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『リトル・フォレスト 夏・秋』で食材をいただくありがたみを感じる

ずっと観ようと思っているけれど、なかなか観れていなかった作品がけっこうある。時間とか気分とかが合わなくてタイミングを逃していることが原因なのだけど、『リトル・フォレスト』はまさにそう。
ごはん映画として有名な作品なので、観よう観ようとかれこれ3年ほどは思っていて、この度やっと観れました。とてもいい作品でした。

「海獣の子供」「魔女」などで知られる漫画家・五十嵐大介さんが、東北の小さな村を舞台に、旬の食材をいかした食事と自給自足の生活を通じて自分と向き合う若い女性の姿を描いた『リトル・フォレスト』を、橋本愛さん主演で実写映画化した作品。

劇場公開時は「夏編・秋編」「冬編・春編」と2部に分けて公開されたそう。(そういえば「海獣の子供」も興味深い食事シーンがありました)

本作のフードディレクションは、食にまつわる様々な活動を行っているeatripの野村友里さんと山本侑紀子さんが担当されています。
野村友里さんは、2009年公開『eatrip』というドキュメンタリーで監督をされていますが、本作でも自然の食材を生かした青々しい料理の数々で、eatripらしさが感じられます。いつかレストランにも行ってみたいです。

▼▼『リトル・フォレスト』夏のごはん▼▼

本作は夏から始まります。
舞台となる小森という場所は、東北地方のとある小さな集落。盆地の底で、山の水蒸気も流れ込み、湿度100%に近いらしい。洗濯物はいくら干しても乾かず、木べらにカビが生えてしまう。カビが嫌いなわたしにとっては、とても恐ろしいオープニングでした…。
でも湿気にただでは負けない主人公いち子の姿がいい!夏でも薪ストーブを焚き、部屋を乾燥させるのですが、その熱を利用して薪ストーブパンを焼きます。

梅雨の湿気は憎いけれど、発酵には素晴らしい環境。いち子は、地粉という国内産の小麦を使用してパンを焼きます。映像には出てこなかったけれど「山グワを使ってパンおやつを作る」というセリフもありました。(ヤマグワって初めて聞いたので調べてみるとラズベリーみたいな実がなるんですね)

ジメジメ環境の中、農作業をしなければならない。そんな時はキンと冷やした米サワー!こちらも湿気をうまく使って発酵させたドリンク。甘酒のようなカルピスのような感じなのかな、来年の夏は飲んでみたい。

ちなみに、お酒を造るには酒類製造免許が必要で、どぶろぐなどを自宅で作ると違法です。調子に乗って発酵させすぎて、米サワーがお酒にならないように注意ですね。

いち子の母親は、ウスターソースヌテラも手作りしていたというエピソードがあります。ヌテラって自分で作れるんだ?!
いち子のヌテラは、ハシバシの実とココアパウダーなどを使って作っていました。シンプルにパンに塗って食べるだけだけど、とても美味しそう!

▼販売されてるヌテラといえばこれ

そして、真夏の日差しにカラフルな夏野菜が楽しい。
沢に生えるミズを使って作るミズとろろミズを細かく叩いて、味噌か三杯酢で味をつけて、夏バテでもサラサラスルスル食べられる夏ごはん。とろろとか納豆とかオクラとかいいよね、一年中食べたくなる。ミズとろろも食べてみたい!

キャンプ場で日雇いの仕事をしたあとは、イワナの塩焼きと、イワナのお味噌汁でお昼ごはん。わたしはこういう魚の食べ方をまだ体験したことがないので、いつか食べてみたい。

夏といえばやっぱりトマト!
小森は湿気が多く、トマトが育ちにくいらしい。ほとんどの農家はビニールハウスで育てているのだけど、ビニールハウスを建ててしまうとこの場所に居ついてしまいそうで、いち子は使っていない。
ハウスを使わず育てた貴重なトマトで、自家製ホールトマトを作ります。(塩水につけて保存するトマト)そのまま食べたり、パスタにしたり、やっぱりトマトは万能だなぁ。

1st dish:薪ストーブパン
2st dish:米サワー
3st dish:グミの実ジャム
4st dish:ウスターソース、コロッケ、ヌテラ
5st dish:ミズとろろ、イワナの塩焼き、味噌汁
5st dish:ホールトマト、トマトのパスタ

▼▼『リトル・フォレスト』秋のごはん▼▼

この映画を観ると、季節によって本当に食べ物って変わるんだなと改めて思うほど、ガラリと秋色の食材が登場します。

まず出てくるのはアケビ
アケビって食べたことあるかなぁ。わたしがアケビの存在を知ったのは漫画の「美味しんぼ」でした。弾ける前の見た目は、瓜のような見慣れた形なのに、中身の透明な身が見えると、少しグロテスクにも見える不思議な食べ物です。

いち子は、アケビの皮も食べられないかと、クミン、カレー粉でトマトとアケビの皮を炒めてサブジ風にしてみます。都内に住んでいるとアケビを手に取る機会はなかなか無いのですが、もし見かけたら皮も食べてみたい。少し苦味があるようです。

夏に雑草取りを頑張った田んぼも、稲刈りの時期。
この作業の時に食べるのが、クルミの炊き込みごはん。動物たちと競争しながら、山でクルミを探します。クルミを割って掃除して、実を取り出すのもひと作業。いち子いわく、クルミの炊き込みごはんは「香り高くて、コクがあって美味しい」とのこと。

夏はイワナを塩焼きでダイレクトに味わいますが、秋はキャンプ場の釣り堀がシーズンオフで1000円でイワナ釣り放題ということで、イワナの南蛮漬けを作ります。季節が移り変わり、味わい方が変わるのは贅沢な楽しみ方ですよね。

秋といえば、栗や芋!
集落では栗の渋皮煮が流行り、ワインを入れてみたり、ブランデーを入れてみたり、みんながいろんなレシピで作っておすそ分けをします。突如、巻き起こるブームって楽しいよね。
サツマイモは干し芋に。ストーブで炙って食べながら、冬の間の保存食となります。

イワナを締めるシーンもきちんと描かれていますが、秋では合鴨農法で米作に活躍したカモを捌き、命をいただくシーンも描かれます。いち子の料理の中で、お肉が登場するのはこのカモが唯一だったような気がします。
カモはグリルにしたり、砂肝やハツをピリ辛炒めにします。カモは脂がすごいけど、やっぱりすごく美味しそうだったなぁ。

本作では「他人に殺させといて文句をつけるな」というセリフもありますが、わたしたちは誰かが用意してくれた食材で生きている。このことを忘れてはいけないと改めて感じました。

秋パートの最後は、お母さんの作るシチューとほうれん草ソテー。ここでいち子は、お母さんが野菜炒めを作る際のひと手間に気づくのですが、こういうひと手間が料理には一番大事なんだと気付かされます。

1st dish:アケビ
2st dish:クルミの炊き込みごはんのお弁当
3st dish:イワナの南蛮漬け
4st dish:栗の渋皮煮
5st dish:干し芋、合鴨のグリル
5st dish:シチューとほうれん草のソテー

「リトル・フォレスト 冬春」編は次のnoteでメモしようと思います!

(C)「リトル・フォレスト」製作委員会

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