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■よいのは「タイトル」だけの小説

「文学」と「作家」への道(10)
「詩人の独り言」改

◇安藤ホセ「ジャクソンひとり」

(河出書房新社、2022年11月刊)

先の芥川賞候補のひとつになった第59回文藝賞受賞作。
主人公は黒人とのハーフの青年。本作の筆者にも重なるような姿形のようである。安藤ホセがどういう経歴かは、版元も明かしておらず、1994年東京生まれとしか分からない。
読む本のほぼすべて、奥付にあるプロフィルから読んでいる僕にはどうにも、作家の人物像が分からないまま読んだ。芥川賞候補になった段階で、筆者の写真の露出もあり、そのモデルのようなルックスが気になった。
加えて、「ジャクソンひとり」という思わせぶりなタイトルにも惹かれ、図書館で予約。案外早く回ってきて早速読んでみたが…。

内容

着ていたTシャツに隠されたQRコードから男が磔にされた動画が流出し、職場で嫌疑をかけられたジャクソン。仕方なく独自の調査を始めると、動画の男は自分だと主張する3人の男に出会い…。『文藝』掲載を書籍化。

ゲイが主人公、ゲイたちの話と知らず、「ジャクソンひとり」というタイトルは、ジャクソン=釈尊(釈迦)…と連想し、深い宗教性がある小説なのかな、などと勝手に思い込んでいた。
しかし、ゲイたちを描いた風俗小説でしかない、という印象。
飛ばし読み。まったく惹かれない小説。よいのはタイトルだけ。何かがある、ない…というよりは、自分には受け入れられないストーリー。ついていけなかったといったほうがよいか。

感性が老化、鈍くなっているのか。いや、理解できない、共感も関心も持てない小説があるのは当たり前のこと。そんなことにこだわっていたら、読書などはできない。
月に10冊以上の本を読んでいるが、ノンフィクションや小説が中心で、詩集にはあまり手が出ないまま。
小説も、詩作の参考になれば、と思いながら、先にも書いた「水平線」を除けば、心に残る小説は今のところない。

150ページと短く、すぐ読めるけれど、この小説を読むのは時間の無駄だったかな。「芥川賞候補にもなった風俗小説を読んだ」…という体験を得たというだけ。この時間分、詩集を読んでおけばよかった。

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