見出し画像

BRICsの各国思惑とは


BRICs首脳「新興国が経済牽引」

南アフリカのヨハネスブルクで開幕したブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ(BRICS)首脳会議で、ビジネス会合に出席した首脳らは「グローバルサウス」と呼ばれる新興国・途上国の役割拡大を強調した。中国の習近平国家主席は会場に姿を見せなかった。

欧米から金融制裁を受けているロシアは、現地通貨決済による新興国との貿易に力を入れている。

モディ氏はインドの改革やデジタル決済技術の進歩などに触れ、「インドは世界経済の成長エンジンになる」と強調した。

米大統領、G20で来月訪印

バイデン大統領が9月7~10日にインドの首都ニューデリーを訪れると発表した。20カ国・地域(G20)首脳会議に出席する。直前にインドネシアで開く東南アジア諸国連合(ASEAN)関連会合は欠席し、ハリス副大統領を派遣する。

米ホワイトハウスのサリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)はロシアによるウクライナ侵攻や気候変動などの国際的な課題を議論すると説明した。

「パートナーとともに、特に(新興・途上国を指す)グローバルサウスの国で価値ある提案をする機会として活用したい」と話した。

国際通貨基金(IMF)や世界銀行などと協力し、途上国支援の拡大を話し合う意向も示した。中国の広域経済圏構想「一帯一路」を名指しし「中国の威圧的で持続不可能な融資慣行に代わる信頼できる選択肢を提供する」と表明した。

BRICSとは

南アを除く4カ国(ブラジル、ロシア、インド、中国)の頭文字を取り、2050年までに世界経済を席巻する成長市場だと指摘した。もともとは他称だったが、4カ国は09年にロシアのエカテリンブルクで初めて首脳会議を開いた。10年に南アが招待国として参加し、11年以降には正式なメンバーに加わってBRICSとなった。

BRICSの5カ国は世界人口の40%を占める。世界経済に占めるシェアは00年に8%に過ぎなかったが、22年は26%に上った。この間、日米欧などの主要7カ国(G7)の国内総生産(GDP)は65%から44%に低下した。物価水準の差を考慮した購買力平価ベースでは既にBRICSがG7を上回っている。

米国と対立する中国には、グローバルサウス(南半球を中心とした新興・途上国)と呼ばれる勢力を結集し、影響力を拡大する狙いがある。

このほか、BRICSには共通通貨構想もある。共通通貨の実現は遠いとみられるが、ドルに頼らない現地通貨決済の拡大などが議論されそうだ。米欧から経済制裁を受けるロシアにとっては、制裁の効果を和らげる可能性がある。

G7や西側の経済力が相対的に低下する中、安全保障や経済で米欧への過度の依存から脱却を模索する国は多い。新興各国が自らの国益を追求するなか、BRICSへの接近は有力な選択肢の一つとなる。

ただ、BRICSの内情は複雑だ。中国の経済規模は残り4カ国の2倍以上と突出しており、2位のインドなどはBRICSが中国主導の反西側連合になることを警戒している。インドは中国と国境紛争を抱えるうえ、日米やオーストラリアとつくる「Quad(クアッド)」にも参加するなど、経済・安全保障では西側との関係も重視する。

ブラジル、南アは中国の投資を歓迎し、それぞれ地域を代表する新興国として存在感を高めたい思惑がある一方、米欧との対立は望んでいない。米欧からの投資は経済成長に不可欠なためだ。これはBRICSに関心を示すサウジ、インドネシアなどの国々も同様だ。

BRICSをはじめとするグローバルサウスには、先進国主導の国際秩序への不満が共通して存在する。ただ「非西側」というアンチテーゼを超えた共通の価値観やビジョンはなかなか示せない。政体も民主主義や権威主義、王政などさまざまだ。

存在感を高めるインド

BRICsの存在感が増している。西欧諸国に不満のある国の集まりと思いきや、対立を望まないブラジルやどっちつかずのインド。中国もアメリカもインドの取り込みに必死だ。

インドが23日、月面着陸に挑戦する。成功すれば人類史上4カ国目となり、今後の宇宙資源の開発競争で大きな一歩となる。インドの株式市場では宇宙開発が新たな注目セクターとして投資家の関心を集め始めており、関連銘柄がリストアップされるようになっている。

人口、経済規模、外交などあらゆる面で存在感を高めたインド。これまでに米ロ中のみが成功させてきた月面着陸の歴史に名を刻めれば国際的な評価が一段と高まる。

株価は足元ではさえない展開が続いている。インド株全体が7月に買われた反動から上値が重く、なかなか好材料には反応しなくなっているからだ。ただ月面着陸に成功すれば短期的な資金が入る可能性があるほか、成長期待から長期的な資金が今後流れ込むきっかけになるかもしれない。

モディ首相は国家プロジェクトのみならず、民間企業の宇宙産業への参入拡大を目指す。インド国内の製造業の裾野拡大を目指す「メイク・イン・インディア」にもつながる。産業の拡大で新たな関連銘柄やスタートアップが登場する可能性も高まる。インドは日本と月面調査で協力関係にあるだけに、日本の投資家も注視すべきテーマだろう。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?