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つながり促進プログラム#03:共感の視点から考える,持続可能なアクションのための資金調達

京都がもっとよくなる、もっと住みやすくなる、まちづくりの取組提案を募集し、提案の実現に向けたサポートを行う“みんなごと”のSDGs,レジリエント・シティ推進事業。

まちとしごと総合研究所では、「まちづくり団体、NPO、企業、行政、大学関係者等」の異なるセクターの様々な主体が共通のゴールを掲げお互いの強みを出し合いながら地域課題の解決を目指すための学びの場を開催しています。

2021年度の公開講座はオンラインでの3回シリーズ。今回の記事では、12月1日に開催された第3回の様子をお届けします!第3回のテーマは「共感の視点から考える,持続可能なアクションのための資金調達」

何をするにしても必要になるのがお金ですが、そもそもどんな資金調達の方法があるんでしょうか。大切なことは目標金額を目指すだけでないはず。何を考えながらお金を集めればいいのでしょうか。
たくさんのまちづくり団体や企業の資金調達をサポートしてきたゲストとのお二人に、ポジティブにお金が集まり循環していく資金調達のポイントを学びました!

ゲストのご紹介

1人目のゲストは、岡本 卓也さんです。

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まちとしごと総合研究所、CAMPFIRE キュレーター、東山いきいき市民活動センターなどたくさんの肩書がある中で、今回は日本ファンドレイジング協会関西チャプター 共同代表として、主にまちづくり団体の資金調達についてお話を伺いました。
日本ファンドレイジング協会とは、NPO、ボランティア団体のファンドレイジング(資金調達)の方法を考える団体です。セミナー開催、認定制度の試験講師をされています。加えて岡本さんは、助成金事業の審査員や事務局、クラウドファンディングのサポートもされています。

2人目のゲストは、京都中央信用金庫 地域創生部地域創生課 課長の山下 正人さんです。

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京都中央信用金庫は1940年に創立され、京都・滋賀・大阪・奈良に132店舗展開する地域密着型の金融機関です。京都は全国の信用金庫の中で、預金シェア、貸出金シェアがなんと全国で1位!(預金量は5兆円、貸出金は3兆円)

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今日のテーマ「持続可能なアクションのための資金調達」に関連して、京都中央信用金庫さんがSDGsに沿って提供してらっしゃるローンやファンドをいくつか紹介してくださいました。
SDGsの達成に向けた取り組みに対する支援をするローンや、SDGs事業の承継、販路拡大の支援をするローン、ソーシャルビジネスを支援するローン。ほかにも、古民家や空き公共施設などの地域資源を活用するなどの持続可能な地域づくり事業を支援する「地域づくり京ファンド」などがあるそうです。

経済的な面からたくさんの企業サポートをしてらっしゃる京都中央信用金庫さんですが、そのキーワードは「つながる」だといいます。これまでになかった分野同士のつながり。スタートアップ企業とのつながり。地元企業と海外企業とのつながり。企業説明会での新卒者と企業とのつながり。地方と首都圏のつながり。
こうしたつながりによって、照明器具として生まれ変わった和傘がフランスの総合見本市に出展され、伝統産業がグローバルに展開した事例があります。

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誰にとっての価値なのかを考え、関係性をつなぐ役割を果たしていらっしゃることを知りました。

ゲストトークセッション「共感の視点から考える,持続可能なアクションのための資金調達」のポイントとは

つづいてはゲストトークセッション。ゲストのお二人に、資金調達の方法やポイントなどを伺っていきます。

まちづくり団体は補助金での資金調達が多いですが、補助金を得るのに成功している団体は、どこが違うのでしょう?

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「未来を語れているかが重要だと思います。助成金の場合、次の展開や5年後の発展の姿を申請書に書いてくれていると評価をしやすいです。助成金はスタートアップに使うものなので、未来永劫はないんですよね。だから助成金が終わったらどうするのかが俎上に上がってくる。助成金を手に入れることで、3年後、5年後に生きてくる、という書き方をしていると、評価は高くなります」(岡本さん)

コロナ禍では補助金の数も、クラウドファンディングなど資金調達の種類もかなり増えました。クラウドファンディングはどんなときに有効なんでしょうか?

「クラウドファンディングは手段。どう使うか、使い手の意図が重要です。寄付も事業収入も、お金集めじゃないんです。資金調達はファン集めなんです。仲間をどう集めるかが重要で、仲間の参加の形がお金なだけです。お金をくださいというと下世話な話で言いづらいですが、仲間になってくださいだと言いやすい。関わる時間はないけど、面白そうと思うなら、お金という手段もありますよ、という伝え方をするんです」(岡本さん)

と、資金調達の本質に気づかされるコメントをくださいました。仲間集めが目的であって、お金集めが目的じゃないということですね。「広報の目的はファンをつくることだ」という前回の公開講座の内容ともつながります。

では、仲間づくりを支援するときにはどのように関わってらっしゃるのでしょうか?

