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隠していたポテトチップスを夫に食べられて号泣した日のこと。

私はポテトチップスが大好きです。

どれだけ好きかというと、ポテトチップスは間食だと太るので主食にすれば太らないと言い張って3食ポテトチップスにしたことがあるぐらい好きです。(吹き出物ができた)

14年ぐらい前のこと。

私は新宿のITスクールでパソコンを教えていて、夫も普通にサラリーマンでした。(今は一緒に会社をやっている)

「ワンオペ」なんて言葉がなかったころですが、家事も育児も保育園の送迎も、

全部1人でやっていました。

そんな私の唯一の楽しみは、

子どもを寝かしつけた後、

夫が帰ってくるまでのひとり時間に、買っておいたポテトチップスを食べることでした。

ある日のこと。


そのポテトチップスが、
無いのです。

楽しみにしていたカルビーの新作でした。


私は、

子どものように泣きじゃくりました。

大きな声で、
わんわん泣きました。

「なんで・・・なんで食べたのよー
 私のポテトチップス、なんで無いのよ!

 あなたはいつだって買いにいけるじゃない。
 私は買い物する時間もないの。

 コンビニによる時間もないの。

 だからこれは、

 週末に買っておいた貴重なポテトチップスなの。

 あなたはいつだって
 買いにいけるのに。

 どうしてわざわざ私のポテトチップスを
 食べるのよぅ・・・」

今だったら、
コンビニに買いにいけます。

でも2歳の息子を1人置いて、
夜出ることもできません。

私は仕事が終わると、
急行に乗るために新宿の地下街を
毎日猛ダッシュしていました。

朝は4時に起きてごはんの支度。

洗濯と掃除をして自分の支度をしてから
長男を起こす。

園に行くまでの時間は、
遊んだり本を読んで過ごしました。

帰ってきてからも、

ほんの少しの親子の貴重な時間を一緒に過ごせるように、晩ごはんは朝のうちに用意していました。

要するに私は、


いっぱいいっぱいだったのです。

初めての子育てで、

子どもと一緒にいなくては
いいお母さんでいなくては

と、一生懸命でした。


それなのに。

夫は朝起きて私の作った朝食を食べ、
自分の支度をして、でかけていきます。

よく、

一度着替えた服装が気に入らないのか、全部着替え直していることがありました。

私は自分がその日どんな服を着ているかなんて、

マンションのエレベーターの鏡を見て
初めて確認するぐらいでした。

私がわんわん泣いた原因は、

ポテトチップスを食べられたことだけじゃなかったんです。

休みの日は夕方まで寝ていることや、

洗濯も掃除も料理もしないことや、

子どもとも一緒にいてくれないことや、

そのことに対して何も言えない自分に対してや、

そーゆー日々のいろんなうっぷんが
全部でてきたんです。

ポテトチップスが引き金となって。

今だったら

「今日は疲れたから夕飯を作る気がしない。弁当買ってきてくれ」

とか言えますが、

当時は、

「夕飯を作らないなんて、
 外で買ってきたもので済ますなんて母親失格だ」

と、

本気で思っているような母親でした。

仕事が忙しい夫に文句を言ってはいけない、と思っていました。

あの頃を思うと、

張り詰めた私と一緒に暮らしていた夫も、辛かったと思います。

私も夫も、親2年生。

夫婦としても2年生。

その数年後に、

”自閉症のしんちゃん”という爆弾が
我が家に落ちてくるわけですが、

いま思うと、
あの頃が一番大変でした。

長男は手のかからない2歳児でしたが、
それでもあの頃が一番、大変でした。


あれから、私も夫も変わりました。

先日、

戸棚の上の奥に隠しておいたポテトチップスが、無くなっていました。

私はもう、泣くことはありません。

母として妻として17年生、

『あたしのポテトチップス食べたの誰だよっ』って言えるから。


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