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【イベントレポート】X Cross Sector Kyoto 2021キックオフ -変化の時代における、新たな価値の共創とは-

多様なセクターのプレイヤーが集い、対話を通じて社会の課題にアプローチしていくX Cross Sector Kyoto(クロスセクターキョウト)。
広く市民から「京都がもっとよくなる」「もっと住みやすくなる」まちづくりの取組提案を募集し「まちづくり・お宝バンク」に登録・公開するとともに、提案の実現に向けたきめ細やかなサポートなどを行っています。

3年目となる今年は、SDGs×まちづくりの最前線で活動される3人のゲストをお迎えし、2021年8月28日(土)にキックオフを開催しました!50人以上の方にご参加いただいた当日の様子をイベントレポートでお届けします。


ゲスト1 藤田 裕之さん
(レジリエント・シティ京都市統括監)

1人目のゲストは、レジリエント・シティ京都市統括監の藤田 裕之さんです。藤田さんからは、SDGsとレジリエンスの基本概念について、京都の伝統的な慣習と関連させながらお話してくださいました。

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SDGsには17のゴールがありますが、各ゴールを結びつけるのがポイントだといいます。17枚の板からなる樽に水をためていくイメージで、すき間があったり長さが違ってたら水が漏れてしまいます。各ゴールを結びつける鍵となるのが、レジリエンスです。

「持続可能性とレジリエンスは車の両輪の関係です。落ち込むことがあっても、持ち直す力がレジリエンス。レジリエンスの繰り返しが持続可能性です。」

京都市は2016年に、ロックフェラー財団の提唱による「世界100のレジリエント・シティ」の一つに選ばれました。レジリエント・シティとは、「あらゆる自然災害やテロ、サイバー攻撃といった混乱等に耐え、可能な限り早急に復旧し、より強靭になっていく都市」のこと。財団が2013年から3年をかけて世界の100都市を選定し、レジリエンスの構築に向けた財政的、技術的支援等を提供しているものです。
それを受けて2019年3月に、レジリエンスと持続可能性、地方創生を織り交ぜて京都市レジリエンス戦略が策定され、持続可能なまちづくりに積極的に取り組んできました。

これらはごく近年の動きという印象ですが、SDGsの例を地域の中に探してみると、たくさんあることがわかります。例えば地蔵盆、自主防災会、天ぷら油の回収、子供見守り隊などです。もともと京都の人たちが大切にしていた「暮らしの哲学」「生き方の美学」の中にSDGsと通じるものがたくさんあるんだなと気づきました。

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このような取り組みをさらに発展させるためには、コミュニティの強化がポイントだといいます。

「NPO、SNSなど新しい団体や技術と、旧来の地縁組織が融合した新しいコミュニティが必要になってくると思います。企業、行政、大学、市民が志でつながるネットワークです」

その上で、区役所の役割が重要だと伝えてくださいました。区役所は学校、地域、行政の連携の要であり、市民のまちづくり参画への拠点になるといいます。
藤田さんのお話を聞いて、京都のこれまでの慣習の中にヒントがたくさんあることに気づきました。新しいことを始めたり考えたりするだけでなく、すでにあるものに目を向けることも大切だなと感じました。そして区役所との連携の形も、まずは連携して一緒に模索していくのが良いのかなと思いました。

〈参考〉京都市主催のレジリエンスフォーラム


ゲスト2 野村 恭彦さん
(Slow Innovation株式会社)

続いてのゲストは、Slow Innovation株式会社の野村 恭彦さんです。野村さんは、京都市のレジリエンス戦略の方向性を示してくださりながら、協働を起こしやすくする環境づくりについて語ってくださいました。

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そもそも戦略とは、いかにして卓越した業績を達成するのか、その方法を説明するものです。一位を目指した競争ではなく、独自性を目指した競争が資源の奪い合いが起きづらく、豊かさをもたらしてくれます。では、京都市はどんな都市経営戦略をもって運営していくのがよいでしょう?

