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古民家合宿(個別最適化学習プログラム×体験活動)documentation2023

この記事は、2023年夏、東京都奥多摩町でおこなわれた古民家合宿の様子をまとめたものです。

子どもと保護者にとって、当合宿に参加する主な目的は、夏休みの宿題をさっさと終わらせたい、受験勉強に集中して向かいたい、などですが、教育者としては、より根本的にその子のアタマが良くなるスキルを身に付けてもらおうということを目論んでいます。

ここでは、プロローグとして古民家合宿のこれまでの流れを語った後、具体的なスタッフの役割分担や勝手に子どもが学び始める教育環境のセッティングなどのバックヤードの戦術、そして、その中心にいる2023年夏の共に時間を過ごした子どもたちの様子を描写します。


プロローグ

「里山滞在型学習プログラム」としての古民家合宿

奥多摩で古民家合宿を初めて7年目の夏。
自分が家庭教師していた生徒たちを徹底的に伸ばすために合宿をはじめたのですが、今では個人的に面倒をみている生徒はほとんどいません。
合宿にやってくる子どもたちは仲間の家庭教師のつながりだったり、HPを見て直接依頼がきたり、参加のいきさつはさまざまです。

そのため、教師が引き連れていく学習塾の勉強合宿という感じではありません。
参加者のほとんどは、全体を統括する私と直接の接点は少なく、塾の先生が引率して数日間勉強に集中するという雰囲気ではなくなっています。子どもたちは私のことを事前にそれほど知っているわけではありません

今の古民家合宿は、形式的には「転地療養」や自然環境での「滞在型療養プログラム」と似ているかもしれません。

もちろん子どもが病気といっているわけではないのですが、
学習するにおいて何かしらの「課題」を根本的に解決する糸口を数日間の衣食住を共にしたセッションを通して、私たちは探し出そうとしています。

つまり、合宿では、学力を根本的に伸ばすきっかけを与え、「子ども自身が集中している状態を自覚し、成長できる方向へと意識的に自ら前進できるようにする」ということを目指しています。

これは参加した子どもたちとまずはじめのオリエンテーションにこのことを確認します。ただ、静かな環境で勉強しにきただけじゃないんだぞ、最大限頭が良くなるように挑戦しなければいけないんだぞ、と。

私たちの仕事

どのような環境でおこなっているかは、別の投稿で詳しく掲載しています。

ここでは私たちの仕事についてお話します。
合宿のスタッフは全員教師です。特性によって、それぞれ学びにつながる業務を分類し、各自の性質に合わせて業務を分担しています。

①マネージャー・メンター

同一人物(=私)が担当しているものの、業務は2つに分けられます。それがマネージャー、メンター。

≫マネージャー

食材の選定、仕込みの支度、環境整備、教材・教具の選定など当日うまくいくための準備や当日のつなぎの役割が主な仕事。

≫メンター

・事前面談
 持ち物ややりたいことや課題を事前に確認
・朝の1対1セッション
 その日の体調を踏まえ、今日やることを言語化する時間
・夕方のオープンダイアローグスタイルでの振り返り
 他の子と一緒にその日やったことを言語化する。周囲からアドバイスを聞くこともある。
箇条書きすると、これらがメンターの主な仕事です。学校の担任の業務が近いかもしれません。
まとめると、自らのやるべきことを言語化させることで、学習意欲を保つことと言語能力の開発を目論んでいます。何ができるようになったのか、また何を課題だと感じているのか言語化することは学習する上で最も大切だと言っても過言ではありません。口下手な男の子たちから言葉を引き出し、それぞれの学習状況を自覚させることは、合宿のなかで能力開発しつづけるために、とても大切な役割を担っています。

また、これらの仕事以外にも、午前中の学習時間、チューターが生徒たちの質問に応えている傍らで、子どもたちが学習する姿を観察し、子どもの状態についてチューターと観察したことを共有します。

後で話しますが、チューターの主な仕事は演習の質疑応答です。
学習に向かい、全く質問しないで集中している子もいますが、そんなときはメンターあるいはチューターからアプローチし、その子が気づいていない課題をあぶりだすように、「今その問題を解いているが、解答解説で何がわかったか言語化してほしい」などと、わかったと本人が主張する件について、できるだけ言語化させます。
それによって、どこまでわかっていて、どこからわかっていないのかを本人とチューター両方が気づく機会をつくるようにします。
つまり、質問が増えるように誘導することもメンターの仕事です。

