懸賞高校生 第一話
懸賞大好き高校生、萩野美玖(はぎのみく)は中学の時にイジメられていたが偶然コンビニで見た、受験生用の商品POPに心を打たれそのコンビニでバイトすることを決める。
同じバイトの一つ上の先輩、キューさんこと坂下弓槻(さかしたゆづき)は無愛想だけど美玖に対するさり気ない優しさが、美玖の中で最近気になり始めて···
そんなキューさんにすすめられて聴いているラジオ番組Lovely♡Everyday。懸賞ハガキを書きながらラジオを聴くのが美玖の“お楽しみタイム”そしてラジオの常連リスナー“ラブリーサンキューさん”も美玖の気になる人···
懸賞を通して二人の淡い恋模様を描く、新感覚ラブストーリー
補足
他の登場人物
早坂千鶴(はやさかちづる)
大学1年。同じバイト先の先輩。明るくて面倒見が良い頼れるお姉さん的存在
田中史(たなかふみ)
大学1年。同じバイト先の先輩。いつも美玖のことをからかうお調子者のムードメーカー
間瀬(ませなぎさ) 美大生。同じバイト先の先輩。受験のため一度バイトを辞めたが再び働くようになる
本文
○回想シーン○
中学3年の冬、コンビニのレジ前に置かれているPOPを見た美玖は心を打たれる
そのPOPは受験生向けの商品(キット勝ツヨやカロリーメイン)と一緒に掲げられてあり、満開の桜の絵とその中心に
「頑張れ、負けるな!!」と書いてあった
まるで今の自分に言ってくれているように感じた美玖は、レジで涙をこらえながら笑顔で
「ハガキ下さい」と言った
○回想シーン終了○
それから月日が流れ、美玖は高2になった
萩野美玖16歳高2。学校とバイト先を往復する毎日だけど、高1の夏休みから始めたコンビニバイトは学校よりも居心地の良い場所。
○コンビニ○
美玖「いらっしゃいませ」
ピッピ··· レジを打つ音
お会計のやり取りをする
美玖「ありがとうございました」
隣のレジにいるキューさんが美玖に声をかける
キューさん「荻野、深夜帯の人達来たからそろそろ交代」
彼の名は坂下弓槻。美玖より一つ年上の高3で、名前の頭文字(弓)をとって皆から
“キューさん”と呼ばれている
無口で無愛想だけど、困っていたらさり気なく手伝ってくれたり周りをよく見てくれている頼れる先輩
美玖「はい、了解です」
キューさん「あっ、俺買う物あるから先行ってて」
美玖「わかりました。じゃあ、お先に失礼します」
バタバタと急ぎながら、休憩室に荷物を取りに向かう美玖
深夜帯のバイト君1(以下バイト君1)
「おっ、美玖ちゃんお疲れ〜」
美玖「お疲れさまでしたー!」
深夜帯のバイト君2(以下バイト君2)
「そんなに急いで転ぶなよー」
バイト君1「いつも元気だなー。そういや美玖ちゃん来てもう一年経つっけ?」
バイト君2「いや、確か去年の夏くらいだったからもうちょいじゃね?」
「つーか、美玖ちゃんってさー仕事もいつも一生懸命で可愛いし、なんか小さい子どもみたいで守ってあげたくなるんだよなぁ〜」
バイト君1「は?なにお前、もしかしてロリコン···」
ドンッ レジ台に飲み物を置くキューさん
キューさん「···レジお願いします」
うつむき少し怒り口調で話すキューさん。
そして美玖がバイトの面接に来た日のことを思い出す
○回想シーン○
高校生になった美玖は、高1の夏休みにPOPに心を打たれたコンビニへバイトの面接に行き「落ち込んでいた時に、レジ前にあった満開の桜が描かれたPOPを見て元気を貰ったんです」と店長にPOPを見て元気をもらったことを話し、ここで働きたいと申し出る。
ちょうど裏に用があり、美玖が話しているのを偶然聞いたキューさん
○回想シーン終了○
キューさんはお会計を終えると
(もうすぐ一年か···)
と心の中でつぶやいた
その時、荷物を持ち帰ろうとする美玖が現れた
美玖「キューさん、お疲れさまでした」
キューさん「お疲れさん」
「萩野、ん」
キューさんはレジで買った
「甘ちゃんコーヒー」(新発売の激甘コーヒー)に付いているキャンペーンシールを、美玖のカバンにペタッと貼った
美玖「えっ?ん!こ、これは···コツコツためてた甘ちゃんコーヒーのキャンペーンシール!も、貰っても良いんですか!?」
キューさん「どーぞ」
