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「SDGsのその先」へ。リジェネラティブな未来に向けて、PR・マーケティングができること【Earth Company】

互いに信頼し合える間柄であるからこそ、営利関係を超え、未来の可能性を共創できる。そう信じるわたしたちは、「恋に落ちるくらい好きになった相手と仕事をする」ことを大切にしてきました。

共に未来を創っていくパートナーでもある団体や企業の方々を紹介する本企画、『わたしたちが恋に落ちた、あの人』。社会課題解決の現場で挑戦されている皆さんの想いや葛藤、そして弊社とどんなコラボレーションが生まれたのか、対談を通じてお届けしていきます。

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今回取り上げるのは、バリ島・ウブドを拠点に活動するEarth Company(以下、Earth Company)。弊社は「インハウスPR・マーケティングアドバイザー」として、日本国内イベント開催やSNS発信などのPR・マーケティングに携わりました。今回の対談では、出会いのきっかけや「5周年記念イベント」開催などを通して生まれた効果、これからの展望を伺います。

お越しいただいたのは、Earth Companyでマーケティングマネージャーをつとめる樋口実沙さんとコミュニケーションディレクターの小松紀子さん。プロジェクトの全体進行を担当したmorning after cutting my hair代表の田中美咲が対談相手をつとめます。

/// LOVERS ///Earth Company
Earth Companyはインドネシアのバリ島と日本を拠点とする二団体の総称。「人と社会と自然が共鳴しながら発展する『リジェネラティブ』なあり方を追求する」ことをミッションに掲げ、類稀な変革力を持つアジア太平洋のチェンジメーカーを支援する「インパクトヒーロー支援事業」、企業・教育機関を対象に次世代につなぐ未来を創る人材を育成するためのプログラム「インパクトアカデミー事業」、バリ島ウブドのエシカルホテル(Mana Earthly Paradise)を運営する。(WEB:https://www.earthcompany.info/ja/

最先端の「チェンジメーカー」が集まる、バリ島での運命的な出会い

——今回morningとのコラボレーションが生まれたきっかけを教えてください。当時、Earth Companyではどのような課題があったのでしょうか。

小松紀子さん(以下、敬称略):私たちはバリ島・ウブドを拠点に、人と社会と自然が共鳴しながら発展するリジェネラティブなあり方をビジョンに掲げ、アジア太平洋地域の社会起業家(チェンジメーカー)たちの支援などを行っています。

そもそもEarth Companyは、代表の濱川が東ティモールの独立に貢献した元大統領補佐官のベラ・ガルヨスに出会い、彼女を支援する目的で創設した団体。ベラは、のちに最初のインパクトヒーローになった人物です。当初はPRやマーケティングの知見がある担当者もおらず、ファンドレイジングなど必要な業務を夢中で行うような状態でした。そのため、常にチーム内は目の前の業務に追われていて、「何が課題かすら考える時間がない」ような状態。そんな頃、2017年にEarth Companyのインパクトアカデミー事業である「バリ島ソーシャル研修」に美咲さんが参加してくれて。

田中美咲:私は当時代表をしていた一般社団法人防災ガールの運営をするなかで、日本で蓄積された災害にまつわる知見やノウハウを世界に広めるにはどうすればいいか、模索しているところでした。そんなとき、知人からソーシャルイノベーションの最先端の社会企業・社会起業家たちに学べる研修があると紹介してもらって。生きた学びを吸収してみたいと思い、気付いたらバリ島に向かっていました(笑)。

研修中Earth Companyの皆さんとお話しさせていただくうち、その不思議な魅力に惚れ込んでしまって。ただ、その魅力を実際に体験していない人にはうまく伝わっていない気がして、もったいないなと感じました。

2017年開催バリ島ソーシャル研修の様子

——美咲さんが感じたEarth Companyの魅力とはどんなものでしょうか。

美咲:あえて言葉にするなら、愛情や希望、豊かさを体現している方たちが集まっているんです。経済的なインパクトや目に見える指標が重視される資本主義社会で、Earth Companyが持つパワーや魅力をどう伝えていくのか。私が強みにするPRやマーケティングのスキルを使って、何かお手伝いはできないかと考えました。

