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エッセイ:夢がかなったね

教師になって2年目、私は前年度とは違う小学校に異動になった。前任校では臨時採用で算数の少人数を担当していたが、新しい学校では臨時採用で音楽専科として着任した。

勤務していた県では、離任式は新年度になってから、4月の下旬頃に行われていた。私も新しい学校にまだ慣れない日々の中、前任校の離任式に行った。

離任式では校長先生から離任された先生方の紹介がある。私も紹介された後、今は別の学校で音楽を教えているという話とお別れの言葉を言った。

離任式の後にお別れの時間として、教室で子ども達1人1人と話す時間が設けられた。その時に前年度教えていた男の子から一言。

「先生、夢がかなったね。」

一瞬「?」となったが、その後の言葉でハッとなった。

「だって音楽の先生になれたじゃん。」

自分は音楽が専門であること、ピアノが弾けること、音楽の教員を目指していることなど算数の授業の合間に1度だけ話したことがあった。

私自身、話したことなどすっかり忘れていたのだか、子どもというのは教師が言ったことをよく覚えている。

「そうだ、私、夢がかなったんだ。」

新しい学校に着任したばかりで初めての音楽専科。不安で心が折れそうな毎日を過ごしていた私だったが、再び頑張ろうと思うことができた。子どもの一言にはいつも励まされる。

ちなみに、この年に教員採用試験に合格し、それ以降は退職するまでずっと学級担任だった。なので、音楽専科だったのはこの1年だけであった。夢がかなった貴重な1年だったなぁと今更ながらに思う。

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