「これ、新発売だから買ってみたんだけどなんかシールみたいなの付いてて、萩野そういうの集めてそうだったから」
美玖「はい、めっちゃ集めてます!!甘ちゃんコーヒーのシール、今キューさんに貰ったので枚数そろったので、家に帰ってさっそく応募ハガキ書きます!」
「キューさん、ありがとうございますっ!」
キューさん「おう。じゃー早く帰んな、あれも始まるし」
美玖「ですね!キューさんももちろん聞きますよね?」
キューさん「初めに萩野に教えたの俺だから、当たり前だろ」
二人は顔を見合わせ笑うと、美玖は全速力で帰って行った
その後休憩室に入るキューさん
キューさん「フッ、ホント何事にも一生懸命だな」
「···つーか、甘っ」
甘ちゃんコーヒーを一口飲んだキューさんは驚きながらそう言った
無数の星空が辺りを照らす中、息を切らしながら帰宅途中の美玖
「もう1時間切っちゃったけど時間間に合うかなぁ〜帰ってすぐシャワーして···」
「あぁ〜早く“お楽しみタイム”したい」
美玖は急いで家に帰ると、部屋着に着替えてお風呂場に直行
シャワーを済ませると高速で髪を乾かしハガキ、ペン、シールの三種の神器を準備すると···携帯ラジオのスイッチをONにする
ラブリー「はーい皆さんこんばんは。今週も“Lovely♡Everyday”の時間がスタートしました〜みんな、ラブリーに会えなくて寂しかったわよね?ラブリーはとっっても寂しんぼだった♡」
「ではではさっそくおハガキ読んじゃいますよ〜まずはペンネーム“ラブリーサンキュー”さん···」
美玖「あっ、またラブリーサンキューさんのハガキ読まれた!これってあとちょっとでステッカーたまるんじゃない?」
“Lovely♡Everyday”とは週に一度放送される中高生を中心とした若者に人気のラジオ番組
MCのラブリー(ウサギのきぐるみを着たおネェ言葉のオジサン)からハガキが読まれると番組特製ステッカーが貰え、5枚たまるとラジオ出演とラブリーがリスナーの願いを一つ叶えてくれる(できる範囲で)のが目玉企画となっている
美玖は元々ラジオは聞いていなかったが、キューさんやコンビニのバイト仲間から勧められ毎週聞くようになった
ラブリー「···ラブリーサンキューさんが描くイラストって本当惚れ惚れするほど素敵なのよね〜みんなに見せられないのが悔やまれるわ」
「今回は今の季節にピッタリの淡いピンク色のカーネーションを描いてくれたわ。春色マシマシでなんだか恋のよ·か·ん なんてね!ラブリーサンキューさんありがとね〜♡」
美玖「ラブリーサンキューさんが描いたカーネーション見てみたいなぁ〜そうだ、給料日になったらカーネーションのミニブーケ買いに行こう!」
「でもその前に、このハガキも春らしくデコレーションしよ!確かピンクの花柄のマステがあったはず···後はこの前買ったイチゴのシールも貼って〜フンフン···あっ仕上げはもちろんコレでしょ」
「よし、さぁ完成〜!!」
美玖の一日の疲れを癒やす“お楽しみタイム”とは、大好きなラジオ番組を聞きながら懸賞ハガキを書くこと
真っ白なハガキの周りには柄やラメ入り、そしてカラフルなマステと、花や動物、食べ物などの種類豊富なシールが並べられていて、季節や懸賞内容によって好きなようにデコレーションしていくのが美玖にとっての至福の時間
美玖「春らしく、そして甘ちゃんコーヒーのハガキだからちゃんと仕上げにコーヒーのシールも貼ったし···うん良い感じ!」
「キューさんのおかげで締め切りギリギリだったけど何とかハガキ書けて良かった。明日朝イチでハガキ出さなきゃ。キューさんも今ラジオ聞いてるかなー······あー明日学校やだな」
○翌朝 美玖の部屋○
ヴーヴー······
6:00ちょうどに美玖のスマホのアラームが鳴る
美玖「うぅ···まだ眠い〜けど学校に遅れちゃうから起きないと」
バタバタと朝食を食べ身支度をする
7:00になり学校に行くため、玄関に向かおうとするところに姉が起きてきた
姉「おはよ〜美玖は毎朝早起きでえらいねー」
美玖「お姉ちゃんおはよ。自分で決めたことだから何もえらくないよ、じゃあ行って来るね」
母「忘れ物はない?お弁当は持った?」
美玖「大丈夫、ちゃんと持ったよ。じゃあ行ってきます」
