つながり促進プログラム#01 「より心地よい関係を増やしていくための,グッドアクションの作りかた」
京都がもっとよくなる、もっと住みやすくなる、まちづくりの取組提案を募集し、提案の実現に向けたサポートを行う“みんなごと”のSDGs,レジリエント・シティ推進事業。
まちとしごと総合研究所では、「まちづくり団体、NPO、企業、行政、大学関係者等」の異なるセクターの様々な主体が共通のゴールを掲げお互いの強みを出し合いながら地域課題の解決を目指すための学びの場を開催しています。
2021年度の公開講座はオンラインでの3回シリーズ。今回の記事では、11月11日に開催され、36名が参加された第1回の様子をお届けします!
11/11(木)つながり促進プログラム#01
「より心地よい関係を増やしていくための,グッドアクションの作りかた」
ゲストトーク① 中間支援と木工という「遊び」
1人目のゲストは、特定非営利活動法人テダス 理事長の高橋博樹さん。
話の前に気になるのがこの帽子。
「みなさん、今日は何の日か知っていますか?」
「11/11は勝手に鉛筆の日と決めているんです」
と、鉛筆の帽子をかぶって、地域づくりと木工家の2つの活動について話してくださいました。
地域づくりに関して、高橋さんは「特定非営利活動法人テダス」という団体を2012年に立ち上げ、NPOや個人のみなさんの課題を一緒に考える「よろず相談所」を運営されています。
「企画を事業化するのにアイデアがほしいと相談が来て、一緒に考えます。相談に来られるということは、課題があるということ。課題が何か考えるのが楽しくて相談所を続けています。」
例えば、南丹市の子育て支援課からの依頼相談で、婚活パーティーを開くことになりました。ただ婚活パーティーをしたところでおもしろくないので、「その前のセミナーに力を入れたらいいんじゃないか」と、「男前道場」というセミナーを企画されました。
「鍛えたら婚活で選んでもらえる可能性が高くなるし、そうでなくてもその後の人生に生かせると思いました。婚活パーティーのためにお金を使うというよりは、無形財産になるセミナーに力を入れたものです。」
これの評判がよく、南丹市の議会にも取り上げられました。そこから女性も参加しやすいように、チラシデザインや打ち出し方を変えながら継続されています。婚活パーティーでは毎年1組の結婚報告があるそう。
このように「おもしろさ」を追求しながら、どこに力を入れるべきか、何が価値をもたらすのかと元の案件を編集するプロセスが、課題設定と企画なのかもしれないと思いました。
高橋さんのもう一つの顔は、「NPO法人 京都匠塾」を運営する木工家/えんぴつまん。
工芸品のレンタルや、中学校でのおはしづくり教室、鉛筆削り大会を開いてらっしゃいます。「全国えんぴつけずり大会」は、小刀1つで鉛筆を削り、美しさを競うという大会ですが、近くに住むみさきくんという男の子を喜ばせたいと思って始められたものです。
「誰を幸せにするための企画かを明確にしています。ものづくりが好きな子は脚光を浴びる機会が少ないですが、全国大会で優勝したら自信になるだろうと思って大会をつくりました。みさきくんが喜んでくれたらこのイベントは成功です。」
これを聞いて、ここまでターゲットを具体的に定めるなんて!と思いました。事業規模が大きくなるほど、事業を「数値」で取り扱うことが多くなりがちだと思いますが、相手の顔をイメージしながらその人の心に届ける想いを持って事業を企画することを忘れてはいけないと思いました。
ゲストトーク② 謎解きとチャンバラという「遊び」
2人目のゲストは、BOUKEN WORKS Inc. 代表取締役の吉野 禎央さんです。吉野さんもユニークな2つの顔をお持ちで、なんと自治体向け謎解きイベント主催者と、戦国武将という組み合わせ。謎を出題しながら、遊び心満載で活動紹介をしてくださいました。
例えば、吉野さんが作成された謎解きがこちら。みなさん、解けますか?
