こくご第1章具体と抽象修正

【vol.003】 第3節:「具体」の特徴、「抽象」の特徴(前編)


こんにちは。まえぴょんです。

第1節、第2節ではモノやコトや文章の具体と抽象を取り上げてきました。まぁだいたいこれで具体と抽象の考え方の基礎的なところは学べたかと思います。

そんなタイミングで、第3節ではこの「具体」と「抽象」の特徴を考えてみようと思います。


「具体」と「抽象」の特徴


前節で出した

の事例で、例えば、


「私、この3日間は運が良いことがあったの。」とだけ言われた場合、

どうも具体的なイメージがつかなくて、

「ほぅ、例えば?」

っていう思考になりませんか?そこで、

「私、この3日間は運が良いことがあったの。例えば一昨日はお金を拾ったし、昨日はアイスのアタリが当たったし、今日は落し物を見つけてもらったのよね。」

と具体も伝えてもらえると、

「おー、それは運が良かったね!」

と理解が深まるはずです。つまり、抽象的な文の理解を深めるためには、それに付随する具体が必要なのです。


また逆に、

「一昨日はお金を拾ったし、昨日はアイスのアタリが当たったし、今日は落し物を見つけてもらったのよね。」という具体だけを羅列された場合、

それでは言いたいことが何か掴めずに、

「だからなんやねん?」

となりませんか?結局何が言いたいねん、と。そこで、

「一昨日はお金を拾ったし、昨日はアイスのアタリが当たったし、今日は落し物を見つけてもらったのよね。ほんとこの3日間は運が良いこと続きなのよね。」

と抽象部分を付け加えてもらえると、そこで初めて言いたいことがわかってきますよね。つまり、具体だけでは言いたいことが何かわからない、ということです。


もちろんそれは

この事例でも同様です。


「佐藤くんは球技で大活躍したのだ。」と抽象的なことしか言われなければ、

これでは具体的なイメージができないです。そこで、

「佐藤くんは球技で大活躍したのだ。例えば、バスケットボールでチーム最高得点を獲得し、野球でサヨナラヒットを打ち、サッカーでハットトリックを決めたのだ。」

と具体的な文章も加わると、「おー、そうなんだ」と理解が深まりますよね。


逆に

「佐藤くんはバスケットボールでチーム最高得点を獲得し、野球でサヨナラヒットを打ち、サッカーでハットトリックを決めた。」と具体だけ伝えられても

これでは言いたいことがわからずに

「へー。だからなに?ひがみ?」

とも取れますが、そこに

「佐藤くんはバスケットボールでチーム最高得点を獲得し、野球でサヨナラヒットを打ち、サッカーでハットトリックを決めた。つまり、これらの球技で大活躍したのだ。」

と、「つまり」以降の抽象部分が付け加えられたら、ようやく言いたいことが見えてきますよね。


ここまで具体と抽象の特徴について述べてきたのをまとめると、


・言いたいことは抽象的
・だけどその抽象的な表現だけだと、具体的なイメージがわかない
・言いたい抽象の理解を深めるために、具体が必要
・一方でその具体だけだと言いたいことがわからない


って感じですかね。まぁ、具体にも抽象にもそれぞれの役割があるってことです(←コレがまさに抽象)



「具体」と「抽象」の特徴を日常に生かす


もし、「自分の主張を相手に伝える」という目的意識があるなら、上記の通り伝えるべきは「抽象」です。言いたいことは「抽象」ですから。しかし「抽象」はイメージしにくく、それだけではその「抽象」の輪郭はぼやけたままです。

「抽象」は実在しない「中華料理」みたいなものだから、それだけだとどうしても輪郭がぼやけるんですよね。

だから必要に応じて説明の中にラーメンや天津飯という「具体」を織り交ぜ(「具材」とちゃうでw)、「具体」と「抽象」を行き来させます。そうするうちに、相手の頭の中にあったぼやけた「抽象」に、はっきりとした輪郭を与えることができるようになり、「あ、わかった!中華料理ってそういうものか!」というゴールに到達するのです。

そして一旦抽象が理解できたら、その後の具体の話は不要です。「中華料理」が理解できたら「麻婆豆腐」や「餃子」の話は要らないのです。だってもう抽象概念の理解というゴールに到達してるんだから。

