02.19

雨。雨の一日は嫌いな人もいると思うけれど、ぼくは好きだ。傘にパタパタとはねる雨音が、いつもの静かな帰り道をすこしだけ騒がしくしてくれる。いつも考えて考えてあたまのなかがぐるぐるしているぼくにとっては、静かなひとときも大切だけど、それと同じくらい雨で騒がしい日も大切。悪くない。傘をさすのが下手だからか、ズボンの裾が濡れている。これも雨の日だけの特別。こういう日も悪くない。

心のBluetooth

昨日のバスに置き忘れたウォークマンがかえってきた。駅前のバスセンターで昨日乗ったバスの行き先、乗った時刻をはっきり伝えると、受付の方が大丈夫ですよ。ウォークマン、お預かりしています。ほんとですか!よかった!思わず声に出してしまっていた。それからは受付表に住所、連絡先を記入してウォークマンを受け取る。ありがとうございました。と一礼をしてバスセンターを後にして、すぐさまウォークマンの電源をいれる。昨日のまま、再生途中だったBUMP OF CHICKEの「流れ星の正体」がBluetoothのイヤホンから流れた。昨日のまま。本当によかった。忘れ物を届けてくれたのはあのバスの運転手さんだろうか。あのとき確かにウォークマンとイヤホンとを繋ぐBluetoothは切れてしまったけれど、こうやって今戻ってきてくれた。今日もどこかでバスを走らせている運転手さんにできることなら心のBluetoothを繋いで、ありがとうございました。と伝えたい。こころとこころをつなぐ。そういうつなぎ方もBluetoothならできるんじゃないかなと思う。

店員さんと。

バスセンターを後にして、本屋さんへ向かう。昨日の夜に大学以来の友人とリモート飲みをおこない、飲みながら次に行きたい旅行計画を練り上げた。次に行きたい場所。それは”鎌倉”に決まった。鎌倉に行けば、美味しいパン屋さんにカフェ、ごはん屋さんで食欲も満たせれるし、文具屋さんや雑貨屋さんといった雑貨欲も満たすことができる。そして何より由緒あるお寺や神社をめぐるコースもあって、ハイキングがてら鎌倉を歩きつくすこともできる。歩くだけで楽しそうなまち。それが鎌倉。だから、次に行く目的地は”鎌倉”に決まった。あんまり鎌倉に関する知識がなかったため、今日は本屋さんで鎌倉に関する本を探して、購入することが目的だった。本といっても、探していたのは小説。あたまのなかでずっと思い浮かんでいた鎌倉に関する本は二冊あって、ひとつは青山美智子先生の「鎌倉うずまき相談所」だ。ずっと興味があったけれどなかなか手に取れなかった一冊。内容はまったく知らないけれど、青山美智子先生の「木曜日にはココアを」をすでに読了していたので、なんとなく作品の表現、雰囲気はぼくが好きな感じだろうなと思っている。そしてふたつめは、小川糸先生の「キラキラ共和国」だ。一作目「ツバキ文具店」の続編にあたる本作だが、実は昨日一作目の「ツバキ文具店」を読み終わった。久しぶりに続きが読みたい!と思う本だったからというのもおおきな理由だ。なにより描かれる鎌倉の日常がすごく心地がいい。小説を通してもっともっと鎌倉を知ってみたい。そう思ったので、ぼくにはどうしても続編の「キラキラ共和国」が必要だった。

その二冊を手に取り、レジへ向かう。もし本が好きな書店員さんだったら、このひと、鎌倉すきなんだなぁとか思われたんだろうか。そんなことを思いながら購入した二冊を受け取り、カバンのなかへ収める。鎌倉を本で感じることができる喜びを手に入れたからか、すこしだけ帰り道の足どりは軽かった。



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