樋口実沙さん(以下、敬称略):私たちはいつも社会課題への向き合い方を“北風と太陽”の寓話にたとえていて。社会課題を発信するとき、“北風”のように、シリアスな側面を強調して問題提起しなければいけない場面が多いですよね。
でもEarth Companyが目指したのは、「こんな未来になったらいいね」という“太陽”のようにポジティブなアプローチ。私たちが大切にしている姿勢を掬い上げてくれたのがとてもありがたかったですね。

一般社団法人Earth Company マーケティングマネージャー樋口実沙さん

自走できる仕組みづくりと「秘伝のタレ」

——morningは「インハウスPR・マーケティングアドバイザー」としてどのようなサポートをしていったのでしょうか。

美咲:一番初めに着手したのが、情報整理や優先順位付けです。メンバー一人ひとりにヒアリングをして、「誰が・いつ・どんなことをやっているのか」を洗い出し、可視化していきました。その上で、緊急性が高くても後手に回ってしまっているタスクがないよう、改めて優先順位付けや役割分担を進めました。

またそれまでは、プレゼンテーション資料やアニュアルレポート(年次報告書)、寄付者へのお礼の手紙などの定期的に発生する業務を、その都度一から取り掛かっている状態がありました。毎回デザイナーに発注するのはコストも手間もかかるので、morningではベースになるようなフォーマットを制作し、自走できる仕組みを整備していきました。

実沙:実は私が入職したのは、美咲さんがEarth Companyに携わってから時間が経った2019年。でも、タスクの全体像や優先順位が整理された状態だったので、とても仕事がしやすかったですね。今でも美咲さんが残してくれたマニュアルやテンプレートを応用して使っているので、まるで「秘伝のタレ」のように大切にしています(笑)。

——PRやマーケティングの基盤作りをしたのですね。他にはいかがでしょうか。

紀子:イベント開催についても、運営マニュアルもなく、毎回場当たり的に本番を乗り切っていて。morningに開催までのチェックリストやリスク管理マニュアルを明文化していただけたので、準備がとても楽になりましたし、安心して本番に臨めるようになりました。

美咲:あとは日本のメンバーがスマートフォンで撮影してもある程度のクオリティが担保できるよう、撮影方法のガイドラインを策定し、写真に統一感が出るようにしました。そうすることで、イベントなどで毎回プロカメラマンに発注するコストもおさえられますよね。

実沙:SNSの発信に関しても、ルールもマニュアルも決めておらず、言葉遣いやトーンが担当者によってバラバラで。ペルソナやターゲットを設定し、投稿のフォーマットも作っていただいたので、そのあとの発信が格段にスムーズになりました。

美咲:Earth Companyが両想いになりたい相手はどんな人なのか、その方たちに確実に想いを届けるために、どんなキャラクターで、どんな言葉を遣うのか。それを決めておくことで、誰が投稿してもブランドの世界観が伝わるようになります。
先ほど実沙さんがお話しされたような、Earth Companyの“太陽”のようなあたたかさがSNSからも滲み出るように。さらに寄付をしていただく方からも、より信頼を深めていただけるように。カジュアルすぎず堅すぎない、ちょうどいいバランスが必要だと感じました。画像や絵文字の使い方に至るまで、細かいところまでお伝えしました。

一般社団法人Earth Company コミュニケーションディレクター小松紀子さん

魂を揺さぶるマーケティングで、琴線に触れる出会いを生み出す

——morningは「5周年記念イベント」の運営にも携わっています。開催に至るまでの経緯、morningがPR・マーケティングにおいてこだわったポイントを教えてください。

実沙:かねてから代表の濱川には、これまでサポートし続けてきたアジアの社会起業家であるインパクトヒーローが一同に会する場を作りたいという想いがありました。そこでEarth Company創設5周年を機に、お世話になった方々へ直接活動について報告をするイベントを開催することにしたんです。

