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JALの機内誌のように④ 夏時間

海外に行くことが難しいので、よく乗っていたJALの機内誌のように昔の思い出を書いてみました。

ヨーロッパ大陸では3月28日(日)から夏時間になります。欧州議会では2019年に夏時間制度を廃止する法案を可決していますが、まだ今年は実施されるようです。

この夏時間、体内時計がおかしくなるとかの反対論も多かったようですが、私は夏時間になるのを待ちわびていました。

日の入り時刻が遅くなり、気分がうきうきしてきます。夏時間になるころの日の入り時間は20:00、写真は夏至の頃の23:00のものです。
米国ではDay light saving timeといいますが、ルクセンブルクではSummer time、公用語であるフランス語ではl’heure d’ete、夏時間です。

夏時間になるころは鳥もいっそうさえずり、いろいろな花が咲き誇ります。一気に新緑の季節になります。緯度が高く日差しが低い確度で差し込むせいか、日光に照らされる木々の葉の色は日本と違うように感じます。赤毛のアンの「輝く湖水」ならぬ「輝く木々」です。
鳥たちも、春の訪れを待っていたように窓の外の屋根の上や、庭の木のてっぺんで競い合うように賑やかになり、朝は鳥の鳴き声が目覚まし時計の代わりになります。

ところが、盛夏になると途端に静かになります。鳥はさえずりを終え、太陽がいっぱいなのに静まり返ります。虫がいないのです。セミもいません。セミの生息の北限を越えているのです。
南仏にいけばセミの鳴き声を聞くことができますが、ルクセンブルクにはセミがいません。

和辻哲郎氏が著書「風土」で、「同様に虫の音が聞こえぬということは、夏の夜を寂寞たらしめるだけではない。それは一般に昆虫が少なく、従ってまた農作物の害虫が少ないことを意味する」と記述していますが(岩波文庫、P155)、夏の夜だけでなく昼間も寂寞たらしめています。

最初は何か物足りない、なんだろうか、考え込んでしまいました。セミはともかくとして蚊がいないのは大変ありがたいです。虫刺されを気にすることなく庭で日光を浴び静かな夏を過ごすことができます。

ただ、夏至を過ぎると、1日1日と日の入りが早くなり、短い夏が終わるのかと寂しくなります。夏でも静かなだけに、ものさびしい気持ちになるとともに、短い夏を惜しみなく過ごそうという気持ちになります。

人々が冬の間から夏のバカンスを楽しみにしているのがよく分かります。

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