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#020 概念の言語化--理系各員に捧ぐ

本シリーズは、①勉強頑張ったら選択肢が増える、②理系かつ高成績の方が選択肢は多い、③選択肢が多いと良い会社に入れて幸せになれるというよくあるお話の②まで必死で頑張ったものの、③は半分嘘である。ということに気付いて四苦八苦した僕が、理系が気付かぬうちに罠にハマらないために、考えて損のないだろうトピックを書いていくものである。

今回は、最近理系の人と話して面白かった話題を紹介したい。理系がよく使う各概念を、どんなイメージで使っているか、という概念の言語化・イメージ化の話だ。

数学の記号は、記号ごとに決められた手続きを表す。「=」はこの左右に書かれたものが、全く同じものだということを示すし、「+」はこの左右に書かれたもの同士の和を取るという意味を表す。

ただ、これらを無意識のうちに、日常的なイメージに当てはめて理解していることがある。

「=」なら、天秤に乗せて左右が釣り合ってる様子を思い浮かべる人や、左から右に中身は同じままに変身する様子を思い浮かべる人などがいるだろう。

「+」なら、2つの粘土のようなものをくっつけて一塊にするイメージを持つ人や、十字型の串で左右のものを刺して一つにするイメージを持つ人などをがいると考えられる。

こういった理解は、抽象的な数学や工学の理系の議論にイメージを持たせる上で大切な役割をしているが、個人個人がそのイメージを使うのみで、共有されることは少ない。

抽象的で捉え所のないものは、言葉にすることによって初めて道具としての体をなす。そして不思議なことに、その言葉が表す範囲でしか、その道具は使えない。だからこそ、概念の言語化とそのアップデートは常に必要だ。

今回は分数を例に挙げて、概念の言語化イメージとそのアップデートを紹介したい。

分数は変換器に見えている

僕は分数を見ると、変換器というイメージで見る。関数のイメージと同じだ。関数の中でも、大きさ変換と意味変換の2つの機能を持つ関数(=変換器)に見える。

大きさ変換は、誰もがわかる感覚だと思う。

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イメージはこの図の通りで、入力の基準(大きい□)で入力値を割ることで、単位量(のようなもの)を算出し、出力の大きさ(小さい□)に変える。

僕と話した知り合いたちも、このイメージに類する理解を持っていた。

ある人は、円を思い浮かべて、その円を塗りつぶすイメージを分数に持っているらしい。円グラフの概念そのままだ。

ある人は、計量カップのメモリどれぐらいまで入っているか?というので分数をイメージしているらしい。小中学校の勉強をちゃんとやってきた様子がうかがえる。そんな問題あったなぁ。

次に単位変換のイメージを紹介しよう。

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単位変換は、時間と速度と距離の問題をイメージしてもらうのが一番早いと思う。これは、やったことがない人もいると思うが、数式は単位を入れ込んで計算した方がいい。例では、左辺で秒[second]が約分されて、距離[m]だけが残るから、「=」の先の右辺も、距離[m]の量が算出される様子が見える。

余談だが、秒は元々、second minuteと言われていたらしい。分を表すminuteが一刻とか、より小さいとか、瞬間とか、そういう意味だった。でもそれより小さくしたいからってことで、2番目のminuteと名前がついたようだ。言葉の意味を知ると、こういう計算上の概念も、ちゃんと意味を持って素朴な考えがあって導入されたんだな、というのがわかる。

話を戻す。単位を入れ込むと、数式は一気に意味を持った文章になる。時間と速度と距離の関係は、「は・じ・き」や「み・は・じ」で覚えるものではない。単位を見て、その意味を理解して使う概念だ。

さらにこの考えが理解できると、補助単位(c:センチやm:ミリ、k:キロなど)が入った計算も簡単にできる。

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全て、単位変換の機能を持った分数を通すことで処理できる。補助単位は日本語に直して「○あたり□」とし、○を分母、□を分子に持ってくればいい。

ちなみに補助単位は、10の階乗を表すだけなので、数式中に出てきた場合は、必要に応じて単位から外せば、一回の計算で指定の単位に変換できる。

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持った概念イメージは大胆に変化させる

イメージによって、非常に本質を突いていると感じる時と、なんだかズレているなと感じる時がある。

概念に対するイメージは、学習の道筋で変化させることが必須である。

例えば、さっきの分数の例の、円グラフや計量カップイメージは大きさ変換の機能は持っているが、単位変換の機能は持っていないように見える。

実際、僕自身も、最初は大きさ変換しか考えていなかったが、高校の後半ぐらいで基礎じゃない物理をやり始めてから、単位変換に耐え得るように変換器というイメージに変えた。

新しい概念を学習するときは、とっかかりとして元から持っている理解イメージの中で、似たものを探す。最初はそれでいいが、学習を進めるにつれて、従来のイメージだけでは対応できない部分が出てくる。

そんなとき、柔軟に新しいイメージを生成できるかどうかが、その先に進めるかどうかの分かれ道になる。

まとめ

分数は、変換器と呼んでも同じような意味なんじゃないか?というのが今回の内容だった。具体的には、大きさ変換と単位変換の2つの機能の混合変換器である。

もちろんこれも僕の現時点の認識で、もっと深く真理をついた喩えを持っている人や、同じような意味だけど違う表現の人もいると思う。

差し支えなければ、コメント欄でどんなイメージを持っているか教えていただけるとありがたい。面白いものは後日取り上げて、また別の概念(積分など)のについて書くときなんかに併せて紹介したい。

ではまた次回も、よろしくお願いします。


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