ただ、これまで大規模なイベントを開催したことがなかった私たちには、知見もノウハウもない。そんなところで、美咲さんたちにはクリエイティブ制作から当日の運営に至るまできめ細かにサポートしていただいて、とても心強かったですね。

美咲さんの「メインクリエイティブは手を抜かない方がいい」という言葉が印象に残っています。非常にタイトなスケジュールのなか、私たちの世界観を表現しつつもパッと目を引くようなクリエイティブを作ってくださいました。実際にイベントの募集ページやSNSの告知に使用してみて、美咲さんの言うクリエイティブの力を痛感しましたね。イベント全体が質が高い仕上がりになったのはmorningのおかげです。

美咲:「5周年記念イベント」はEarth Companyという団体の認知を高め、活動内容を印象付ける目的ももちろんありました。ただそれよりも重要視したのは、イベントに来てくださった方々の魂をいかに揺さぶるか。そういった観点で、メインクリエイティブはインパクトヒーローたちを表に出すことに決めました。結果として、インパクトを残しつつ、Earth Companyのブランドとしての意思も尊重するクリエイティブが出来上がったと思っています。

「5周年記念イベント(IMPACT HEROES DAY)」メインクリエイティブ

——「5周年記念イベント」を通して、現時点で得られた成果や世の中の反応はどのようなものでしたか。

実沙:イベントには200名近くの方が来場してくださいました。もともとの支援者の方だけでなく、SNSの告知からイベントを知って来場してくださった方も多くいらっしゃいます。イベント後には新しくマンスリーサポーターになった方もいたり、高額の支援をしてくださった企業も。「5周年記念イベント」を機に繋がった縁はたくさんあります。
「今までこんなクオリティのイベントに参加したことがなくびっくりした」「これからも支援していきたいと思った」などアンケートの満足度が非常に高かったのも、手応えを感じましたね。

紀子:Earth Companyは支援者同士の結びつきがすごく強いんです。それはきっと、インパクトヒーローを軸に有機的なつながりが生まれているから。イベント当日には、インパクトヒーローの周りに支援者の方たちが集まって直接想いを伝えている姿が印象的でした。「自分が支援している人が世界を変えているんだ」という手触り感を持つことができたのではないかと思っています。そうした場を作れたのは私たちにとっても励みになりました。

美咲:私が驚いたのは、インパクトヒーローを中心として皆さんハグをしたり、涙を流したりしている姿。日本の他のイベントでは滅多に見れない光景だなと熱いものを感じましたし、多くの方の琴線に触れる体験に携われたのは私たちにとっても嬉しいですね。

営利企業のマーケティングは、いかに多くの人に届けて「バズ」を生むか、「売り上げにつなげるか」という規模の勝負になりがちです。でもEarth Companyが何より大切にしていたのは、関係者の方々への「感謝」でした。だからイベントの企画においても、「どうしたら応援してくれている方に気持ちを伝えられるか」「来場してくださった方をもっと喜ばせる方法はないか」といった議論が出る。「マーケティング」というより、ステークホルダーと良好な関係性を構築する「パブリックリレーションズ」を重視していたのがEarth Companyらしさだと感じました。

2019年10月6日開催 Earth Company5周年記念イベント「IMPACT HEROES DAY」の様子

「社会課題の最前線で闘う人」の熱量を超えられるか

——イベントの準備を進める過程で大変だったことはありますか。

実沙:イベント前日に、インパクトヒーローの一人が亡命先の米国から日本に入国できず、来日できないかもしれないというハプニングがありました。なんとか事なきを得ましたが、改めて国際協力という仕事や、彼らの置かれた環境の厳しさを痛感した瞬間でした。綺麗事だけではなく、彼らのリアルなストーリーを伝えていかないといけないとさらに気が引き締まりましたね。
またこの出来事でEarth Companyのチーム力を実感したとともに、団体としてのリスクマネジメントはまだまだ大きな課題だと思いました。不測の事態に対処するための「プランB」は用意して、どんな状況になっても対応できるようにしておかないと、と考えているところです。

