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情報共有の本質は、情報を「増やす」のではなくいかに「減らす」か

「あの資料は、どのフォルダに格納されているだろう…」
「目的のファイルを探してたら、フォルダ階層20以上掘り進めてた…」
「目的のファイルはこの5つのファイルのうちどれだろう…」

DropBox、Googleドライブなどの共有フォルダを導入されている現場からこのような悩みをよく耳にします。

新型コロナウィルスをきっかけにテレワークの導入が加速に伴い、オンライン上での情報共有が増加しました。
オンラインでの情報共有の頻度や量が増えれば、必然的にファイル数は増えていきます。

複数の人間が使用する共有フォルダの運用が使用者各自に委ねられてしまえば、フォルダ構造の複雑化やファイルが増殖。
共有フォルダは迷宮と化し、目的のファイルを見つけるのに膨大の手間をかけることになります。

個人の情報抱え込み回避や最新情報を円滑に社員間に共有するために共有フォルダを導入したはずなのに、いつの間にか無秩序なフォルダやファイル構造になってしまっている。
使用や運用方法が誤っているために、情報共有の効率化どころか却って業務を改悪してしまうのは勿体ないことです。

フォルダの迷宮に入り込みファイル難民を生み出さない共有フォルダを作るために乗り越えなければならない3つの試練とその解決方法をご紹介します。

試練1. どのフォルダにあるのか分からない

共有フォルダを開いて最初にぶつかる壁は「目的のファイルがどのフォルダにあるか」です。
「過去A社に提案した内容を確認したい」となった際に共有フォルダを開いたら…

・ 案件
・ 商品
・ 顧客
・ 納品

と、なっていたらどのフォルダに目的のファイルがあるのか瞬時に分かりませんよね。
こんなフォルダが並んでいれば、早々にフォルダを開くことを諦め

「これは、キーワード検索でそれっぽいファイルを探すしかない…っ」

と、なりますよね。
この原因は、フォルダの切り口と粒度が統一されていないのが要因です。

もしも、切り口が「業務」・粒度が「部門別」と統一されていれば…

・ 営業 ←過去の提案資料はこの中にありそう
・ 広報
・ 経理

と、瞬時に判断できます。
更に「営業」フォルダを開いた先に「顧客種別」で分けられていれば

・ 見込顧客
・ 既存顧客 ←過去のA社提案資料はこの中にありそう

更に「既存顧客」フォルダを開けば「企業名別」に分けられていれば

・ A社 ←過去のA社提案資料はこの中にありそう
・ B社
・ C社

と、瞬時にどのフォルダを開くべきか判断することが出来るのです。

試練2. どれが完成・最新ファイルか分からない

目的のフォルダに到達しても、まだ安心できません。
ファイル名が無秩序だと、

・ 目的のファイルを判別できない
・ どれが未完成または古い資料か分からない

といった問題が浮上します。
そうなれば、目的ファイルを引き当てるまでファイルを1つずつ開くという地獄のような作業が訪れます。

このような地獄を回避し、目的ファイルを瞬時に判別できるようにするには

 1. 5Wを意識した具体的なファイル名
 2. 完成ファイルがわかるバージョン管理
 3. 古いファイルを判別できる文字列

以上3点を踏まえたファイル命名ルールを定めることが必要です。

例えば「提案資料.pptx」だけではファイル名から何の提案資料なのか想像できません。
A社商品B提案20200214.pptx」と書かれていれば「2020年2月14日」に「A社」に「商品B」を提案した資料なのだと内容を想像することが出来ます。
5W全てを網羅する必要はなく、使用者が資料の内容を理解するのに十分な情報を記載する事が大切です。

仕掛り途中のファイルの使用を防ぐには、バージョン管理が有効です。
例えば、ファイル名最後に”v0.1”という文字列を追加し、更新時に”v0.2“→”v0.3”と増やしていきます。
そして、資料が完成したら”v1.0”とするのです。

v0.1 → v0.2 →v0.3 ⇒ v1.0 (完成)

ですが、ソフトウェアのマニュアルなど仕様変更により過去に完成した資料を更新する場合もあります。
古いファイル名の最後に”old”と文字列を追記すれば、

・ 営業マニュアル_v1.1_old.pdf
・ 営業マニュアル_v1.2_old.pdf
・ 営業マニュアル_v1.3.pdf ←これが最新ファイルだ!

と並んだ際に”v1.3”が最新ファイルだと確証を持って選択することができます。

試練3. ルールを決めてもフォルダの迷宮化が再発する

フォルダ構造やファイル名ルールを決めても、まだ安心できません。
使用期間の長期化や情報共有頻度が高いと、いつの間にかフォルダ構造が複雑化してしまいます。
ファイル増殖によるデータ量増加でサーバー容量が圧迫など、別の問題が発生することもあります。

一難去ってまた一難。
この原因は共有フォルダの運用が事実上、使用者の裁量に委ねられてしまっていることです。

この問題を解決するには、共有フォルダの秩序を守る「共有フォルダの運用責任者」を定めることが望ましいです。

週次・月次などタイミングを決めてフォルダ構造とファイル名のチェック、使用者に使い方の是正を求めるなどを実施するのです。
また、明らかに不要なファイルをリストアップし、使用者に確認後に削除処理を行うことでサーバー容量の圧迫を回避します。

「いやいや、重要なファイルを誤って削除したらどうするの?」

と、いうリスクを回避するために「廃棄フォルダ」を作成し、削除してもよいファイルを移行します。
削除期日までにそのファイルが必要な人は削除予定ファイルを元に戻す。
そうすることで誤って必要ファイルを削除することを回避するのです。

このようにフォルダ構造とファイルを管理する仕組みを構築し、運用することで業務効率の低下や必要なファイルの誤削除といったトラブルを防ぐことができます。

解決策まとめ

ここまでの内容をまとめると、共有フォルダの目的ファイル探索時間を削らすには、

1. 業務特性と使用者を意識した切り口と粒度が統一されたフォルダ構造
2. 内容を想像でき、最新ファイルを判別できるファイル命名ルール
3. 定期的にチェックし共有フォルダの秩序を守る管理体制

以上3つのポイントを抑えることが重要です。

共有フォルダは複数の使用者が自由に情報を出し入れできます。
その反面、業務特性や流れを加味した構造、ルールや運用体制を整えなければ、業務の手間を却って増やすものになり得ます。

今回紹介した対処法を実践することで、ファイル探索のストレスから解放されると幸いです。


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