目的はあくまで生産費を算出するための施肥設計なので細かな考え方は省きます。今回は私が利用する資材をもとに計算します。土づくりの考え方は追々書きますが、とても長くなります。ですのでとりあえず今回は堆肥、粘土鉱物、ク溶性Mgの説明はせずにNPK肥料の話を中心に進めます。

NPK肥料の設計の基本はこのように考えます。

基肥→手に入りやすい動物性堆肥(牛糞、豚糞、鶏糞)を中心に不足する養分を化成肥料で補っていく

追肥→即効性の化成肥料を使用する

基肥に関して重要な考え方は、「動物性堆肥は肥料として考える」です。
肥料と堆肥の違いは用途が植物の栄養分か土壌の物理性改善かの違いだと考えています。動物性堆肥においては堆肥内の養分量が非常に高いため、名前は堆肥とついていますが肥料として考えます。堆肥としての使い方をすると養分過多となり植物に害を与えます

動物性堆肥は安価に手に入れることができるというのが最大のメリットです。デメリットといえば、天然由来のために成分が安定しないこととリンが非常に多くやみくもに使うとリン過剰になることです。
ですが、この内容を理解したうえで使用すれば効果的なので簡単に手に入れられるものを選ぶとよいかと思います。
ちなみに私の場合は豚糞が手に入りやすいので豚糞を利用します。
ここで堆肥の成分表(目安)が群馬県のホームページにあったので見てみましょう。

赤ラインの箇所を参考にします。
この表の読み方はこのような感じです。

畜種→動物の種類
たい肥化方法→堆肥の作り方
副資材→家畜糞以外に入れてあるもの
たい肥化期間(日)→堆肥になるまでの期間
たい肥成分(%)→堆肥中の養分の割合
肥効率(%)→実際に肥料として効果を発揮する割合

この中で分かりにくいのは肥効率だと思いますので少し解説します。
たい肥中の肥料成分はすべてが養分として機能するわけではありません。
ここでは実際に成分のうちどれくらいが養分として活用できるのかを表すものとなります。
例えば豚糞を1000kg投入するとT-Nは1000kgの0.8%なので8kgとなります。そしてさらにこの窒素分のなかで肥料としての効果がある量は8kgの30%なので2.4kgということになります。つまり豚糞1000kg投入すると2.4kg分の肥料としての窒素を投入したことになります。

これをもとに考えると豚糞1000kg当たりの肥料成分は以下の通りになります。

窒素→2.4kg/t(全体量8kg)
リン酸→11.2kg/t(全体量16kg)
カリウム→7.2kg/t(全体量8kg)

これをもとに先ほどの施肥基準と照らし合わせていきましょう。

基肥
窒素→14kg/10a
リン酸→30kg/10a
カリ→14kg/10a

豚糞中のNPKで最も量が多い成分がリン酸(P2O5)になるのでこれを基準に考えると10aあたり2000kgあたりが妥当なラインかと思います。その場合以下になります。

窒素→4.8kg(全体量16kg)
リン酸→22.4kg(全体量32kg)
カリウム→14.4kg/t(全体量16kg)

リン酸に関して全体量がそのまま肥効であると考えてよいやだめといった様々な考え方があるので今回は全体量がそのまま肥効として、植物の様子を見ながら追肥で対応するという形にする。窒素に関してはどの文献でも不足すると書かれているので肥効の分のみとする。
その場合、窒素だけが基準から10.2kg不足しているのでここを化成肥料で補っていく。

窒素肥料をピンポイントで補う肥料は硫安もしくは尿素が一般的です。
基肥として使う場合は硫安が一般的なのでこれを使います。
硫安の成分は21-0-0と書かれていると思います。これはN21%、P0%、K0%という意味なので20kg(一般的に1袋20kg)当たりの窒素肥料分は4.2kgとなります。ですので10.2kg不足を補うためには硫安を48.5kg/10a入れるということになります。1袋20kgであると考えた場合2.5袋/10a使用します。

ここまでの内容をまとめると基肥のNPK肥料は10aあたり

豚糞・・・2t
硫安・・・50kg(2.5袋)

ここに土づくりの資材を入れて10aあたり

草木堆肥・・・200ℓ
モンモリロナイト鉱物・・・100kg
ク溶性Mg・・・40kg
豚分・・・2t
硫安・・・50kg(2.5袋)

の量を基肥とします。

追肥に関しては、入手のしやすさと価格を考えて高度化成肥料14-14-14を使用します。
20kg当たりの成分量はN2.8kg、P2.8kg、K2.8kgですので先ほどの施肥基準と照らし合わせると

1回あたりの追肥(合計3回)
N(窒素)→3kg/10a
P2O2(リン酸)→0kg/10a
K2O(カリ)→3kg/10a

リン酸以外はほぼほぼ合っています。リン酸に関しては施肥基準に対して過剰ですが、肥料成分が14-0-14などの肥料は一般的に売られていないので入手労力と費用の観点から許容します。ただし、定期的な土壌診断をしながら慢性的に過剰になっていないかを気にします。
ですので追肥は1回10aあたり以下の施肥内容になります。

高度化成肥料14-14-14・・・20kg(1袋)

となります。
最後にまとめると

基肥
草木堆肥・・・100kg
モンモリロナイト鉱物・・・100kg
ク溶性Mg・・・40kg
豚分・・・2t
硫安・・・50kg(2.5袋)

追肥
高度化成肥料14-14-14・・・20kg(1袋)

となります。基本的にはやはり安価な家畜糞を基本に不足する養分をおがなっていくという考え方でやるのがコスト削減に効果的かと思います。
今日は長くなりましたが以上で終わりにしたいと思います。
それでは皆さんさようなら。

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