——バリ島を拠点とするEarth Companyとの取り組み全体を通して、難しさを感じた場面があれば教えてください。

美咲:これはやむを得ないことですが、インパクトヒーローのそばでアクションを起こしているスタッフと、遠い日本にいるスタッフの間で熱量の差が生まれてしまうのは課題かもしれないと思いました。社会課題の最前線で、目の前に今すぐ救わなければいけない命がある人。状況を俯瞰して、団体として起こすべきアクションを議論する人。両者の間に、求めるスピード感や優先順位に差が出てしまうのは仕方ないことなのかなと。

morning after cutting my hair 田中美咲

紀子:「心の距離」という意味では、日本国内でも同じことが言えると思うんです。例えば東北で水害のニュースがあったとき、東京にいる人たちが被災地と同じ切迫感で状況を捉えているのか。人は自分の目や耳で実際に見聞きしないと臨場感を持ちにくいものだから、美咲さんが言うようにやむを得ない側面はありますよね。ただEarth Companyでこうした仕事に携わる以上、どちらの気持ちも理解できるようにはしておきたいなとは感じていますね。

誰かを幸せにするためには、まずは自分が幸せであること

——改めて今回の取り組みを振り返って感じたことを教えてください。

美咲:自分を犠牲にして頑張りすぎて疲弊してしまう非営利団体も多い中、Earth Companyは「まずは自分たちが幸せであること」を大切にしています。だって、自分が幸せじゃなければ、周りを幸せにする事業はできないから。そんな当たり前だけど、現代社会では見過ごされがちな感情を、私自身改めて思い出すことができました。

紀子:団体としての基盤がしっかり固まったなと実感しています。美咲さんに入っていただいてからは、PRやマーケティングの基礎から整えてもらい、さらにずっと活用できるフォーマットをたくさん残していただきました。まさに「秘伝のタレ」が脈々と受け継がれています(笑)。

実沙:私たちEarth Companyのことを深く理解して、応援してくれる第三者の存在って、とても心強いんですよね。今でも私たちにマッチしそうな情報を送ってきてくれたり、クラウドファンディングを始めたときには真っ先に応援のメッセージをいただいたり。新しい挑戦への大きな自信や活力になります。こういった信頼関係をずっと築いていけているのが、とても嬉しいですね。

オンライン対談の様子 (画面左上:田中、右上:紀子さん、下:実沙さん)

——まさに「恋に落ちた」相手ですね……!

美咲:もともと関わったきっかけも、「好きだから力になりたい」という想いから。今もEarth Companyのことはふとした瞬間に頭に浮かぶし、仕事ではなくても何か力になりたいとずっと思ってるんです(笑)。事業がどんどん成長している様子を見ていて、「少し遠い存在になっちゃったな」と寂しい気持ちになることもありますね(笑)。これからも定期的に交流していきたい大切な存在です。

紀子:そう言っていただけてとても嬉しいです(笑)。Earth Companyは今年、創設8周年を迎えます。これから2030年までに掲げている目標は、アジア太平洋地域の社会起業家(チェンジメーカー)を100人まで増やすこと、そしてインパクトアカデミー事業の参加者を10万人に増やすこと。そのために、PRやマーケティングの力で何ができるか、美咲さんたちにいただいたアイディアをもとに考えているところです。

最近は日本でも「SDGs」「リジェネラティブ」といった言葉が少しずつ浸透してきていると感じています。ただ、誰もが「SDGsのさらにその先」の世界を作れるようになるのはまだ時間がかかる。そのために私たちEarth Companyがやれることは、たくさんあると思っています。

ご出演
Earth Company
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(取材・執筆:安心院彩、編集:中西須瑞化)

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Consulting for Social challenges with Love. based in TOKYO & SHIGA, JAPAN. ///// 世の中にある「課題」に挑む人たちの想いを伝え、感動と共感の力で、『人の心が動き続ける社会』をつくる。