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私が勉強し続ける意味

私は受験指導をしている。

小学生から高校生まで、幅広く教えている。

毎年のことだが、受験が近づくと現場はピリピリとしてきて、
緊張感と焦燥感と不安が混じる。

不甲斐ないことだが、私が指導した生徒の中には不合格になってしまった生徒も多くいる。

どの生徒も第一志望に合格させてあげられなかったことは本当に悔やしい。

最も印象的な不合格が一つある。

あの経験がなければ、今の僕はない。

当時の僕は個別指導の講師として働いていた。

まだ経験も浅く、右も左もわからない状態だった。

毎日、子供と接するのが楽しくて楽しくて、毎日がむしゃらに働いた。

その中で、ある高2の女の子を担当した。

彼女は勉強が苦手で、特に英語が苦手だった。
僕の担当は英語だったため、授業の進度は遅く、定着には時間もかかった。

その頃の僕はなぜ、そこまで勉強に身が入らないのかわからなかった。

だが、この授業の時間に価値を感じてもらえたらと思い、様々な工夫を実践し、彼女のことを毎日考えながら試行錯誤を繰り返した。

そのうち、彼女は期の変わり目には僕の授業を所望するようになった。
当時の私にとっては初めての経験で他の誰でもない私が責任を持って成績を伸ばそうと心に決めた。

彼女との信頼関係が築いていることが実感できた頃、彼女にも変化が起きた。

毎日のように塾に足を運び、毎日のように机に向かっていた。
単語力は日に日に増え、できることも徐々に増えてきた。

ただ、一つ問題があった。

模試の結果が変わらないこと。

大学受験の模試はA~Fまでの評価がフィードバックが返ってくる。

滑り止めの大学こそ、B判定になったが

肝心の第一志望がいつまで経ってもE判定のまま。

僕は焦っていた。

英語の学問の特性上、突発的にできるようにはならない。
地道な音読や単語学習などが実って初めて実力になる。

本番まであと2ヶ月。

彼女の模試の点数が伸び始めたのだ!

今までできなかった問題はどんどんできるようになり、成果が出れば、本人も勉強により精が出る。

いい循環になってくて、希望が見えてきた!!
僕は毎日、彼女を激励し続けた。

「成果が出ているのだから、これまでの積み重ねは間違っていなかったよ」

「日々、合格した自分をイメージしながら、勉強し続けよう」

そこから月日は瞬く間に経ち、あっという間に本番だった。

本番の朝。

私たちの塾では本番の朝は見送るために駅に集まる。

手は悴み、生徒を待っている間につま先の感覚がなくなるような寒い朝だった。

出発の電車の時間ギリギリに走りながら彼女は現れた。

本番に限って遅刻するやつがいるか!笑

急いで、彼女のもとに行き、カイロと先生たちのメッセージカードを渡して見送った。

僕「何で、今日に限って余裕がないんだ笑 しっかりやっておいで」

彼女「ひえええ! いってきます!」

緊張しやすい彼女にとっては朝のアクシデントは、いいリラックス剤になったかもしれない。

そして彼女の顔は今まで見たことない、いい顔をしていた。
直感的に上手くいくような気がしていた。

そこからは怒涛の日々で、僕たちは結果のことはあえて触れずに、とにかく先の試験のために全身全霊を注いだ。

試験は全て終わり、いよいよ結果発表の日!

私は全く根拠はないが、上手くいっている気がしていた。
TVや漫画のように逆転合格が起きると思った。

なぜなら、彼女は心を入れ替え、ひたむきに勉強をし続けたのだから。

始まりは少し遅くなったが、雪の日も、嵐の日も欠かさず勉強をしにきたのだから。

勝利の女神が微笑むだけの努力はしてきた!!

結果は。。。



不合格だった


なんて声をかけていいかわからなかった。

そんな自分に彼女が先に声をかけてきた。

「合格できなかったけど、先生のせいじゃない。私の努力不足だから」

涙いっぱいの目で彼女は言った。

何が先生だ。

何が受験指導だ。

何にも指導できていなかった。

彼女を合格に導けなかった。断じて彼女の努力不足だからではない。

私の力不足だ。

悔しくて悔しくて、過去の自分を呪った。

あの時にこうすれば良かった。あの時にこう伝えれば良かった。

過去を振り返れば、キリがない。

進学先の決まった彼女は僕に手紙を書いてきてくれた。

「不合格になったことは先生のせいじゃない。合格はできなかったけど先生に教えてもらうことができて良かったです。ありがとうございます。」

手紙の一部抜粋だ。

僕の使命は彼女を第一志望に合格させること。彼女は使命を果たせなかった僕に出会えて良かったと言ってくれる。

なんて尊いのだろう。

そして彼女は一緒に可愛らしいハンカチをくれた。

彼女はハンカチだけでなく、多くを僕にくれた。

先生であり続けることの難しさ。

先生を名乗ることもなることも簡単ではあるが、先生としての責務を全うすることや先生としてのあり方を追求することははるかに難しい。

この経験は今も忘れない。

僕はあの日に誓った。

先生として、決して傲慢にならず謙虚な姿勢で、日々勉強し続ける。

僕が勉強することで1人でも、明るい未来に導けるのならいくらでも勉強する。

あの日の悔しさを僕は忘れない。

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