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友だちについて悩むことがあるのなら。

中学生のときに、この本を読むことができたならもっと気楽だっただろうし、「そんなふうに考えていいんだ」とおどろいただろう。

吉本ばななさんが最近出された「吉本ばななが友だちの悩みについてこたえる」を読んだ。

本のタイトルどおり、友達関係の悩みについて、10代から60代までの男女から寄せられた質問に対して「私であれば」という吉本ばななさんの視点で回答されている。

わたし自身は、今現在友達との関係で悩んでいることはない。そもそも友達とよべる人が少ない、ということもあるだろうけれど、一切悩みがないのはありがたいなと思う。

友達とはどういう人や関係をいうか? それは本当に友達か? など、吉本ばななさんがぴしっと答えてくださっているのだけれど、わたしの考え方とかなり似ていてほっとした。少しだけ挙げてみると、以下のようなもの。

「いつも隣にいて価値観もピッタリ」という存在がいるとしたら、それは自分自身だけです。自分と仲良くなっていれば、基本的に人間は大丈夫。
学校は勉強以外に友だちを作ることを学ぶためだけの場所ではなく、「赤の他人とどうやったら上手くつきあっていけるか」を学ぶところ。友だちができたらラッキーだね、気が合う人がいなかったらツイてなかったね、そのくらいでいいと思います。

友だちとの悩みについて、友だちだけに問題があるのか? あなた自身にも変えなくちゃいけないところがあるんじゃないか、とか。悩みを混ぜすぎていて、それは友だちに対しての悩みじゃない、など「ああ、そういうことか」と、わたし自身、今現在は悩んでいなくても過去に悩んでいたときのもやもやが解決すらした。中学生の悩みから、ママ友の悩み、職場の友達の悩み、定年退職後の友達のつくりかたについてまで答えられている。

大学生のときに、同じサークルにいた同学年の女子たちはみんな仲が良かった。けれど大学を卒業してそれぞれ結婚や出産を経ていくうちに、ひとりの女の子が、だんだんと疎遠になっていった。その女の子は、結婚に憧れているけれど、なかなか出会いがなく、「ひとりだけ取り残された」ような気分になったようだった。発言も卑屈になっていったし、みんなで会おうと約束した日に「やっぱり今日いけなくなって」と、時間ギリギリになって連絡してくることが増えた。

わたしは、残念だけれど「それぞれ暮らしが違っていって、わたしとは違う世界の人だ」と、その子が考えてしまっている以上、もう友だちっていう関係じゃないんだな、と思い誘わなくなってしまった。

一旦友だちになったら、一生友だちかというと、全くそんなことはない。考え方は変わっていくし、それぞれの生活で大切なものは変わっていく。本当の友だちとは何だろう? と思うこともあるけれど、近くにいるから友だち、というのではない。離れていて、あまり会えなくても「あの子が元気で頑張ってるならそれでいいし、悩んでいるなら励まそう。一方的ではなく、あの子が求めていると感じたら」と思えるかどうかだろう。

わたし自身、中学生の時はあまりうまく友だちができずに悩んだし、ちょっとしたいじめみたいなものもあった。けれど、ある時「友だちはいなくても、時間は過ぎていくんだから、もうあの人たちに関わるのはやめよう」と、ふっと思う時があった。自分自身ではそう思えたけれど、周りの大人や両親には、この考えは言えなかった。やっぱり学校で友達がいない、となると必要以上に心配されるだろうし。時間が過ぎれば、この場所から離れられるんだから、それまでは静かに過ごしていようと思ったのだ。

今現在悩んでいなかったとしても、過去に悩んでいてもやもやした気持ちが心のなかに引っかかっている人や、自身の子供が悩んでいそうだ、というときに、「この本読んで見たら?」とそっと差し出すといいかもしれない。

答えがズバリと書かれているわけじゃないし、明日からこう対処しなさいといった指南方法は書かれていない。けれど「こういった考え方もあるんだから、それほど悩む必要なんてないんじゃないかな? もちろん、相手がどう思っているかにもよるし」という吉本ばななさんのフラットな考え方にハッと気づくこともあるにちがいない。

わたし自身は、中学生のころに戻りたいなんて思わない。けれど、この本を渡してあげられたなら、かなり気持ちが楽になっただろうなと心底思うのだ。


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