駅に到着し、駅前の郵便ポストに昨日書いたハガキを投函する美玖
(どうか当たりますように)と
心の中でお祈りした美玖は、その後駅の改札口へと向かった
○列車の中○
浮かない顔で窓の外を眺めている美玖
美玖は列車で一時間かけて高校に通っている
理由は中学の時のクラスメイトと同じ高校に行きたくなかったから
だからあえて知り合いのいない、遠くの高校を選んだ
高校は中学の時みたいに美玖をいじめる人はいないが、なかなかクラスに馴染めず高1の時もそして高2になりクラス替えをしてからも、基本一人でいる
○教室○
学校に到着し教室に入り自分の席についたが、ザワザワする周りの声が耳から離れない美玖
美玖(早く授業始まらないかなーって言ってもまだ10分以上ある···そんな時は)
美玖はスマホで懸賞情報を探した
(毎月ハガキは10枚しか買わないって決めてるから、高校に入ってからはネット懸賞も始めたけど···ハガキ応募より手軽だから応募倍率が高いのが難点なんだよね)
(けど、ネット懸賞だと私が懸賞やってることは皆に知られないし学校でハガキ書くよりよっぽど良いよね······)
○回想シーン○
中学3年の頃、たまたま美玖が教室の自分の席でハガキを書いていると
「美玖なにしてるの?」
と友だち数人が集まってきて
「懸賞ハガキだよ」
と美玖が答えると最初は興味津々だった友だちも、だんだん趣味が合わなくなってきて
(友だちは恋愛や音楽、テレビの話題でもちきりだけど、美玖はついていけない)
徐々に友だちとの間に距離ができてしまった
そしてクラスで孤立してしまった美玖はハガキを書いていると陰口をたたかれたり、からかわれたりするようになってしまった···
○回想シーン終了○
嫌な過去を思い出しフリーズしてしまった美玖は、スマホの液晶画面も待機時間が切れて真っ黒になっていた
その時、キーンコーンカーンコーンとチャイムが鳴り先生が教室に入ってきた
ハッとした美玖は慌ててスマホをカバンにしまうとそのまま机に突っ伏した
美玖(早くバイトに行きたいな···)
○放課後○
学校が終わった美玖は家に帰り着替えた後、バイト先のコンビニに向かう
(家からコンビニは5分位)
美玖「おはようございます」
千鶴「あっ、美玖っちだ。おはよ〜」
彼女は早川千鶴。大学1年生で、明るくて面倒見が良いお姉さん的存在
千鶴「ねー美玖っち、昨日のLovely♡Everyday聴いた?またラブリーサンキューさんのハガキ読まれてて凄くない?」
美玖「もちろん聴きました!ラブリーサンキューさんが描いたカーネーション、絶対素敵ですよね。ラジオだから見られないのが残念です」
千鶴「そのうち公開収録とかしてくれないかなぁーそしたら絶対見に行くのに。生ラブリーに会いたい〜」
美玖「生ラブリー!私も会いたいです」
千鶴「じゃあその時は一緒に見に行こう!それと、もうすぐ給料日だから休み合ったらお出かけしよー」
美玖「お出かけ···!したいです!ではシフトが出たらLINしますね」
千鶴「はーい、美玖っちとのお出かけ楽しみ〜」
○その夜 美玖の部屋○
机に向かって“給料日に買う物リスト”を書いている美玖
·ハガキ10枚
·虹色のマステ
·星柄のシール
·カーネーションのミニブーケ
その他(貯蓄)
·キャンペーンが始まったら買う飲み物、お菓子代
·フラワーランドまでの交通費、食事代、お土産代
·フラワーランドのパスポート代
(懸賞で当選したらそのまま貯める)
美玖「よしっ!こんなもんかな」
「貯蓄も入れると毎月ギリギリなんだよなぁ。けど、ハガキを書いたりデコレーションする時間は私にとって大切で、ないと息が詰まるし楽しくないからこの時間はなくしたくないよ」
「それとお花も···あのPOPを見て元気を貰ってからお花は毎月買うようにしてるし、落ち込んだ時はお花を見たりあの時のことを思い出して充電しているから」
「前から気になってたけど、あのPOPって誰が描いたんだろう。結構前のことだから皆覚えているかわからないけど、機会があれば今度誰かに聞いてみよう」
それから数日後の給料日
○放課後○
美玖(やっと授業終わった〜今日は待ちに待った給料日!バイトも休みだし、さっそく買い物に行こー!)