(答えは、このページの一番下に。)
「マップ、看板など現地の情報を使って謎をつくります。一番大事にしているのは、地域の歴史、文化、特徴などを楽しく伝えることです」
そう語られる背景には、勉強が嫌いで地域への興味も薄かったご自身の経験があり、「遊びで勝手に学ぶのが理想だ」と考えるようになったことがあるそうです。
事業をつくる際には「自分が参加者だったら楽しいか」の視点が大切そうだなと思いました。
このように吉野さんは地域の文化や歴史を楽しい謎解きに仕立て、1万3千人が参加された福島県内16市町村連携事業や、環境省の事業として採択されたワ―ケーション推進ツアー、ワークショップで市民が謎解きをつくる「日本遺産宝さがし」などを運営してらっしゃいます。
そして気になる「戦国武将」の活動は、半兵衛というチャンバラ合戦の開催。全国の、お城や戦場がある全国の自治体で開催されている、大人も子供も楽しいイベントです。
「大事にしているのは、自分の「好き」や「やりたい」で、誰かの課題を解決することです」
吉野さんのお話からは、まずは自分が好き、面白いと思える正直な気持ちを原動力にして課題解決に生かすという、ポジティブでまっすぐな企画の姿勢が学びになりました。
ゲストトークセッション
ここからは高橋さんと吉野さんに同時にお話を伺うゲストトークセッション。「遊び」と「面白さ」を深掘っていきます。
高橋さんは、「ちゃんと遊んでいるか」を大事にされます。
「ちゃんと遊ぶとは、自分が楽しんでいて、相手を楽しまそうと努力していること。ちゃんと遊ぶと、ターゲット以外の方も楽しめるはずです。まじめに遊びを足すのではなく、遊ぶのがメインです」(高橋さん)
吉野さんの「遊び」へのこだわりも聞いてみました。
「どっちかが負けることはしたくない。ちゃんと遊ぶ、と近いのかなと思いました」(吉野さん)
遊びを通してつくりたい場を聞いてみると、その人の優しさや信念が見えてきました。それでも、遊びに乗ってくれない人がいたときはどうするのでしょうか?
「無理には誘いません。でもその人がどうやったらおもしろがってくれるのか試行錯誤するときに、また面白さが加わり、企画がブラッシュアップされると思います。」
相手が好奇心で自ら参加してくれるように企画をブラッシュアップさせるのが、企画のポイントのようです。さらに、企画で大事にしていることを聞いてみました。
「誰を喜ばせたいのか、ターゲットを固有名詞レベルまではっきりさせます。そのほうが企画の解像度が上がります。事業評価の本質は、数値ではなく、喜ばせたい人が喜んでくれたかどうかだと思います。」(高橋さん)
では、そのような事業をつくるにあたって、事業仲間のモチベーションを上げるにはどうしたらいいのでしょう?
「コロナの状況などで、できないことがあるのは仕方がないです。でも、何をしたい?とメンバーに聞きます。立ち止まるよりも、できることを探します」(吉野さん)
「楽しみ方を見つけておきます。企画会議そのものが楽しかったら、たとえ実行されなくても成功だと思っています」(高橋さん)
そして、企画会議を楽しくするポイントとして「報連相を使い分けること」を教えてくださいました。
報告は過去のこと、連絡は未来のこと、相談は現在のことです。
会議で一番話したいのは、現在のこと。過去や未来が混ざるとややこしくなるので区別すること。さらに現在のことを話す中で、発散と収束をきっちり時間で区切ることも大事です。発散の際に意見の否定をしないというルールをつくると意見を出した人が傷つかず、意見が出やすくなるそうです。
また、オンラインに抵抗があるときの企画も悩みどころですが、そういう状況さえもチャンスに変えます。
「オンラインであることも、日本人であることも、どの状況も与えられた状況です。その中でどう考えるのかが企画の醍醐味です。○○だったらよかったのに、と考えたらあらゆる可能性が飛んでいきます。制約があったほうがおもしろいと考えるんです」(高橋さん)
このように制限や枠の中で、いかにチャンスに変えていくかの発想の大切さが学びになりました。
グループワーク
続いては参加者グループに分かれて感想や疑問を分かち合います。
「楽しそうに話しているのが素敵だと思った」と中学2年生の参加者の方が話してくださったのが印象的でした。中学生にも「少年らしく」見えるように、純粋に楽しく事業に取り組む姿勢を持ち続けていたいなと私も思いました。
参加者の方の感想
「与えられた状況、条件の中で遊ぶ!楽しむこと。また現在の相談や打ち合わせの質を高めていきたいと思いました」
「繋がっていくっていいなと感じられたのが大きな収穫です!企画会議での、発散と収束。誰かを楽しませたい、喜んでもらえたい気持ちがあるもの同士の何気ない会話から新しい発想が出てくるんだと感じました。」
「楽しい、面白いことを企画をつくる基準にすること。1人のターゲットのために企画するという振り切り方がすごいと思いました。」
遊び、楽しむ心は、質の良い事業を生み出すリフレーミング力や思考のポジティブさなのかもしれません。
ゲストのみなさん、参加者のみなさん、そしてここまで読んでくださった読者のみなさん、ありがとうございました!次回の講座もぜひご参加ください!
第2回
11/17(水)つながり促進プログラム#02
「情報伝達だけでは終わらない,ファンづくりのための広報」
第3回
12/1(水)つながり促進プログラム#03
「共感の視点から考える,持続可能なアクションのための資金調達」
(吉野さんの謎解きの答え:「小泉八雲記念公園へ向かえ」)
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