「自分の主張を相手に伝える」という目的意識があって、分かりやすい話し方をする人は、たいていこれができています(あと因果関係の緻密さとね)。


一方で、そもそも「自分の主張を相手に伝える」という目的意識がない人もいます。そのような人はひたすら具体的で分かりやすくてどうでもいい話を続けます。いつまで経っても話を抽象方向に上げようとしないから終わらないんです。

話が長くて的を射ない人は、この傾向があります。一言でドンピシャズバリを言い当ててくれたら話がサッサと進むのに、それができないもんだからいつまでも具体的な話が続くんです。

ひどい時には「要するにアレでしょ」「それってつまりこうでしょ」と、今から抽象が出てくるサインだけ出しといて、ぜんぜん要さず、ぜんぜんつまってこない具体を羅列させることもあります。

そこでイラチは私は「ほんでお前いつになったら抽象度上げてくんねん」と心の中に湧いてきた思いを抑えきれずに、一言、


「で?」


と問うのです。

「え・・・?いや、まぁ結論はないんですけど(汗)」

と答える後輩たちからは、

「その『で?』を辞めてよ、怖いわ。その『で』には殺傷能力あるで?」

と言われます。詰められるように感じるんですって。

せやけどなぁ、お前ら、、


「賢者は、話すべきことがあるから口を開く。
愚者は、話さずにはいられないから口を開く。」
プラトン
B.C427〜B.C347
哲学者


お前らに賢者になってもらいたくて愛を込めたリアクションしとるんやで。難しいなぁ、コミュニケーションって。今度からニコっとしながらやってみようかな。目まで笑えるかな?


プラトン先生は、伝えるべきことがあるから話す賢者と、話したいから口を開く愚者との違いを描写されていますが、他にも、話の流れをしっかり掴んで臨機応変に関連する話題を提供している人と、話の流れと関係なく行き当たりばったりで話している人との違いもありますね。これも抽象思考が関連してきます。具体的には別の話だけど、抽象度を上げると同じ話だよね、という論理展開です。

また例え話が上手いのは抽象思考の達人です。例えは具体で、抽象を理解してもらうための材料ですから、その材料選びが正確で面白いものだと会話が弾みます。

会話全体を盛り上げる自信がない人は一発ギャグや顔芸に賭けるしかないかもですが、話の流れを掴める人はそんな一発に頼る必要がないのです。仮にそのネタ(具材とかw)にスベったとしても、会話全体としてはまとまりがあって弾みやすいですからね。

それだけでも人生が豊かになると思いません?(関西限定?)



抽象度の高い日常を送るための3ステップ

さて、ちょっと話が逸れてしまいましたが、話が長くてまとまらないのをなんとかしたいと考えている人は、まずこの「抽象度」という概念を意識されると良いと思います。

とにかくまずは抽象度を上げることが大切。その意識がないと始まりません。そしてその時、佐藤くんが球技で大活躍したのを、
「チームで一番活躍した」
「チームの勝利に貢献した」
のように抽象化をミスったっていいのです、最初のうちは。抽象度を上げようとしないより全然マシですから。


そうして抽象度を上げる習慣がついてきたら、続いて言葉のチョイスの精度を上げにかかります。つまり語彙力ですね。語彙力とは、語彙の豊富さだけでなく、それらを正確に使用する能力も含んでいます。「最小公倍数」でピタッ!と当てはまる語彙は何なのか、それを探し続ける営みが語彙力を向上させていくのです。


そして最後に、

「そういえば佐藤くんって学級委員長もやってるんでしょ?球技だけじゃなく、組織運営でも大活躍だね!」

なんて具合に、一見異なるんだけど、抽象度を上げると共通している物事を見つけることができたらもう言うことありません。具体と抽象を行き来する、応用力のある思考になっていきます。


あ、もちろんこのような思考を全ての人に強要しようって考えているわけではないですよ。あくまでもこれは国語の授業。評論文では筆者の抽象的な主張を読み解く必要がありますから、具体と抽象の概念を理解し、それを使いこなすことで正答率が上がるので、それを紹介しています。

ただまぁそれを日常で日常で生かすこと、つまり学ぶ人の人生が豊かになることが国語に限らず学問を学ぶ意義だと考えているので、目先の定期テストの得点というわかりやすくてどうでもいい具体に囚われることなく、せっかく学んだ知識を人生に生かしてほしいなぁ、と思ってこんなことを書いています。

ほんと、学びは快楽ですからね!抽象度を上げると人生がラクになるよ!(まだまだつづく)


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