そして、川遊びの後の午後のリフレクションの時間もメンターの担当です。彼らの姿勢・態度、習慣で気づいた点を指摘し合い、より良い状態とは一体どういう状態か、午後の対話を重ねながら見出していきます。

②チューター

チューターというと、生徒から質問が来るのを待つと思われるかもしれませんが、先述の通り私たちのチューターはもっと積極的に対話を重ねます。

自分で学習するデメリットは、自分のミスに気づきにくいということです。時間は十分あるが、非効率なやり方を実は続けていたということは多々あります。それを極力減らすために、チューターがいます。
チューターは質問に応えるだけではなく、「生徒が質問すべきことに自ら気づかせること」も仕事の一部です。
しかし言うは易し、意外と奥が深く、チューターに適する人材は限られています。
チューターはメンターとバディを組み、子どもがやりたいことをやりつつ、よりそれに拍車がかかるように、学習のやり方をブラッシュアップするのです。

③生活スタッフ

そして、最後に生活スタッフについて。メンター・チューターが個別最適化学習を支え、生活スタッフが体験活動を支えています。
体験活動はとても幅広い内容です。家事、川遊び・焚火、庭の剪定、虫獣の駆除、窓の開け閉めや日よけによる古民家の風通し管理、農具やチェーンソーなどの道具の管理…自然の中で生活するだけで、自然科学や社会科学の種が眠っているので、偶然の出会いから子どもたちの好奇心は育まれます。
それらの体験活動をアシストするのが生活スタッフです。

≫家事手伝い

生活スタッフの見た目上の主な仕事は、料理・洗濯・掃除です。
料理はマネージャーと共に献立を考え、素材をそろえます。
ちなみに、食事は、肉食だけではなく、魚をとる機会をつくり、果物を毎日提供しています。
例えば、ランチは、みそ豚定食、あんかけ焼きそば、てんぷらそうめん、まぐろ漬け丼、ナポリタンなど。夕食は、ニジマス定食、かます定食、からあげ定食、牛丼、ガパオ、ハンバーグ定食、ミートドリアなど。
果物は、巨峰をはじめ、なしやメロンなど。それらを朝食やおやつにしました。
洗濯・掃除は料理の合間、子どもたちの学習の邪魔にならないようにさっさと終わらせます。

≫アウトドアインストラクター

彼らは、学習時間の間、庭の木の伐採、剪定など古民家の外の環境を整えます。また、川遊びや焚火、虫の退治の仕方、ハチの巣の駆除、チェーンソーで材木伐採など…子どもたちに、自然の中での遊び方を教えたり、道具の使い方を教えたりすることがあり、子どもたちは彼らから学ぶことの方が教科書から学ぶことよりも充実していることがあります。

アウトドアの活動の際は、小学生から高校生・浪人生までいる縦割りの中で、彼らは一番上の兄貴分となるので、みなから頼りにされ、たとえば裏山で焚火している最中、自然と率直な悩み相談会となり、それをきっかけに学習意欲の上がるなんてことも多々あります。

個人的には、この業務を全うできる人は、何かあっても、古民家でお金がなくても楽しく生活できるサバイバル能力を身に付けていると思っています。

生活スタッフを経験すれば、外遊びで子どもをリードし、家事も育児もやってのける立派な主夫になれるんじゃないでしょうか。
すべての男性に一度は体験してもらいたい仕事です。

Documentation 2023

ここから2023年の合宿の子どもたちの様子を記していきます。
今年は入れ替わりの年だったのか、新しく参加した子が多め。
そのため、その子の学習上の癖の修正などの前に、やはり人間関係を築くのに時間をかけました。

古民家のイベントへの参加やオンラインでの事前のセッションなど、少しでも合宿中に不安にならないよう工夫しましたが、最近の傾向なのか、特に、不安なことを「不安だ」と言えない子が多い印象があるので、できるだけこちらから「心配なことはないか?」と飽きるほど繰り返したずねることにしています。
そうじゃないと、不安→来ないということに即決するかもしれないので。

それではそれぞれの生徒を成長したこと、残った課題についてここで書き記していきたいと思います。それほど長くならないように、簡単にまとめています。

前半コースの様子(7/30-8/6)

