須田マドカの文体演習

元引きこもり。小説、好きな映画のこと、音楽のこと、エッセー、コラム、日々の雑記を書きま…

須田マドカの文体演習

元引きこもり。小説、好きな映画のこと、音楽のこと、エッセー、コラム、日々の雑記を書きます。目標は小説を本にして出版すること。そして、雑誌などで映画についてや文筆の連載を持ちたい!

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5月23日 不器用なあなたへ

言葉は刃物になりえる そして忘れてならないのは、自分だって、無意識にそれを人に向ける側になってしまう可能性があるということだと思う 自分を蚊帳の外にして、その可能性を度外視してしまっては、この世界から言葉の刃物による傷は減らない 人間は人間であるから 自分は完全なる聖人君子だといえる人がいるだろうか 生まれてこのかた人を一切傷つけたことがないと胸を張って言える人がいるだろうか 自分ではやわらかい毛布を渡したつもりでも、それが相手にとっては刃物だったということもある だから、『

    • 自分をルポライターと思い込んで生きる話と心理実験について

      以前、YouTubeでルポライターとして精神病院の閉鎖病棟に入院し、潜入取材したはいいものの、そこから実際に出られなくなりそうになった人の話を見たことがある。 本人にとっては、下手したら一生出られなくなってしまうかもしれず、なかなか災難な話だが、とても興味深く、そしてなんとなく自分の中で深く衝撃を受けたというか、割と強めに心に残った。 なんか、思ったのだ。 『ルポライター』っていい響きだなって…。 いや、そりゃそのライターの方は大変な思いをしたのだし飛んだ災難ではあ

      • 【連載小説】『ひとりぼっちのゾーイ』後編

        <『ひとりぼっちのゾーイ』続き>  ほどなくしてふたりは一件の小さな家の前に着いた。壁が水色の、かわいい家さ。  「ここはいったいどこなんだい?」  きょろきょろしながら、男の子が尋ねた。  「ここね、私が住んでいた家なのよ。ちっとも変わってないわ。」  ゾーイは懐かしそうに、そして少し寂しそうにその家を眺めた。一階の窓からは、カーテン越しに、暖かいオレンジ色の明かりの中で走り回る子どもたちのシルエットが見える。  「あれはきっとお姉さんの子供たちだわ…。」   二階は真っ

        • 【連載小説】『ひとりぼっちのゾーイ』前編

          『ひとりぼっちのゾーイ』               須田 マドカ  粉雪舞い散る夜のこと。街のはずれの小さなパブ。こんな日にはつまらない劇みたいに、ぽつり、ぽつりしかお客が来ない。  バーテンダーの男の子、窓の外を見つめてる。最後のお客が出ていって、ドアのベルがからんと鳴った。  「いったい外に何があるって言うのよ。最近どこかうわの空ね。」  ウエイトレスの女の子。不思議そうに、彼を見る。男の子はため息をひとつついて、やっと女の子と向き合った。  「僕がその訳を説明して

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          【映画コラム】『ゾンビランド:ダブルタップ』は、『ターミネーター2』だ。

          現在公開中の映画『ゾンビランド:ダブルタップ』を見た。 最高だった。ただただ最高だった。 そして私は言いたい。『ゾンビランド:ダブルタップ』は、『ターミネーター2』であると―。 ここからは、映画の核心には触れないものの多少の薄いネタバレは入るので、ご了承頂きたい。 まず、この映画の概要を説明すると… この『ゾンビランド:ダブルタップ』は、10年前に公開された『ゾンビランド』という映画の続編である。 なのでまず1作目の『ゾンビランド』の概要を説明すると… ひき

          【映画コラム】『ゾンビランド:ダブルタップ』は、『ターミネーター2』だ。

          【連載小説】『クリーピー・ボーイ』#3(最終回)

          〈『クリーピー・ボーイ』続き〉  その夜、ベッドに入っても、少年は眠れなかった。  目をつぶると、そこには白いチュチュを身に纏い、オペラ座の舞台に立つ彼女の姿があった。  まるで蝶々のように、トウシューズを履いた白いきれいな足を小刻みに動かしながら踊る彼女は、とても美しかった。美しすぎて、なんでだかなんてわかんない、けれど、涙が出て止まらなかった。少年は、一晩中幻想の月明かりの下で、ガラスの涙をこぼし、その存在しない左足を突き刺し続けた。  その日から少年は、窓の輪郭の

          【連載小説】『クリーピー・ボーイ』#3(最終回)

          【連載小説】『クリーピー・ボーイ』#2

          〈『クリーピー・ボーイ』続き〉 「なんで学校行かないの?」少女が尋ねる。 「その話はしたくないから、聞かないでよ」少年はさらさらと伸びたその茶色がかった前髪を手でいじりながら答える。「そんなことよりさ」手を降ろす。「君が踊ってるとこ…その…すごく、きれいだった」  少女は微笑む。「ありがとう。でも、そんなことないよ」 「そんなことなくないよ。本当にきれいだった。自分が、醜いものに思えるくらい。虫けらとか、そんなようなものみたいに」 「虫けら?」少女は聞き返す。 「ぼくには

          【連載小説】『クリーピー・ボーイ』#2

          【連載小説】『クリーピー・ボーイ』#1

          『クリーピー・ボーイ』            須田 マドカ    落ち葉舞う街角で男は言った。「ねえ、僕たち一度会ったことがあるような気がしませんか?」  女はただ、顔をしかめただけだった。  そう、こんな風な、昔から決まって男が女を口説くときに使い古されているようなきざなセリフを聞くのは、この街じゃ、よくあること。ごくありふれた、いつも通りの光景に過ぎない。この世に、恋だとか、人を好きになったりすることがある限り、それはただ、繰り返されていくことなのだ。  白いペンキ

          【連載小説】『クリーピー・ボーイ』#1