見出し画像

時事マゴノート 2021/08/19 PayPay決済手数料有料化とは

PayPayの普及の背景

日本で一番つかえるお店の多いQRコード決済サービスのPayPayが8月19日、中小加盟店の決済手数料を有料化することを発表しました。

どうしてほかのQRコード決済サービスに比べ使えるお店が多いのかというと、これまでお店側がPayPayに支払う手数料が無料だったからです。

本来、決済サービスを提供する会社は加盟店から手数料をもらって経営を成り立たせています。お店が手数料を払ってまで決済サービスを導入する理由は、お客さんが支払いをしやすくすることでお店で使ってくれる金額が増えるためです。

しかしPayPayは常識をくつがえし、導入するお店から手数料をもらうことなくサービスを提供してきました。つまり赤字覚悟で規模を拡大してきたのです。

他社のサービスが利用額の2%〜3%くらいを手数料としているなか、PayPayは無料。つまり売上の全部がお店に入ってきます。

QRコードのステッカー1枚で導入ができるのも相まってPayPayはあっという間に日本中に普及しました。

これ以上ムリ PayPayの赤字額

どうして今まで赤字がガマンできたのかというとPayPayがソフトバンクヤフーがお金を出し合って作った合弁会社だからです。
もちろん戦略的な規模拡大による赤字です。

高還元のポイント付与など、さまざまなキャンペーンで消費者のふところ事情に訴えかけてきたPayPay。宮川大輔さんのコマーシャルもばんばんやっていておなじみですね。どちらも利用者を増やすためにマーケティング費用がかかっています。
ではその赤字額はいくらぐらいなのでしょう。

PayPay株式会社の決算赤字 (2018年6月設立)
 2019年 3月期 当期損失 367億円
 2020年 3月期 当期損失 856億円
 2021年 3月期 当期損失 719億円

さすがにちょっとびっくりしませんか?
勢いのあるPayPayのイメージからは想像もつかないような大赤字です。

画像2

既定路線だった有料化

この状況をみれば誰でもいつまでもこんなことは続かないとわかります。

つまりPayPayはどこかの時点でかならず手数料を設定する必要があったわけです。

そのタイミングが今回発表があった2021年10月1日だったと。

でもそんなの普通、事業者さんは知りませんよね。

手数料を取られることになった中小のお店にとって今回の発表は寝耳に水だったことでしょう。

導入後の撤廃はむずかしい

発表当日のニュース番組でのお店の経営者へのインタビュー内容はこんなものでした。

「手数料がかかるようになるとわかっていたら、導入はしなかったかもしれません。」

「(手数料がかかるようになるまでの)ここ1ヶ月ちょっと様子をみてから、継続するかどうか考えます。」

とはいえ、一度導入したあと急にPayPayが使えなくなるとお客さん離れにつながるおそれがあります。
ほとんどのお店は新しく設定された手数料を支払ってサービスを継続することになるでしょう。

損して得とる 

PayPayは2016年のサービス開始から快進撃をかさね続け、いまでは加盟店340万店、ユーザー数4,100万人の巨大顧客網をもつにいたりました。
今後はこの顧客網をつかって収益の拡大をはかることになります。

PayPay株式会社の中山一郎社長は申し訳なさそうな表情をうかべ終始その姿勢をくずさずに発表記者会見にのぞんでいましたね。

しかし内心ではようやく基盤体制が整ったことに「さぁ、収穫の時期だ」と思っていたのではないでしょうか。

手数料の料率

PayPayが適用する手数料の料率は1.60%と1.98%の2種類です。

詳しい比較説明は省きますが、有料化したあとでも業界内ではかなり低い料率となっています。

そのため、競合関係にある他社が囲いこみのための料率引き下げをしかけてくるかどうかが注目点となりそうです。
キャッシュレスサービス業界全体の手数料低下につながれば、中小の加盟店も助かることになります。

いずれにしろ、いち消費者として今後も良質なサービスの継続を願うばかりです。

以上が今回の時事マゴノートでした。


番外コラム

銀行のはなしをします。銀行主導のQR決済はなかなか伸びません。

理由はいろいろあると思います。後発であること、ポイント還元が無かったりあっても少ないこと。

しかし一番の問題は銀行の足なみが揃っていないこと。これわりと銀行あるあるです。一緒にやれば効率がいいことをなぜか別々にはじめちゃいます。

じつは銀行系のQR決済だけでもBank PayゆうちょPayりそなウォレットとか、めっちゃいろいろあってぜんぜん統一されてないんです。

もうちょっと仲良くしてほしいです。


こちらでもキャッシュレス取引に関する記事を書いています。


この記事が参加している募集

コンテンツ会議

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?