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最初に座った席が好き はまの屋パーラー有楽町店

JR有楽町駅を出て、シクスバイオリエンタルは今日も賑わっていて、でもここももうすぐ閉店なんよねふかふかパンケーキあと何回食べられるかなとふらふら入ってしまいそうな気持ちもそうだな2%ぐらいはある。強存在。いやいやと右目で行列を眺めながら予定通りその先のビルに向かっている。
新有楽町ビルの地下1階。
きれいな昭和、と勝手に名付けている地下はどのテナントも主張は控えめで、ランチタイムも皆目的の店ヘすすすと入っていく。
ドラッグストアや飲食店が入り乱れた通路の隅にはまの屋パーラーはある。
2011年12月に45年の歴史に幕を閉じ一度閉店。その後、現オーナーさんが内装もメニューもほとんどそのまま引き継いで復活させてくれた、みんなの愛が令和までバトンしたようなお店。

開きっぱなしのドアからは店内がさくっと一望できる。こじんまり、決して広くはない。暗くない。むしろ喫茶店にしては明るい。浅い煉瓦色の低いソファ。レジの後ろにある「お客様チケット」はいつ見てもポケットが満席で、ここに席を設けることができれば常連風を装えるかもといつも狙っているがどうなんだろう。

入口ドアの後ろに一区画だけあるボックス席。
はじめて来たとき、少しだけ申し訳なさそうにこちらで、と案内してくれた。
雑誌が入った棚は手を伸ばせば届く距離にあり、備品が少し置かれ、ガラス窓からは地下の光景をウォッチできる。ぼすんと座ると家みたいな空気になった。家は言い過ぎた、仲いい友だちの家ぐらい感。着いた〜感。きゅっとまとまった空間は人を安心させる。

低めのソファに埋もれながらスタンド式のメニューを手に取る。小さめのゴシック体でずらっと並んだサンドイッチメニューはハーフで2種類組み合わせ可、トーストも可という選択肢を提案してくる。迷いの森かよ。好きだよ。全部の道を試したいじゃん…。
たまごサンドとフルーツのハーフたまごのほうだけトースト、あと珈琲という熟考したにしては80%ぐらいの人これではという激凡人オーダーに落ち着く。野菜もツナもスペシャルも気になり、何ならプリンがあることも確認している。あわよくばプリン。

更に埋もれていると思っていたよりずっと早く、ハーフアンドハーフの素晴らしい皿が到着した。
二口サイズにぴしっとカットされた美しきサンドが整列している。食べ物にかわいいとかあまり言わない派なんだがこの整列はかわいい。ちっこいサンドが丸皿ぎゅうぎゅうに、自分この位置で!完璧です!ぴし!みたいに並んでいる。
カリッと焼かれたトーストたまごは、まだ中がほんのり温かい。甘くないタイプで塩気とマヨ気を感じながら珈琲を飲む。手持ちに最高のサイズ感で行儀が悪いが本を取り出す、さくさくたべる、読む。途中フルーツを挟む。甘いさっぱり目のクリームに缶詰フルーツがこれもこぼれない盛りすぎない適切な分量で挟まれている。季節を問わず安定した内容物のはまの屋のフルーツサンドはものすごく安心する。

窓際にコイン式の星占いが置かれている。
100円を入れると球体から紙が出てくるタイプの、懐かしいと言いつつ実は一度もやったことなくて置いてるところもここ以外知らない。誰も見ていないのに自意識の高まりで妙に恥ずかしく感じて、まだ回したことがない。誰かと来たら、そのときはじめて占われてみようと思っている。そして結果おなかいっぱいでたどり着けないプリンも食べてみようと思っている。

新有楽町ビルは2023年に建て壊しが決定している。
はまの屋パーラーは他に日比谷店と渋谷店があるので、サンドイッチが消滅することはきっとないのだけれど、私はこの有楽町店の友だちの家の空間で、あと何回もハーフアンドハーフ組み合わせを悩みたい。

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