校門を歩いていると、下校中の女子達の会話が聞こえてきた
女子1「ねぇ、バイト代入ったからどっか寄ってかない?」
女子2「オゴリだったらいーよ。ラッキー」
女子1「えっ、まだ何も言ってないけど!もう、しょうがないなぁ」
女子達のやり取りを見て羨ましく思い、そして少しさみしげな表情になる美玖···
美玖(私も···早く千鶴さんとお出かけしたいな)
気を取り直し、街へと向かう美玖
○ショッピングモール○
雑貨屋に着くと、所せましと並べられたマステやシールに目を輝かせる美玖
美玖(わぁぁ〜こんなにたくさんあるとテンション上がる!!あれもこれも欲しくなっちゃうけど、マステとシールは一つずつだけ。誘惑に負けるな!)
なんとか誘惑に打ち勝ちあらかじめ決めていた柄のマステとシールを買った美玖は、別の階にある花屋に向かった
美玖(カーネーションのミニブーケあるかな?)
チューリップやパンジー、スイートピーなど春の花々が店内を賑わす中、パステルピンクのカーネーションももちろん置かれていた
美玖(カーネーションのミニブーケあった!ヒラヒラのピンクの花びらが可愛い···)
カーネーションのミニブーケを両手でそっと持ち、レジに向かった美玖。
美玖(マステとシール、そしてカーネーションのミニブーケも無事買えて良かった〜最後は···あそこに向かうだけ)
○コンビニ○
バイト先のコンビニに来た美玖
キューさん·史「いらっしゃいませー」
美玖「こんにちは。今日のシフト、キューさんと史さんだったんですね」
史「おっ、美玖ちゃん。どした?またハガキ買いに来たのかい?」
史さんこと田中史は千鶴と同じ大学1年生。いつも美玖のことをからかうお調子者のムードメーカー。
美玖「毎月買いに来てますもんね(苦笑)お給料入ったのでハガキ10枚下さい」
史「はいよー、ちょっと待っててね」
キューさん「俺、手空いてるんで用意しますよ」
レジ台付近の引き出しからハガキを取り出すキューさん
史「キューさん悪いね!美玖ちゃん、もうちょっと待ってね」
「···懸賞ってさテレビで見たことあるけど、ハガキ何十枚とか書かなきゃ当たんないんでしょ?」
美玖「そんなことないですよ!確かにたくさん出した方が当たる確率は上がるかも知れないですけど、当たる時は当たります!」
史「え〜せっかく出したのに当たらなかったらヘコまない?」
美玖「まぁ···けど、当落だけじゃなくハガキをデコレーションしたり、投函してから当選するかどうかワクワクしながら待っている時間も楽しいですよ」
ハガキを用意しながら二人の会話を聞いているキューさん
史「へー俺にはよくわからんけど、美玖ちゃんが楽しいならいいや」
その時、お客さんが呼ぶ声がした
史「美玖ちゃんごめん、あとキューさんにお願いしてもらっていい?」
そう言い残すとお客さんの所に向かう史
キューさん「お待たせしました。630円です」
美玖「は、はいっ」
荷物をレジの荷台に置き、カバンから財布を取り出そうとする美玖
キューさんが視線をおとすと、荷物の中にカーネーションのミニブーケが見えた
キューさん「その花···」
美玖「あっ、さっきお花屋さんに行って買ってきたんです。毎月お給料日なるとお花を買っていて···」
「ちょうどこの前のLovely♡Everydayで、ラブリーサンキューさんのハガキのカーネーションのイラストが素敵だってラブリーが言ってたから、今月はカーネーションがいいなと思って···ってなんか一人でベラベラしゃべってごめんなさい」
お金を渡しながら謝る美玖···
キューさん「···そっか。萩野は花好きなの?」
美玖「はい、大好きです。」
「ほら、このカーネーションもピンクの花びらがヒラヒラしていて可愛いんです!」
美玖は満面の笑みで答えると、荷物の中からカーネーションのミニブーケをキューさんに見せた
キューさん「···やっぱ本物には敵わないな」
キューさんはボソッとつぶやくと、美玖にハガキを手渡した。そして帰り際に美玖に聞いた
キューさん「そういやこの前のコーヒーのやつってなんか当たったの?」
美玖「甘ちゃんコーヒーのですか?まだです。そんなに結果早くないですよ〜」
キューさん「じゃー待ってる時間の楽しみ増えたな」
キューさんはそう言って優しく笑った
ドキッ
キューさんの笑顔に一瞬ドキッとする美玖