≫ 中1男子一人っ子Sくん

中1男子のSは、地方都市在住で一人っ子。おそらく地元でさまざまなバックボーンのある男子たちにもまれているのか、俺はすごいんだぞアピールがすごく、いかに馬鹿にされないようにするかに必死になる言葉が多い。本当は素直でいい子なはずなのに、きっとそうしてしまうと、周りの男子たちに馬鹿にされてしまうから、大きな声で、マウントをとろうとするような変な癖があることを感じる。

しかも、「厳しい先生」(古民家では前田)がいると、一気にちゃんとする「フリ」をしてその場を乗り切ろうとする、看守に見られながら学ぶ癖もついている。(中学校のせいかな)

こちらが見ていると、すごい勉強しようとするのだけれど、そうでないと友達と無駄話してしまう幼いところもある。
怒られないかいつもびくびくしているように見える彼に、「もうそういうのやめないか」と言ったのが4日目。「本当は素直なんだから強がらないでいいんだよ」と言って翌朝。自分から予習しはじめた。
学校に戻ったらまたゴリラのマウント合戦が待ってるし、厳しい「鬼教官」もいるかもしれないけど、予習していれば、授業を余裕に受けることができるだろう。それが心のゆとりになる。
学習のやり方を知りたいと言って参加したが、何か掴めたのだろうか。
9月からの学校生活でどのように過ごすのかが気になる。

≫読書の時間を堪能した中1K

今回中1の参加が多く、3名。2人目のKを紹介する。
小柄でおとなしそうだが、教師にバレないように(結局バレてるんだけど)他の子をそそのかし、スタッフに怒られるようなことをさせて楽しんでいる面もある。
とはいえ、中学受験を乗り越えているので、学習する習慣は身についている。学校の課題をそそくさと終わらせ、余った時間に読書することにした。
ふだんは本を読まないらしい。ただ数学・パズルは好き。
だからだろうか、推理・ミステリーが好きらしく、その類の小説を4,5冊チョイスして、母上にAmazonしてもらう。

それに加えて、英語の予習も進めようと言うことになり、学校の問題集を予習開始。

それに飽きたらサイコロ暗算を同級生たちとおこなう。すでにイメージ力も十分ある。聞くと、受験のために小学校低学年から通い始めた算数塾の授業でイメージ力がついたらしい。20面体×3~4個のかけ算を毎回1時間くらい解きまくる。
これは頭にいいだろう。

しかもどれも「やれ」と指示したことがない。自分でやるべきこととやりたいことを考え賢くなる時間を過ごしている。

≫味覚が鋭い中学1年生M

彼は、感性の鋭い母親に育てられ、慎重に選び出された食材を日常的に食べていることから味覚が常人よりはるかに鋭敏になっている。
こちらが用意する野菜の出汁に塩味をつけたシンプルなスープにも唯一「美味い!」と何杯もおかわり。
その味覚の鋭さは、学習時間における集中力にも反映され、暑くなる時間でさえも、その暑さに「気づきながら」も学習の手を緩めことがない。
そう、本当に感性が鋭い人は、快への感度が高いだけでなく、不快への耐性もある。その不快さに気づいているだけであり、不用意にreactionすることはない。
学習の方はといえば、体系数学の予習を進めていく。本人は「もっと早くできると思っていた」そうだが、中1にとって体系数学1・2は大変難しく、やけに進度が早いので、それほどたんたんと進めるものではない。

というのも、私立進学校と公立中高一貫校で使用されている体系数学は3年間の単元を2年間に圧縮しており、まだ思春期を迎えておらず、論理的思考力を育成していない中1にとって、その内容を一挙にクリアできるほど簡単ではない。

彼は体系数学1を4,5日で終わらせ、残りの時間を体系2に費やすことになった。それでも、1年分の予習は完了しているから、学校は復習の時間ということとになる。あとは演習を授業中放課後に重ねていれば、難易度が上がる秋以降も無理することなくクリアできることだろう。

≫詩人のような純粋さを持ち合わせた中2


せんせい、とうがらしください。
牛乳が飲みたいんです。

夕食で、とうがらしをトッピングで用意したことがあった。それを入れすぎた子が辛そうだったので牛乳をあげたら、数日前から牛乳を飲みたいと思っていたこの男は、無意味にとうがらしを口に入れようとした。
どういう発想かわからないが、彼の発する少ない言葉はまるで詩人のようなセンスを感じることがある。
詩人といってもユーモアのある詩人。

