見出し画像

猫に好かれたかったら、毎日仏壇にお線香をあげなさい。

 季節もだんだん春めいてきて、春のお彼岸シーズンとなりました。我が家も先日、菩提寺のご住職が宅回向に来られたのですが―春のお彼岸と夏のお盆の年2回、来ていただいています―、ご住職がやってくるなり我が家のペットであるお猫様がご住職の脚元にまとわりついては、お経をあげている間も「俺にかまえ!」と言わんばかりにすり寄って、お帰りの際には袈裟を「コロコロ」してニャン毛除去、というありさまでございました。
 この現象、今回のことだけでなく、ご住職が宅回向に来るたびに毎度毎度繰り返されており、家族も「そんなにご住職のことがお気に入りなのかしら」と不思議がっているのですが、年に2回しかやってこない人物に、警戒心の強い猫がそんなになつくものなのか?というのはとても疑問でして、なぜなのか…と考えること数日、ようやくその答えと思しきものにたどりつきました。

 さて、そんな我が家のお猫様ですが、ご住職が帰った後も仏壇の前から離れず、虚空を見つめるようなうつろな目で、口を半開きにしながらいつまでも仏壇を眺めている始末。人間からしてみれば、何か人間には見えないものが見えているかのような不思議というか、ちょっと不気味な感じがしなくもないのですが、ご住職が来ない普段の日でもたまに仏壇の前で同じような感じで座っている姿を見ることがあります。
 我が家の仏壇は居間のとなりの和室にあるのですが、一日の大半を居間で過ごしているお猫様は、一日のうちに数回も和室に行きたがり、部屋のドアを開けろとせがんでまいります。どうも和室に気になるものというか、お気に入りの何かがあるようなのですが、それが何なのかはずっとわからずにおりました。しかし、先日の宅回向の後に気が付いた和室の「ある変化」から、お猫様が和室、とりわけ仏壇の周りにこだわる理由と思しきものにたどりつきました。それは、「お香の香り」です。

 普段も仏壇にお線香をあげることは欠かさない我が家ですが―父の両親、つまり私の祖父母の位牌を収めているため、この役目はもっぱら父が果たしています―ご住職が来てお経をあげる際には、葬儀や法事でもおなじみの「お焼香」で使う抹香を焚きます。
 普段よりも強めの「お香」を焚いているため、ご住職がお帰りになった後も仏壇の周りには「お香の香り」が強く残っているのですが、どうやらお猫様はこの香りにご執心の様子で、どうもこの香りに秘密がありそうなのです。

 それで気になって調べてみたのですが、一般的にお線香や抹香の原料には「白檀(ビャクダン)」という香木が使われていると「されています」が、本物の白檀は非常に希少で高価なため、一般的に出回っている市販品は化学的に合成された代替物質を使用していることがほとんどのようです。
 なぜこれが猫にとってこんなにも「刺さる」のか、気になって調べてみたところ白檀様(~のような。あくまでも合成で作られたものという意味で)の香り成分のひとつである<バレロラクトン>という物質は、マタタビの香り成分のひとつ<ジャスミンラクトン>とほぼ同一と言っていいほど近しいもののようです。

https://patentimages.storage.googleapis.com/52/4f/89/79fbcda3683545/WO2004087852A1.pdf

 つまり、猫はこの<バレロラクトン>の成分に反応してマタタビで酩酊しているのと同様の作用を得ている、平たく言うと「キマッている」ということなのではないか、というのが、私が至った仮説です。うつろな目で口を半開きにしながら仏壇の方を眺めている様子というのも、ラクトンによる酩酊+香り成分を積極的に取り入れようとするフレーメン反応の表れ、と考えると何となく納得がいくような気がします。

 また、我が家でお線香をあげる役目をしている父が日中よく座っているソファーもお猫様のお気に入りスポットです。父は仏壇のある和室で寝起きをしているので、服や体にお線香の香り≒その成分であるラクトンが染みついているのでしょう。そのラクトンがソファーに移って残留しているため、その場所に執着をしている―それこそ父が座っていると、どけと言わんばかりに頭をねじ込んできます―のでしょう。

 そうやって考えると、「虚空を見つめる猫」というのはそんなにスピリチュアルなものじゃないな…というのが分かり、ちょっと情緒に欠けるような気はしますが、猫に好かれない人が向こうから好かれるためには、マタタビほどの強い刺激を用意しなくても(過度な刺激は小動物には思った以上に毒ですのであまりお勧めできず…)、毎日熱心に仏壇にお線香をあげていればいいんじゃないの?などとも思ったこの春でした。

 ちなみに「ラクトン」という物質は、人間の若い女性も分泌するようです。一時期「おじさんでも女子高生の匂いがするボディーソープ」などと言われてバカ売れしたロート製薬の「deoco」にも成分としてラクトンが含まれているようです。

 そういえば猫って、男性よりも女性、とりわけ若い女性になつきがちなのを自分が見る範囲ではよく見かけるのでなぜなのだろうか?と思っていたのですが、これも別に猫が色ボケなわけでなく(そもそも人間と猫は別種族ですし)、こういったものが作用しているようですね。

サポートいただけたら励みになります。具体的には心身養生の足しにしたいと思います。