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管理職は何を管理するのか

日経COMEMOテーマ企画で、管理職は必要ですか?というド直球な課題が提示されたので、思うところを少し書いてみようと思います。

ここ数年、管理職というものの存在しない超自律的なティール組織などが流行っています。通り一遍の知識はありますが、私自身そういうところに身を置いたことがないので、管理職が必要か否かの議論ではなくて、管理職ありの組織における管理職の役割について考えることにします。

ずばり管理職は何を管理するのか、WHATについてです。

管理職は何を管理するのか

これについては、個人的にはとても明確で、業務のアウトプットと人材育成の二つだと思っています。業務がプロジェクト的なものであれば目標は明確ですし、いわゆるライン業務であっても、期初に何らかの部門目標を立てますので、それを達成するためにプロセスやリソースを管理します。私はこれまでの仕事人生の中で3分の2くらいがプロジェクト業務、残り3分の1がライン業務でしたが、基本的に仕事の成果は目標の達成度で見られるという意味では同じだと思っていました。

もう一つの人材育成という観点についていえば、いわゆるライン業務の方がより明確だったと思います。部下の育成責任というのが確実に目標に入るからです。プロジェクト型の場合には、ここは若干微妙になりますが、私がこれまでいた組織では、直属の部下がいなくても、目標の中でやはり後進の指導という項目を含むことで責任を持つことになりました。

リモートワークによって管理職の定義が変わるのか

最近、リモートワークの進展によって、管理職の存在意義が脅かされているかのような議論がされていますが、私はそれは本質ではないと思っています。なぜなら、冒頭に述べたように管理職の仕事WHATに変化はなく、業務と人材の管理に他ならないからです。

では、リモートワークになると管理の仕方HOWが変わるのか、ということですが、これも本質的には良いマネジメントの方法は変わらないはずだと思っています。とはいえ、例えばリモートになって互いの仕事ぶりが見えにくくなったので仕事の進捗管理も部下の指導もやりにくくなったという側面は確かにあります。

ただし、仕事の進捗管理は本来、見えるところで仕事していても定例報告なりで把握しておくべきだと思います。逆にいうと、進捗管理をホントに自分の目で見てしようとしたら、監視するようなマイクロマネジメントになってしまうでしょう。リモートによって得られる情報が減るのは確かですが、もしそれで全く進捗が見えなくなるとしたら、これまでするべき管理をしていなかっただけです。

人材育成については、リモートの方が、より意識的な働きかけが必要ではないかと感じています。OJTによって学ぶ部分について、自分自身の仕事ぶりが見えることで教えられていたことは伝わりにくくなるので、意識して会議や顧客との電話に同席させるような工夫が必要です。

それから、育成のための時間を別途設けることはとても有用だと思います。これは特にリモートになると、部下の側も同輩の様子も見えにくくなることも相まって、自分が成長できているのか不安になるものだからです。リモートでなくても重要な観点なのですが、リモートだと必須になると感じています。

これからの管理職に求められる資質

最後にリモートワークに限らず、これからの働き方に向けて管理職により求められる資質について、少し触れて終わりにしたいと思います。既に書いたこととも少し重複してしまうのですが、私は人材育成力ではないかと思っています。業務の管理力ももちろん大事なのですが、管理職になる人は自分の仕事で成果を挙げてきているわけですから、業務管理は長けている人が多いと思うのです。

人をうまく動かすということはこれまで通り求められますが、多様な働き方の中で必ずしも徒弟制度的な形だけではない部下の育成ができるかというところは開拓の余地が大きいところだと思います。VUCAの時代、すなわち不確実で変化の大きい時代には、ティール組織ではなくても自律的な動き方のできる人材が求められています。そういう人材を育てるためにはマイクロマネジメントではなく、自主性を大事にしつつパフォーマンスを担保するような指導が必要だと思います。そして、それは必ずしも現在のマネジャーが受けてきた指導と同じものではない可能性が高いのではないでしょうか。

部下の立場からいうと、ある程度自律性を保ちながら仕事を進めさせてくれて、かつ自分の育成にフォーカスしてくれる上司と仕事ができたら、こんな幸せなことはないですね。

読んでくださってありがとうございました。スキやフォローしていただけると、とても幸せです。


追記:拙稿のコメントの一部を、日経新聞2020年9月15日朝刊に小さくですが取り上げていただきました。


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