先生がいなくなるとさびしいです。
先生はいつもぼくを助けてくれるから。

ああ、あの子はいまごろ元気にしているかな。せんせい、あの子はどこにいますか。

合宿が終わるとぼくは中国につれていかれるんですか。
みんながそう言うんです。

なぜか話す言葉が心に残る。その声色も今も頭に残っている。なぜだろう。
イメージ力が強く、サイコロ暗算もよくできる。
きっとよくイメージしてから言葉を抽出しているのかもしれない。

だが、そのせいで、イメージ力に依存して、じっくり教科書や解説本を読むことに時間を費やす。演習は一切おこなわない。
だから学校の試験に評価されないわけだが、それでも能力の高い点を確認できたので、詩をもっと書いてほしいとこちらも素直な気持ちを彼に伝えたが、書くのはどうも気が進まないらしい。

いつか相田みつをのように、揺れ動く感情を詩にしてほしいなと思う。

≫1人前に成長した4年連続参加の高1元ダイナマイト

中学生から毎年参加する高校一年生。
その「爆破性」からダイナマイトと呼ばれるが、もはや15歳を迎えた彼はダイナマイトの跡形もない。

これまで毎年学校の宿題に対応できず、課題を解決するのに時間を費やして合宿を終えてきたが、今年はちがう。
自分からなんの学習をしたいのかを決め、一心不乱に数学の予習をこなし、
数1の予習を終わらせ、数Aの秋の予習も完了。
これはスタッフみな驚いた激変である。
成長すればおさまるものだとは思っていたが、まさかここまで収まり、人間的に成長するとはうれしい誤算であった。

落ち着きがないと公教育に言われても思春期迎えれば、たいていおさまるのだ。そのために変なコンプレックスを持たせず開放させ、時が来るのを待つ、と同時に、学習のやり方を忍耐強く仕込んでいく。
1,2年で結果を出そうとなんて思わず、もう少し長い目で見れば不用意にコンサータみたいな「制御系の薬」に頼る必要もない。

自然環境の古民家の合宿で、抑えきれない衝動は、何度も暴発を繰り返し、やがて跡形もなく消え去った。
こうして成長した彼の学習する姿を確認して、私たちはとても満足している。

≫英語の闇から、希望の光がかすかに見え始めた中3高校受験生

昨年に引き続き参加したT。
感受性高く、自然の波動を受けて、いつもリラックスした表情で学習に取り組んでいた。
今回の合宿では、数学の総復習をするつもりでやってきたらしい。
だが、本当はこちらは少しでも英語に触れてもらうことを目論んでいた。
英語への苦手意識が強く、自分からやろうとしないで避けていることは、事前面談の発言からも感じていた。

数学は解答速度を上げながら、自力で進めるようにしつつ、苦手な英語を中1から総復習するのをフォローすることにした。
英語数学が苦手な場合、途中の授業を聞いていなくて、わからなくなるケースが多いが、彼もそれだと思う。
中1から順に復習を進める。問題レベルはイージーで。不明瞭な文法事項を確認する。中3になれば論理的に考えられるようになっているから、構造についてもよくわかるようになっている。
ある程度中1文法を終えたあたりで文型の話をして、国文法と重ねながら英文法を教えると、自分がどこでつまずいていたのかすこし分かったような気がすると言っていた。
とりあえず全体像が見えたようなので、無意味に苦手に思うことはやめるそうである。数日間の狙いはとりあえず成功した。
が、これから英語ひとつひとつの文法事項をもれなく暗記できるかどうかが問題である。

言語学習は時間が少なくとも毎日触れる方が効果が高い。合宿後も継続することを約束した。


前半の観察記録はここまで。
これだけではどんな合宿か分からないと思います。
実際の合宿の様子は、youtube子どもと古民家暮らしチャンネルで今後発信する予定です。チャンネル登録よろしくお願いします。https://www.youtube.com/@zenhouseschool

涼しい晩夏の後半コース(8/21-27)