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「事業者さんは相当な熱量をもってサービスを語ってくださることが多いんですが、『社長がつくった良いものと、実際に世の中で売れるものとは別です』、という話をいつもしています。
金融機関は一緒にサービスや事業をつくることはできません。でもせっかくいいものをつくったなら多くの人に知ってほしい。その支援は金融機関はできるし、そのために金融機関を使ってほしいと思います。熱をもってやっていることを語る向こう側に、社会的意義や、共感してお金まで出してくれる方を納得させられる、プラスαのものが必要です。そこは一緒に考えましょう、といつも申し上げています」(山下さん)

仲間集めの準備として、なぜこれをしているのかを振り返ってみたり、思いが伝わっているか、受け手の目線に立ってみたりするのが大事そうです。

ここで、お宝バンクに登録して活動を広げているモデル事例として、僧侶の霍野 廣由(つるの こうゆう)さんに事業を紹介していただきました。楽しく活動しながらうまく仲間を広げられていると、京都市のコーディネーターさんの推薦です。

霍野さんは、人はどうせ死ぬのに死を遠ざけたり、タブー視したりすることに違和感を感じ、死についてカジュアルに語り合うツールをつくろうと、トランプを開発されました。世界各国の死生観をイラストで表した「死生観光トランプ」です。
35万円を目標にクラウドファンディングをされましたが、結果的に100万を超える支援を獲得されました。

「金額以上に嬉しかったのは、200人以上の方にご支援いただいたこと」だと話される霍野さんに、うまくいった秘訣を教えていただきました。

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大事だったことは、応援してくれそうな方には都度都度、お話していたことだと思います。言いふらした結果、相手がほかの方につないでくれたり、背中を押してくれたりしました。実現したいことを声に出してみるのは大事だと思います。輪が広がっていくことが嬉しいなと思います」

霍野さんは、行政が開くイベントや交流会などに毎回参加して「言いふらしていた」そうです。面白がってくれる人がいそうなところに、好奇心が赴くままに出向いたというのが、自然体で想いを伝えて仲間を増やすことにつながっていたのかもしれないと思いました。
出向いて「言いふらす」のに躊躇してしまうときは、1対1の場面から始めてみたらいいとアドバイスをくださいました。

「僕は1対1の場面で積極的に言っていました。まとまっていなくても妄想でも、面白がってくれる人はいらっしゃると思うんです。お宝バンクやセミナーがそういう機会になると思います」


霍野さんのお話を聞いて岡本さんも、対面で人と会うことの大切さに共感されたようです。

「チラシ、SNSなど、ツールはあるけど使いこなせない人が多いんです。一番効果があるのが、対面して話すこと。それを繰り返すのが建設的だと思います」

人と会う原動力になるのが、「やりたい」と思う気持ち。語ってみる相手は意外と身近にいそうです。

面白いことをやりたいと思う気持ちが大事です。新しいことをする人は少数派で、そこから仲間を見つけていきながら広がっていくもの。つながる相手がいる場所は家族や友達だったり、意外と身近だったりします。仕事でも飛び込みでいくのは難しいですが、お客さんにお客さんを紹介してもらうのは安心して話を聞いてくれます」(山下さん)

身近なところから口コミで広げていくという、なんともシンプルで基本的なことが大事なんだなと改めて感じるお話でした。

Q&Aタイム

続いて、参加者同士のブレークアウトセッションを経て、全体でQ&Aの時間に移ります。

チラシは使いこなせない人が多いという話が出ていましたが、どんな風に使うのが効果的なんでしょうか?

手渡しで関係者に渡すのが、チラシの一番効果的な使い方です。相手先がチラシをどう使われるかが肝になるので、どう使ってほしいかを伝えるのが大事ですね。
デザインはそんなに凝らなくてもいいので、なにを実現したいのか、思いをしっかり伝えたらいいと思います。受け手がほしがっている内容が載っているかが大事です。受け手が何に心が動くのかを分かったうえでチラシをつくることです」(岡本さん)

ネットが苦手な方向けに、チラシの下半分を申込書にするのもいい、と山下さんからもアドバイスをいただきました。
身近なところから事業の話を持ちかけ、相手の反応を見つつ、事業の中身や伝え方を工夫していく。それを繰り返していくことでニーズをつかみ、結果的に仲間も資金も集まっていきそうな気がします。

ゲストからのメッセージ

最後にゲストのお二人からのメッセージです!

活動をなんのためにやっているのか、何につながるのか、どんな不具合が起こってしんどい人がいるのかを伝えることです。伝えた結果、ボランティアで帰ってくるかもしれないし、資金で帰ってくるかもしれないし、口コミで広げてくれるかもしれない。それは受けとめた人がどう行動するか次第です。行動する仲間をどう増やすのかが大切です。その行動はいろんなやり方があるので、相手に委ねていく。こういう形で取り組んでいただければと思います」(岡本さん)
「何をするにしても、先立つものが必要ですよね。それはお金だけじゃなくて人のつながりもそうだと思うんです。同じ共通価値をもつ人とうまくつながることは、お金の調達以上に、人とのつながりの調達になると思います。直接お金での支援だけでなく、ノウハウ、行動でお手伝いしてくれる方は多いです」(山下さん)

「お金を集める」 
それにとらわれることなく、純粋に思いを伝えて共感する仲間を増やす先に、お金もついてくるんだなと学ぶ時間でした。事業に取り組む想いを伝えたリターンは、資金もノウハウも人脈も様々です。それを感謝し、楽しみながら活動を広げていったらいいんだなと思うようになりました。

ゲストのみなさん、参加者のみなさん、そしてここまで読んでくださった読者のみなさん、ありがとうございました!

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