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【アジア横断バックパッカー】#13  3ヶ国目:カンボジア-シェムリアップ 待ってばかりでなかなか到着しない

 100メートルほど行くと食堂を併設した待合所があった。僕が着くと、ちょうどバンが旅行者を満載して出発するところだった。シェムリアップ行はここで待つようだ。

 待合所はナカサンを僕より1時間前に出発した旅行者でいっぱいだった。どういう事情かは分からないが、ここでずっと待っているらしい。さっきからよくわからない続きだが、とりあえずおいていかれたりとかの心配はなさそうだった。昼を過ぎているので食事している旅行者もいる。道路を挟んで向こう側にも小さな食堂や売店が2、3軒並んでいて、途中で単独旅行者はそちらに移動を促された。その小さな食堂ではナカサンのバスターミナルで見かけた韓国人男性の2人組がビールを飲んでいた。どちらも40代くらい。やはり長い事待っているようで、すでに顔が赤い。1人は日本語が話せた。
「バス、いつ、くるか?」
 分からない、と僕は言った。そもそもバスが来るのだろうか。この状況すらよく分からない。彼らはビールをもう1本頼んでいた。
 
 1時間近く待った。水を買うか悩んだが、1リットル1ドルと高額で買わなかった。街まで行けばもっと安く買える。
 またバンが1台到着し、僕は結局それに乗せられた。おそらくこのバンで近くの街まで旅行者をピストン輸送し、そこでシェムリアップ行のバスに乗り換えるのだろう。シェムリアップまで行くには小さすぎるバンだった。

 バンはとにかく旅行者を乗せられるだけ乗せ、ギューギュー詰めだった。ただでさえ大きいバックパッカーの荷物も載せるからとんでもない密着率である。綺麗で気が強そうな欧米人女性バックパッカーに前も横も挟まれ、僕はひたすら身を縮めた。
 
 すこしうとうとしているとまたもやどこかのバスターミナルに下ろされた。規模はかなり小さい。屋根だけの待合所とトイレ、簡単な食堂。カンボジアの街をゆっくり見ている暇もない。またここで待機。シェムリアップにはいったいいつつくのだろう。暗くなってからの到着は避けられない。
 
 ぬるくなってしまった水を飲みつつ、他の旅行者を眺めながら待つ。日本人はおらず、アジア人もさっきの韓国人をのぞけば僕だけで、あとは欧米人だった。

「欧米人」と言っているけれど要するに「アジア人以外」ということでアメリカ人なのかイギリス人なのかフランス人なのかはたまたドイツ人かは分からない。だが、僕ら日本人が中国人と韓国人と日本人の見分けが何となくつくように、欧米人、特にヨーロッパ人は誰がどの国かちゃんと見分けがつくらしい。
 
 東南アジア人やインド人とかのバックパッカーは滅多に見かけない。そしてその国々はまさに今僕らがカンボジアに来ているように、「旅行者が好んで訪れる安い国」だ。バックパッカーは「貧乏旅行」とか言われるが、それは旅行形態で比べたら、と言うことで、つまりはバックパック旅行もお金持ちの遊びだと僕は思っていた。僕らはiPhoneを使って安宿を探し、Macbookを使って「○○という街の○○というレストランは安くておすすめ」とかをネットに書き、お釣りをごまかされたり数百円ぼったくられたことに腹を立てるのだ。
 
 まあ、だからなんだという話でもある。そういいつつお前も貧乏のふりをした金持ちバックパッカーではないかと言われれば黙るしかない。
 でも、そのことを分かっているのとわかっていなのとでは何かが違うのではないかと、僕は旅中も、旅から帰ってきた今も考えている。(続きます)

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