さて、ここからは後半コースについて。お盆明け7日間、応募者が数名いたことから急遽開催を決めた。


≫高校数学まで到達した中学2年生

中2のTは、前半のコース数日につづき、後半は全日参加。
昨年参加したときと同様、通常運転数学の予習×書籍乱読の鉄板ルーティーンで、毎日10時間以上継続して学習。中学分野の予習・演習をすべてこなし、高校数学Aの確率、平面図形、集合論へと進む。
この人の文章がとても好きだ。そのとき読んでいる作家の文体の影響を受けながら、変幻自在に文体が変容してきたが、最近自分らしい文体を身にてつけきているように思える。読んでいると彼の声が聞こえてくる。だが、それだけでなく、時折饒舌な彼でない誰かがすっと姿が表す。そのバランスがちょうどいい。いつか本気の作品を見てみたい。

関係ないが、合宿中、秋茄子のうまさに目覚め、夜な夜な焚火でアルミホイルに包んだ茄子を食すので彼は皆に「茄子の夜市」と呼ばれていた。

≫大学受験生2人の歴史学習

中学時代から参加し大学受験を迎えるEとJは、そろって歴史の全体把握が不足していたので、世界史、日本史それぞれを、作文道場の抽象構成メモのように、主題ごとに一枚のマップにまとめることで、そのマップをもとに、通史を語れるようにトレーニングする。
たとえば、大航海時代を主題にしながら、後ウマイヤ朝やオスマン帝国などのムスリムの台頭、フランス、神聖ローマ帝国のランドパワーを避けるように、羅針盤など道具の発展をもとに海へ出た背景を理解しつつ、その後どのように、ヨーロッパ世界が拡張されていくのか、植民地開拓、民主運動へとつながるように一枚絵にまとめる。
この方法は、ある主題をもとに、なぜその出来事がおこったのかを紐づけていくことで、歴史上のキーワードを歴史の流れの中におくことができる。全体把握をおこないたい初学者におススメの方法である。
テーブルに複数の資料を並べ、「なぜその事件がおこったのか」「何が原因で、その後どうなったのか」主題からその前後の因果関係を紐解いていく。

中公新書の世界の歴史シリーズが未読だそうなので、是非帰宅後通読してもらいたい。歴史学習は、部分把握の前に全体把握が肝要だ。

≫森の集中スペースを自作する小学6年生

さて、大学受験生が一心不乱に学習している最中、縁側のそばをちょろちょろうろつく小6受験生?Rは、相変わらず自分のペースを崩さない。森の中で学習しているかと思えば、薪を割ったり虫の観察をして、時間をつぶしている。
古民家内では集中できないと思ったらしく(多分勘違い)森の中に机といす、蚊取り線香を持っていき、学習することに。
斜面をスコップで掘って階段まで自作しており、何に時間を費やしているのかわからない。
かと思えば、一気に学習を進めるので、ペース配分が常人には想定不可能。
保護者は、これを理解できないと言っているが、教師も同感である。天才とはそういうものなのだろう。

しかし、天才にも試練があり、定められた時間にピークを持っていくトレーニングをしていなければ、受検で本領発揮とはいかないことだろう。
たまたま入試の日に調子が良ければ受かるだろうが、そうでなければいい加減に試験を受けそうなので、どうやってピークを本番に持っていくようにするかが、こちらの腕のみせどころとなっているが、相手は人間を凌駕するタイプなので、こちらの意図は無効化される傾向にある。

ただ、難易度の高い問題にぶち当たると、別のことをしたくなるだけともいえるので、そこをフォローしてあげて、一緒に問題を解いてあげれば、ある程度解決されるという見通しはついているが、いかに。

≫将来、理工学部に通う姿が見える高校1年生

高校1年のMは、おとなしそうな見た目以上に、粛々と学習をこなす集中力を持ち合わせており、数1Aの予習復習「二次関数不等式の利用」「条件と整理」「場合の数、確率」を最初の3日間で一気に終わらせる。その後、暗記しづらいと思っていた化学の学習へ。
化学好きな男子はなぜかポケモン暗記している奴が多いという話になり、元素記号、分子構造なども一つのキャラクターとして認識するように学習。覚えにくいところはサブノートに展開しつつ、教科書を精読していく。最終日の時点で2学期の予習を済ませる予定なので、次の定期試験で点がとりやすくなることだろう。
気さくに話もできて、年下の男の子たちに優しい。体の線は細いが、心は大きい。学習している時には他には目もくれず、熟読している姿をみて、あぁいい理系学生だなと感じた。
きっと数年後には理工学部に通っていることだろう。本人もそれを望んでいる。

