社会人が大学教授になる方法(社会科学編)

「大学教授になりたい」と思う社会人は山ほどいて、その方法を書いた本もいくつかあります。そんな本の内容から、社会人が大学のポストに就くための条件をまとめてみました。基本的に社会科学分野の話です。

時代によって状況は変わります。いくつかの本を紹介しますが、それがいつ書かれたものかは気にして下さい。

それでも時代に関係なく共通する条件はあって、最初にそれを書きます。重要度の高い順に並べます。

  • 査読付き論文や著書がある

  • 博士の学位を持っている

  • 大学での教育歴がある

  • 学会活動をしている

どの本にも共通しているのは、この条件。大学教授になりたい人は、この条件を満たす努力をして下さい。いくら大学教授には条件がないとか、実務者教員が増えているとか言っても、論文や著書なしで大学のポストを得るのは、まず不可能です。

条件1。絶対条件。査読付き論文や著書があること。これがないとどうしようもありません。

条件2。博士の学位を持っていること。今どき博士の学位がないと大学の職には就けません。但しこれはちょっと緩みます。企業でよほどの実績を上げていれば、なくても大丈夫です。「よほどの実績」というのは、いわゆる「上場企業の役員」クラスの地位に就けた人。ベンチャー企業で余程有名なら若い社長経験者でも大丈夫でしょうけど。そして中央官僚なら局長クラス。課長級以下では強力なコネを使って天下りできない限り無理です。こんな限られた条件を満たしていないのに実務家教員になりたいと思うのなら、おとなしく大学院博士後期課程の社会人コースに通って下さい。

条件3。教育歴は必要です。何とかコネを作って大学での教歴を作って下さい。今の時代、教歴がないと難しいみたいです。

条件4。学会活動。まあこれは学術論文を発表するためには学会に所属するのが現実的ということはあるんですけど、学会に入って活動することで大学の先生たちと人脈を築いて情報を得る、ということは大事ですね。昔だったらそこでコネを作ってどこかの大学にねじ込んで貰えたかもしれませんが、今はほぼ公募で決まるので、変な期待はできません。但し、非常勤講師の口は紹介で決まることが多いので、大学の先生と親しくしておいて、非常勤を探している大学があればそこに入れてもらうチャンスを作っておくことは重要です。条件3を満たすためにも、学会活動を活発にして大学の先生の知り合いを増やしておきましょう。


では書籍紹介。まずこれから。

元キャリア官僚が大学教員として転職できた体験記。
労働省在籍時に国費でアメリカに留学して修士号取得、そして新潟県庁出向時に新潟大学の社会人ドクターコースに在籍して課程博士取得という経歴の人です。

同じ人の本。最初の本のほうが読み物としては面白いと思う。

この人、同じネタで本を2冊も書いているんですよ。社会人から大学の教員になるには、これ位のエネルギーが必要だ、ということは理解して下さい。


あんた誰、という本。実名ではないし、Kindle本なので本の信頼性は低いです。とはいえ、ウソを書いているとは思いません。そして発売日が2021年2月なので、最近の状況は反映されていると思います。

この方は民間企業のサラリーマンをしながら社会人博士課程に3年半通って課程博士を取得。その間に短大で非常勤講師をされています。会社のフレックス制度と時間休を組み合わせて平日の午前中にやっていたそうです。

そして採用時の業績は査読付き論文3本と国際学会発表2回だとか。この業績があって博士持ってて30歳代なら、社会人経験がなくてもどこかの大学には採用されますよ。私の相場観では。もっとも、論文を書く材料として社会人経験が活かされているので、全く社会人経験に意味がないということではありません。


ここまでは若手の採用例。ここからはベテラン勢です。

博士号を持たずに60歳代で大学教員になった人。「博士に匹敵する能力」として「上場企業の役員」が認められる、という典型事例です。本人は条件としての自覚がないようですが、本文中に「採用される条件として役員になること」とある大学の先生に言われたと書かれています。もちろん採用時に学術論文は沢山書かれています。

内容は「いかに自分がエリートサラリーマンだったか」の自慢話が多くて、そういうことに興味がない私には、ううん、という感じでした。


日本航空に長年勤め、50代で大学教授に。一般的にイメージされる「実務家教員」は、こういう経歴でしょう。大学教授になった後、60代で博士の学位取得。

博士を持たずに大学教授になれたパターンですが、採用時に学術論文は書かれています。50歳代で採用、というのは一番厳しい年齢層なのですが、この人の場合は時代が味方した感じ。1990年代に採用されていて、この時代は大学・学部の新設が相次ぎ、短期大学の4大化が進んでいて、教員が大量に必要になったタイミングでした。さらにバブル期で1990年頃に就職事情が良く、この頃の大学卒業生が大学院に進まなくなって、ストレートで博士課程に進んで大学教員になる人材が薄くなっていた、という状況でした。

という事情から、この辺は参考にならないと思います。今は50代で他業種から大学のポストを得るのは至難の業です。


そしてこの分野では「古典」とも言える鷲田小彌太氏の本。

Kindle Unlimitedで読めたので、とりあえずこの本を紹介。後で図書館で他の本も借りて紹介します。

まあ古いんですけど、本質的に言ってることは今に通じます。論文を書け、ということですね。

それとは別に、身近な人の実例が出てきてびっくり。全部イニシャルで書いてあるけど、全員の実名がわかります(笑)。


続きのレビュー記事は、こちら。


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