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たとえば便利について

私は古着が好きですが、一般的にイメージされるようなカジュアルな古着が似合う女ではないのです。特に、Tシャツというアイテムが苦手で、あの究極にシンプルで無駄のないアイテムは、とても便利なものだという事は分かっていても、どうしてか私は裸で歩いているくらい恥ずかしい気持ちになってしまうのです。

自分に似合うTシャツを探求した時期もありましたが、ある時「別に無理に着なくていいや」という結論に至り、それ以来外出着としてのTシャツを買うことが無くなりました。

とは言え、夏場のソレに代わる定番アイテムが欲しいなぁと思っていた頃に出会ったのが、古着のシルクシャツです。よく見かけるのが、80年代前後のTシャツ型のものやオーバーサイズのシャツ型のものは、デザインも普遍的で色バリエーションも豊富、価格も1万円前後で、新品のこだわりTシャツを買い回ることを考えると私にとってはとてもお得感のあるものでした。

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シルクの良さは理解していたつもりでしたが、実際に日常的に着てみるとその快適さは格別でした。ノンストレスの軽さ、肌触り、夏は吸湿速乾性にすぐれた特徴のおかげで涼しく、冬は保温性が発揮され優しい暖かさに包まれる。シルク特融の上品な光沢と軽やかさのおかげで、カジュアルなアイテムと合わせても1枚でサマになるアイテムは、すぐに私のワードローブへ溶け込んでいきました。また、古着であるという点も大きく、新品で〇万円もするようなシルクは確かに上質で他にはない価値がありますが、やはり"特別な服”になり過ぎてしまうのです。

それからというもの、パンツやスカート、ローブなど、自分のスタイルの中に古着のシルクは当たり前の物となりました。それ故当店でもシルクの商品が多くなっております。その分お客様からその特徴やお手入れ方法を聞かれることが多くなりました。今はネットで調べれば、シルクについての知識は山のように出てきますし、お手入れ方法も詳しく説明頂いているサイトがたくさんございますので、ここでは簡単にポイントだけを要約してみます。

先ほどご紹介したシルクのメリットとなる特徴の理由は、繊維の形状です。天然シルクの形状は三角形~楕円のような形をしており、これが重なることで繊維同士の間に空間ができ、吸湿速乾性や保温性の機能が生まれます。また、この空間で光が乱反射することで特融の光沢感が感じられるようです。

そもそもが動物性の天然繊維ですので、人間の肌と同じたんぱく質でできています。また、一つの繭から一本の繊維が生成されているので、天然繊維の中で最も一本の繊維の長さが長いものになります。これらのおかげで、滑らかでストレスの無い肌触りの生地が出来上がります。これは同じ天然繊維でも綿や麻には無い特別な個性です。

次にお手入れですが、ここではあくまでも「古着のシルク」という前提でご紹介させて頂きます。古着と一言で言っても、アイテムは様々で特徴もそれぞれです。特にブランドvintageのように当時から高級品だったもの、デットストックで残っていた物を今後も状態キープしてご使用されたい方は、必ずクリーニング店にお持ちすることをお勧めします。

ただ、私のようカジュアルなシルクアイテムをデイリーに使いたいというお客様にはご自宅でお洗濯をしていただきたいと思います。

先ほど申し上げましたシルクの特徴、裏を返せばデメリットにもなります。人間の肌と同じ成分ですので、熱や紫外線に弱く、アルカリ性の洗剤にも表面が溶けやすい。繊維が細く長いので摩擦にも弱く、これらに注意しないことによって、元々の光沢や滑らかさが失われていくという感じです。

①摩擦に弱いので手洗い又はネットに入れて洗濯機のソフトコース ②人肌でびっくりしない温度で洗う ③アルカリ性洗剤を使わない(おしゃれ着用洗剤またはシャンプー)④紫外線にさらさない(日陰干し)

⑤個人的には、着用時の摩擦軽減の為に柔軟剤不可欠なのですが、専門的なサイトではやはり化学物質全般がNGだから柔軟剤も使用不可とされているところがあります。新品の高級シルクと違って、古着のカジュアルシルクにどこまで慎重になるかは本当に人それぞれだと思いますが、百歩譲って柔軟剤の代わりに洗髪用トリートメント(シリコン入り)のご使用をお勧めします。

紫外線についても、自分に置き換えて考えてみると良いのかなと思います。冬場なら敢えてお日様の力を借りるも良し、そもそも変色度合いは色にもよりますし、長時間でなければ良いと思っています。速乾性があるのもシルクの特徴です。

あとは、その特徴を活かして、都度洗濯しないというのも一つの考え方。目立った汚れが無ければ、風通しの良い場所で半日干して汗やにおいを飛ばします。お洗濯の頻度を少なくすることで、長もちさせる事にもつながります。

思えばこの出会いによって、「便利だから」という理由で服を買わなくなりました。便利や機能性という基準は、人によって様々であるということ。例え誰かがどんなに便利だと言っていても、私のライフスタイルや気持ちにフィットしない物は不便でした。お手入れに多少手間が掛かっても、着ているときに少しの緊張感を持って、胸を張って外に出られるこの服は 私にとって「便利な服」です。自分でお手入れを重ねることで変化していく様を、劣化と捉えるか愛嬌と捉えるか、それも人それぞれです。

ですので私も、全ての人にシルクを着てほしい!と思って記事を書いているわけではございません。単純に、お手入れの参考になれば幸いですし、同じシルクラヴァーの方に出会えればうれしい。そしてあわよくば、誰かのファッションに対するフィルターを外す何かになればいいなぁと思います。

fin

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