≫本来の良さを発揮させたい小学6年生

初参加のもう一人の小6生は、尋常じゃないボリュームの宿題をこなすために合宿に参加。初日は緊張していたのだろう、周囲の様子を伺いながら、落ち着かない感じで机に向かっていたが、
ただ、それだけではなく、その日の夕食でかなり偏食傾向にあることがわかったので、
背筋が使えない無気力的な雰囲気の原因の一つは、糖質の取りすぎではないかと仮説を立て、ひとまず意図的にスタッフと糖質を抑えるようにした。
それが効果があったのか、それとも環境に慣れ、エアコンに当たらず、自然の空気に触れ続けた結果、自律神経が整ったのか、わからないが、次第に集中するようになり、膨大な宿題も残り一つとなった。集中しているときは、自然と背筋が伸びているが、集中できないときは、背中を丸めて、だらっとしがちなところも興味深い。こっそり写真を撮って本人に集中しているときの姿をこんな感じだと共有した。

集中する時間を連続させるためには、そこにいくまでにモタモタさせないことが肝心であり、今後も環境設定を図る必要があるだろう。
偏食であることは趣味もあるので否定できないが、それによって、不用意に糖質をとりすぎる傾向にあるように思う。買い食い、スウィーツ、炭水化物のとりすぎなど。

本来の知能指数が高いので、放っておいても、自力で成長しそうな気もするが、より「確率を高める」ために、音読、運動、糖質の制限があるといいかもしれない。この点保護者と共有したので、何かしら策を考えているにちがいない。


2023年まとめ

今回の合宿で最も効果を感じたのは朝の15分とリフレクションでした。

≫瞑想・音読の効果

詳しく書いていませんでしたが、起床後、身なりを整え軽い食事をとったあと全員で15分ほど瞑想します。
これは鼻呼吸だけをおこなうもっとも原始的な瞑想ですが、学習する際有酸素運動と同じように取り組んでほしいことから、まずそのウォーミングアップとして瞑想を取り入れています。
呼吸を整え、脳の血流がよくなるように、神経物質が脳に分泌されるように、姿勢と呼吸を整える時間です。
また、その後すぐに音読もおこないます。
朝から身体に響く音読をおこなうのですが、これがとても効果的でした。
今回の合宿ではもたもたせずに、すぐに学習に取り掛かる子ばかりだったのも、このウォーミングアップのルーティーンのおかげだったように思います。

≫リフレクションの効果

川遊びの後、数時間学習し終えると、夕方に円になってその日の学習について報告し合う時間をつくりました。それぞれの学習のやり方や課題を共有するためグループとして学習しているという意識が芽生えた気がします。
個別最適化させるとひとりで学習していると感じがちですが、リフレクションで同じように頑張る先輩後輩がいることを確認できることは、意欲につながるんだなと改めて感じました。
毎日リフレクションを取り入れたのは今回がはじめてだったのですが、今後もこの時間をとりいれていくことにしました。



合宿の報告はここまでです。
今まで以上に落ち着いた雰囲気で無事終了できた合宿でした。
1万字を超える長文、最後までご覧いただきありがとうございました!

追伸:
最後の夜、みな自然と定時に就寝した後、真夜中に暗闇から奇声が聞こえる。
合宿前にネズミや猫がいたが、小動物よりも威勢がいい。
古民家の隣にあるキウイで2,3匹じゃれあっているのか交尾しているように聞こえる。
おそらくサルだろう。
果実を求めてサルがまた降りてきた。
秋も近い。
生徒たちも実りある秋を過ごせますように。


ーーーー出版関係のみなさまへーーーー


もし出版関係の方がいらっしゃいましたら、是非この古民家教育の本の出版を検討していただけると幸いです。
たくさんの人にこのやり方を広めたいなと思っています。
不登校児は増加していますが、できたら平日にもこのようなかたちの学び場が広がればなと切実に感じています。そうすれば、感性も知性も高められる有意義な時間を過ごすことができると思うんです。
映像や写真のストックもたくさんあります。
お話聞いていただける方は以下にご連絡ください。

前田大介
https://note.com/maedadaisuke/message

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