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目玉焼きの魔法

少し前、風邪でお籠りしていた私に、
あたたかなメッセージをたくさんいただいた。
皆さん、どうもありがとう。
そのお優しい言葉一つ一つに、感謝申し上げます。

お籠りを綴った記事の中に、
私の家は「家族全員で家事をしている」ことを書いた。
家事を一手に引き受ける「主婦・主夫」は、我が家には存在しない。
そのため、所謂”かあちゃん”である私がベッドに籠ったとしても、
家の中で生じる家事が滞ることは無かった。

ハハオヤである私が、自分のコドモ達を生活力高い人間に育て上げた✨
家の中を上手くマネージメントしている✨
なあんて、カッコよく解釈してくださるかもしれない。
実際は。
私は、何もしていない。
ほんとに。ケンソン抜きで。(ヒャッ😅)

私が家事はもちろん、何もできなくなる経験をした。
そのお蔭で、家事を家族みんなでするようになっちゃった。
これが真相。

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もう、何年も前になる。
コドモ達みんなの年齢に、まだ「つ」がついているような時期。

私は、絶望と憤怒に、打ちひしがれた日々を経験していた。
自分の存在を失う、真っ暗闇の世界にいたことは、覚えている。
生きては、いたと思う。
今、ここにまだ、生きているから。

再び、光溢れるこの世界に舞い降りた時の記憶は、鮮やかだ。
私は「目玉焼き」を食べたから、こちらに移ることができた。

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目の前にある逸品を、ずうっとながめていた。
それは、それは。いびつな形の目玉焼き。
細かな焼き加減でできたものでないからか、まだらに火が通っている。
ご丁寧に、塩とこしょうもかけられていた。
部分部分、たくさんかかりすぎているらしい。表面に調味料の筋がある。

小さい体で、なんとか戸棚から取り出せたものを使ったのだろう。
皿は正直、その目玉焼きを美味しく見せる色味・形ではない。

でも、その目玉焼きのひと皿は。
光輝いていた。
そんなに美しい目玉焼きを、
過去に見たことはなかったし、未来に見ることもないだろう。

そんな目玉焼きを見つめている幸せを、
知る自分がそこにいてよかった、そう思えた。

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真っ暗闇にいた時期、私は何も食べることができなかったらしい。

少しでも、ハハオヤが食べることができるものを、と考えたのだろう。
まだ幼かった家族が、自分でない他の人を生かすために、料理をした。
その日までに、家族はご飯を炊く、おにぎりを作る、
サンドイッチを作ることができていた。
それなのになぜ、「目玉焼きを焼く」という新たな挑戦をしたのだろう。

胸がいっぱいになりながら、
私は、その目玉焼きを飽きることなく見ていた。

これを、食べよう。
食べて、食べて、食べて。
私の魂と、この肉体で、命尽きるまで私は生きる。
誰かに不幸にされる、幸せにしてもらわないといけないと
錯覚していた世界から、自らを解き放って。


久しぶりの食べ物に、体が驚いている。
でも、何とか、胃に入っていった。

「おいしい?」
私を見つめる、小さな瞳達。
「うん、とても美味しい。ありがとう。」

胃が動き出すのが、わかった。
輝いた、愛でできた目玉焼きは、私の肉体の糧となった。

それまでと違う世界へと、私は旅立った。
家族の目玉焼きの魔法で、
エネルギーを枯渇し、自分軸を失った自分を認め、
肯定することができるようになった。

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食後、あらためて家の中を見渡した。
幼かった家族は、歯磨き・自分たちでストーリータイムをした後、
大きなベッド一つに、みんなで一緒に寝ていた。
以来、夜はこのような感じで締めくくることになった。
そのため所謂、幼児への「大変な寝かしつけ」は、私は経験していない。

朝は各自・またはみんなで助け合って、通園・通学の準備。
定刻より少し早く家の外に出て、スクールバスに乗って出かけていく。
現地校学習は、各自それなりにこなしていった。
(私は手伝ったことが、ほぼ無い。)
日本語の国語学習の音読には、私も付き合ったが、
毎日の文字テスト学習は、一つの子供テーブルに家族みんながついて、
それぞれ問題を出し合う・チェックする形式で進めていた。

食事を作る、配膳する、洗い物をする。
洗濯をする、干す、片づける。アイロンをかける、片づける。
掃除機をかける、ごみを捨てる。拭き掃除をする。
これらの家事をわたし独りで「しないといけない」ことが無くなった。
家族みんなで担う、世界にいるようになったからだ。

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家事を”してる”、”させてる”、”してもらってる”、”してほしい”、
”やりたくない””気合をいれてやる””手抜きする”などのループから、
私は離れた。
軽やかになった。

心身のエネルギーを失いきった経験を闇だと、私は思っていた。
でもあれは、”闇”だったのかな??
それも”光”だったのかもしれない。
そのお蔭で、この世界にいることを知ったから。
今になって、そうも思える。(渦中では到底思えなかっただろうけど。)

自分しか家事が出来ない、どんな時でもしないといけないと思ったのも、
自分自身が作りあげた世界にいたから、だったのだろうか。

「目玉焼き」の魔法に誘われる機会が、あなたにも訪れたら。
きっと大丈夫。
新しい世界へと、旅立ってみて。
あなたがいつも、お幸せでありますように✨


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