学生インディーゲーム開発者がゲーム会社に入るまで抱いていた3つの誤解
この記事を読んでほしい方
ゲーム会社へ入社したい学生
ゲーム会社へ入社を検討したいインディーゲームクリエイター
業界外からゲーム会社へ転職したい社会人
こんにちは、インディーゲーム開発者のマチコーです。
現在大学4年生で、今年4月に株式会社サイバーエージェントに入社します。
たぶんゲーム事業部の子会社へ配属されると思います。
▼最近のことは年末にだいたい書いたので、自己紹介に代えます
僕はいま、『大学生』『インディーゲームクリエイター』『ゲーム会社での実務経験』を並行しています。
なんとまぁ、目まぐるしい毎日です。
で、最近Twitter(X)を眺めていたら、
「インディーゲームクリエイターがゲーム会社に入るなんてけしからん!」
といった旨の意見を目にすることがありました。
僕も、気持ちは非常にわかります。
1年ほど前に放送された『アトムの童』では、大企業と戦うインディーゲームクリエイターの姿が描かれました。
インディーゲームの商業的な側面が強まっている今、インディーゲームの関係者からはゲーム会社すら強力な競合相手として見られているわけです。
両者が対立関係にあるように思われても不思議ではありません。
けれども!
実際のところ、中には学生のうちにゲームをリリースしてゲーム会社に就職する方や、ゲーム会社へ就職した後もインディーゲームを作り続ける方、学校卒業後に就職せず独立する方だっています。
また社会人でも、業界未経験の個人開発者がキャリア採用でゲーム会社に入社したり、逆にゲーム会社に勤めていた方がインディーゲーム開発者として独立される事例も増えてきました。
そんなわけで、「実際、ゲーム会社で働くってどういうことなの?」と気になっている方も多いのではないでしょうか。
(僕も内定前まで、とっても不安でした)
今回はあくまで僕個人の視点から、
『インディーゲームクリエイターがゲーム会社に入ったらこんな誤解が解けたよ!』
という話をしていきます!
ゲーム会社は『作りたいゲームを売る会社』ではない
これが今回、一番伝えたかったことです。
当然ながら、営利企業の目的は利益を生むことであり、仕事とは利益創出のために製品やサービスを顧客に提供する営みです。
ゲーム会社に勤めるからには、ゲームを面白く作るのもプロ意識として大切ではありますが、それ以上に
『売れてこその成功』
を強く意識する必要があります。
なぜなら、面白いコンテンツが世の中に氾濫している中で、売るための努力もなく、面白いだけのゲームがお客さんに勝手に見つかって勝手に売れる確率は限りなくゼロに近いためです。
かくいう僕自身も、これまで作りたいインディーゲームを作ってきました。
しかし2年目以降、イベント出展やコンテストへの出場を繰り返し、お客さんに見てもらう機会が多くなったことで、「どうすれば遊ばれるゲームを作れるか」という意識を強く持って企画するようになっていきました。
運用型ゲームの場合はそれだけでは足りず、「プレイヤーが遊び続けたくなるか」「プレイヤーがお金をかける価値があるか」という目線で企画を評価する必要があります。
翻って考えてみれば、何の新規性も魅力もないゲームが売上を出せるわけがありません。少なくとも今売れているゲームは、お客さんにとってお金を出す理由が必ずあるはずです。
売上は、そのゲームあるいは関係会社を持続させ、更に面白いゲームを生み出す動力源になります。
面白いゲームを作り続けるためには、「面白く作ること」「売れること」両方の意識をバランスよく持っておかなければなりません。
企画職はアイデアを出す仕事ではない
企画職の仕事の9割は、アイデアを実現するための仕事です。
たとえば僕がこれまで経験したタスクは、
戦略資料の作成
企画提案
世界観資料の作成
モック制作
機能の要件定義
仕様書の作成
関係各所へのオリエンテーション
アセットの発注
各セクションの進行管理
……などなど。
アイデアを出す行程もあるにはありますが、実際にはご覧の通り、ドキュメントを作ったり、説明する作業が大半を占めます。
具体的には、アイデアを実現する上で立ちはだかる課題を定義し、その課題を解決するために抽象と具体を行き来しながら、作業・議論をする時間が多いです。
そのため、必要なスキルセットとしては、ざっくり言えば言語化力・論理的思考力・コミュニケーション力の3つであると考えます。
もちろん、ゲーム制作へのこだわりや情熱が必要なのは言うまでもありません。
個人的には、「企画職」「ゲームプランナー」などとフワッと職性を定義するよりも、海外の開発会社のように「ゲームデザイナー」「レベルデザイナー」といった言葉で専門性を強調した方が誤解を生みにくくなるのでは?と思っています。
最近だとコンシューマ系の開発会社はそのような潮流が出来つつあるので、スマホ系の会社も追従してほしいところです。
それでもゲーム作りは想像の5倍楽しい
これまで色々と述べてきましたが、ゲーム会社での仕事は大変なことばかりではありません。
僕にとって、ゲーム会社での仕事は天職だと断言できます。
大学入学からほぼ毎日、サークルでゲームを作ってきた自分にとって、ゲームを作るのも人付き合いも楽しくて仕方ありません。
業務としてゲーム制作を始めてから、いろいろな困難やつらい出来事も経験してきましたが、それでもゲームを作るだけで暮らせる環境はゲーム会社の他にはなかなかありません。
僕がこれまでインディーゲーム制作に捧げてきた時間は、そのすべてが今の自分に活きています。
インディーゲーム制作の経験がなければ、僕が新規開発のプロジェクトに放り込まれることも、主要なパートの企画をガッツリと任せられることもなかったでしょう。
商業ゲームの制作期間が長期化し、予算も膨れ上がっている今、最初から最後まで一本作り上げる経験を若いうちに会社で積むことは非常にむずかしくなっています。
そしてその経験の重要さは、この業界にいる方ならばどなたでも理解していただけるのではないでしょうか。
そのため、むしろ若くて野心のあるゲームクリエイターこそ、ゲーム会社で輝ける素質があるのではないか?と僕は考えます。
まとめ:四の五の言わず、良いゲームを作ろう
僕は業界志望の学生として、インディーゲームクリエイターとして、ゲーム会社の人間として、様々な角度でゲーム業界を見つめてきました。
コロナ禍を経た今、国内のゲーム業界(特にモバイルゲーム・オンラインゲーム)は成長が頭打ちになっており、今後はいずれの開発者・開発チームも海外市場をターゲットとして戦っていく必要があります。
そんな中、ゲーム開発の現場では、ゲームそのものの更なるクオリティアップやマーケティング・ブランド力の増強が欠かせません。
そのためには、組織や会社の壁を超えて知見を共有し、日本のゲーム業界全体として勝つための道筋を見つけることが肝要です。
僕たちにできるのは、所属や肩書きに関わらず、よりよいゲーム作りを目指して今日も明日も努力し続けることです。
今後もこのようなトピックで、ゲーム制作のための議論をやっていきます。
もしご興味のある方は、ぜひTwitter(X)でもお話ししましょう!
https://twitter.com/MachiCollider
それでは、またの機会にお会いしましょう。
いただいたサポートは、明日のアセット代として大切に使わせていただきます。