「生き続ける」

朝 ラジオで桂枝雀の落語が流れていた
1986年大阪・サンケイホールで収録したものという
枝雀 首吊って自殺した噺家
1999年3月13日 大阪・吹田の自宅で首を吊った状態で見つかり 病院に運ばれたが意識不明のまま 翌月19日に死んだ 享年59
うつ病だったという

それに遡ること13年 その枝雀の噺は絶好調の艶やかさをたたえていた
その後 病魔にとりつかれ 思うように噺ができず 彼は己が自身を処断した

もうひとり
最近 ぼくがよく聞く英プログレッシブロックの EL&P エマーソン、レイク&パーマー
そのキーボード奏者でトリオのリーダーであったのが
キース・エマーソン
彼は2016年3月11日 米カリフォルニア・サンタモニカの自宅で 拳銃で頭を射抜いた 享年71
キースは晩年 思ったようにキーボードを弾けなくなったことを悩み こと そこに至ったという

枝雀の落語を聞いたのをきっかけに 2つの自殺について考えた

枝雀は今のぼくとほぼ同じ年齢
キースはさらに10年余を生きた
それぞれ覚悟の自裁
死ぬにはまだ少し早い
だが
自分の手で 生に幕を下ろした
一つの道を極め 満足のゆく日々を送りながら
途中でそれが少しずつズレていくことを 彼らは受け入れられなかった

だから ガラ ガラ ガラ

人生を商う 店のシャッターを閉じた

そういう ことだろ?

それは その人の自由

いろいろと周りに迷惑をかけてしまっても
本人にとっては そうして ようやく自由になれた

傍観者は何も言う必要はない

首吊りと拳銃自殺
形は違っても
たどり着いた先は同じ
話せなくなった噺家
手指が動かなくなったピアノ弾き
それぞれが 観衆・聴衆の前に立てぬという絶望に
スッパリと 人生を終わらせた

そんな見事な終末を迎える覚悟がない ぼく
ぼくは
下手な詩が 陽の目を見ない

わかる 絶望の日が訪れるまで
生き続けてやる その覚悟だ
時間をかけて 生き続けてやる

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