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顧客と「ゴール」を近づける

元旦に、このような記事を書きました。M&Aの8割は、俗にPMIと呼ばれる「買収後の経営統合=バリューアップ」であり、成約時点ではまだ2割です。

M&Aアドバイザーからすると、ゴールは成約です。しかし、M&Aの当事者からすれば、そこはスタートです。売り手のオーナーは、成約がゴールの場合も多々あるでしょうけれど、残る社員はそこから新体制がスタートするわけです。また、買い手からすると、まさにそこはスタートですよね。M&Aが成功するも失敗するも、すべてはそこ(成約時点)からスタートします。

そう見ると、M&Aアドバイザーだけが違うゴールだということがわかります。

これ、他の業種でもよく見られることです。ていうか、基本そうです。例えば、私はWeb系のマーケティング企業を20年間経営していたことがありますが、ECサイトを作成したりする際、検収が終わって納品して、顧客からの入金があればゴールです。もちろん、そこから運営のサポートなどの業務を請け負うこともありますが、「制作案件」としてはそこがゴールです。

しかし、言うまでもなく、顧客にとってはそこからがスタートです。このゴールの違いが、顧客の不満につながることは往々にしてあります

その不満をなくし、案件をよりスムーズに運ぶためには、発注側と受注側のゴールを同じにする、あるいは近づけることです。

私は、そこにイノベーションの種が潜んでいるのではないかと思っています

上記のECサイトの例で言うと、運営サポートを通じて、一定の売り上げになるまで一緒に走るプランを、パッケージで提案するのも一例です。そこに、社員教育を入れてもいい。顧客にとっても、そうやって同じ場所を見てくれている方が、格段に安心できるものです。別に、その程度はどこもやっているかもしれませんが、あくまでゴールを同じくするサービスを開発する姿勢は、他にないビジネスモデルを作り出す可能性があると思うのです

M&Aも同じ。買い手FAの場合は、買収後、どのレベルまでバリューアップしたいか、現実的な路線で事前に話し合い、成約後のPMIプランをパッケージで提案するなど。何社も買収しているM&A強者だと、その必要はないかもしれませんが、それほど経験のない会社だと、その方が安心できるはずです。

仲介や売り手FAの場合は、最初からパッケージ提案するのは難しいですが、案件を通じて信頼関係を深める中で、(あくまで必要に応じて)何らかの関わり方を模索できると思います。大切なのは、顧客の不安を解消するために、同じ目線を持つということです。

私は、事業会社の経営が長く、今もM&Aアドバイザーと並行して経営していますので、よりそのような視点を持つのかもしれません。どんな業種においても、ゴール設定を顧客と近づけるのは、ビジネスモデルのいいイノベーションに繋がると思っています。

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