美玖(キューさんってこんなに優しく笑うんだ)
美玖「···はい。なのでまだまだ待てます!」
美玖は笑顔でキューさんにそう言った
美玖「じゃあ、キューさんバイト頑張ってください」
美玖が帰った後、レジに史が戻ってきた
史「あれ?美玖ちゃん帰っちゃったの?キューさん先に休憩どうぞ」
キューさん「了解です。···史さん、ハガキ2枚下さい」
史「へっ!?まさかキューさんまで懸賞に目覚めちゃったの?」
キューさん「いや、まぁ似たようなもんっす」
○その夜 美玖の部屋○
美玖「新しい仲間(マステ·シール)も増えたしさっそくハガキ書きしよ〜」
Lovely♡Everydayのラジオを聴きながら、ペンを片手に持つ美玖
机の横には花瓶に入れられたカーネーションが飾ってある
美玖「···あまり得意じゃないけど、たまにはイラスト描いてみようかな。お菓子のキャンペーンだから···よし、パンケーキにしよ!」
15分後······
美玖「パンケーキが···なぜかおせんべいになっちゃった······私ってやっぱり絵心ないのかなぁ。ラブリーサンキューさんみたく上手くなりたいよ」
「···そうだ、もうすぐGW入るから早くハガキ出さないと配達お休みになっちゃう!GWかぁー学校休みなのは嬉しいけど、バイト以外今のところ予定ないし(涙) 明日にはシフト出てるかなー早く千鶴さんとお出かけしたいな」
そしてGWに突入。その大半はバイトだったが、バイトが休みの日は姉や千鶴と外出したりして過ごした
○GW明けのバイト先○
美玖「······全然お客さん来ないですね」
キューさん「まぁ連休明けだしなー萩野は連休どっか行った?」
美玖「はい、千鶴さんとカフェに行ったり、お姉ちゃんとショッピングに行きました。キューさんはお出かけしましたか?」
キューさん「いや、家に引きこもってた。一応受験生だし。」
「テレビ見てたらさーフラワーランドの行列映ってて、お疲れさんって思わず言っちまった(笑)」
美玖「あはは、その気持ちわかります。行列は苦手だけど、フラワーランドは行きたいなぁ~」
キューさん「いかにも女子が好きそうだよな」
美玖「女子は多分皆好きだと思います!フラワーランドは花と遊園地の融合なんで、女の子の好きがたくさん詰まってるんです!」
「パーク内は一年中お花で囲まれていて、なおかつ種類豊富なアトラクションが一日中乗り放題で楽しめるんですよ。贅沢に甘辛が両方味わえます!」
キューさん「力説だな(笑)萩野は行ったことあるの?」
美玖「小さい頃に家族で何度か行ったことはありますが、中学くらいからは······家族で外出も減ったし、お小遣いを貯めても交通費もパスポート代も高いのでなかなか行けず···」
キューさん「そっか。じゃあバイト代貯めてそのうち行けるといいな」
美玖「はいっ。実は甘ちゃんコーヒーのキャンペーン、当選賞品がなんとフラワーランドのペアパスポートなんです!」
「なので、当たることを祈って交通費とお土産代を毎月コツコツ貯めています」
キューさん「おっ、なら意外と早く行けるかもな。つーか、思い出した。そのなんとかコーヒーめちゃくちゃ甘いんだけど」
美玖「えっ、そうですか?私はおいしかったけど···」
キューさん「もう絶対買わん」
美玖「えぇ〜〜」
○夜 美玖の家○
バイトが終わり家に着く美玖
美玖「ただいま」
母「お帰り。着替えたらお風呂入っちゃいなさい。そうだ、美玖宛の郵便届いてたわよ」
美玖「えっ、なになに?」
さっそく食卓テーブルの上に置かれた封筒を見る美玖
美玖「うそ、まって!甘ちゃんコーヒーキャンペーン事務局って書いてある···これってもしかして」
ハサミを持ってきて、ドキドキしながら震える手で封を開ける···
美玖「わぁ〜!フラワーランドのペアパスポートだぁ!!」
甘ちゃんコーヒーキャンペーン事務局から届いた封筒の中には、当選通知とフラワーランドのペアパスポートが入っていた
第二話
https://note.com/madder591/n/n710370b78d42
第三話
https://note.com/madder591/n/nea9052080ef0
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