「自分たちのポジショニングを明確にすると、どんな人に来てもらいたいかを明確にすることができます。重要なのは、戦略は行政だけでなくみんなでつくるものだということです。「京都市(行政)」と、現在の企業・NPO、未来の起業家からなる「京都企業」のみなが一体となって動く都市経営戦略を、京都市は持つことができるんじゃないかと思っています。」

そのために大切なのが、まちのプレーヤーみんなが相互作用してイノベーションを起こしやすくする場(生態系)をつくること。市民の自発的な活動を応援し、京都市全体にインパクトがある形に大きくしていくとき、協働は資本になります

「京都市はもともと文化資本が豊かでしたが、協働資本も豊かな地域だという戦略を今後は取っていくことが可能になると思います。」

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このような野村さんのお話からは、行政レベルで京都の魅力と協働を資本としてはっきり捉え、戦略的に行動を起こすのが大事だと学びました。そのためには、私たち市民の側が身近なところから楽しみながら行動を起こすことで、ボトムアップでイノベーションを起こしていくことが大切だと学びました。

〈参考〉京都市の現状と都市経営戦略について野村さんが書かれた記事


ゲスト3 たいら由以子さん
(ローカルフードサイクリング(株))

3人目のゲストはローカルフードサイクリング(株)のたいら由以子さん。地球全体の環境の変化から自分たちの食事までを、コンポストの循環圏の中でつなげて話してくださいました。

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たいらさんがコンポストを始められたきっかけは、お父さんの肝臓がんでした。食養生で玄米と無農薬野菜の食事に切り替えたところ、顔色が透き通るように良くなりました。ただ、無農薬野菜を手に入れる苦労は大変なものでした。
そこから、2つのことを学ばれたそうです。それは、今の世の中は持続不可能だということと、食は命だということ。そして、「まちから取り組める持続可能な暮らし」を探して徹底的に取り組まれました。そして行き着いたのは「土」でした。

「すべての生命が土から生れているので、土を改善しないといけないことを実感しました」

そしてたいらさんは、都会をフィールドにして動き出します。

「田舎が良くて都会が悪いというわけではありません。都会の最大の資源は生ごみが集中していること。これを、「都会から」資源化することを目標に定めました。」

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「徹底的にコンポストに特化しておたくになろう」という決心もして、自分ごととして参加する人が増えて加速化するように、半径2キロ圏内で循環する食糧システムを構築されました。堆肥・野菜づくりの拠点として各家庭やコミュニティガーデン、高齢者住宅、ビルの屋上など、様々なモデルを作られました。

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このお話を聞いて、環境システムの範囲をしぼり、体感できるものに落とし込んだ縮小版を身の周りにつくることで、自分ごととして興味を持って楽しく参加できる「循環生活圏」が新たに生まれるんだなと感じました。

たいらさんがコンポストの取組みを通じて大事にされているのは、「楽しい循環生活とパブリックヘルス」です。自分たちの健康が良くなることを実感しつつ、地球の寿命も伸ばしていくという、楽しみながら足元から地球環境にインパクトを与えていく姿勢が学びになりました。

〈参考〉10万年安定していた気温が、この50年ほどで上昇幅が最大2度に

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ゲストトークセッション

続いて、ゲストのみなさん同士のセッション。お互いの話を聞いて感じたことや知ったことを共有するうちに、新たな構想が広がる時間となりました。

たいらさんのお話からは福岡から見た客観的な京都の特徴に気づきます。

「福岡も市民活動は活発ですが、全体で1個という感じではありません。今日みたいな、知識ネットワークであり実践共同体にもなりうる集まりが動いていくことは大事だなと思いました。京都は観光資源も含め、資源が豊富だと思います。」(たいらさん)

市民活動の始まりは、正しさより楽しさの方が広がりやすそうです。

「北山の商店街の方とつながってSDGs勉強会を始めたんですが、商店街の方と一緒に組むと、活動の動機が「その方が正しいから」ではなく「その方が楽しいから」になりやすいです。農家さんから変形した野菜を刈り取ったり、ジャムにして商品化できないか試作したりしています。需要側と供給側は分かれがちなところを、たいらさんがおっしゃったような2キロ圏内という風に近づけると、自分の生活と供給側が近づいて楽しいです。」(野村さん)

このようなポジティブな活動を行政が支えられるとよさそうだと見えてきました。

「行政はそういった活動を応援するような政策や条例をつくっていくといいと思います。すると、それに付随する産業も生まれてくる脱炭素産業で京都の1000年後をつくれたらいいなと思います。」(野村さん)
「まさにそういうモデルになる必要があるし、それが京都のアイデンティティになればいいなと思っています。便利さや経済性だけを追求する都市モデルは限界が来ています。京都は街中から周囲の山が見えるように、経済効果よりも街並みや借景を優先してきました。自然の恵みを大事にしながら都市生活を謳歌できる、東京型ではない都市生活を京都から発信できればいいなと思います。」(藤田さん)

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参加者同士のグループセッション

後半は4人1部屋に分かれて、ゲストトークセッションの感想や取り組みたいテーマについて参加者同士で話しました。
 
堆肥化できるオムツの事業化に取り組まれている、ドイツからの参加者もいて、環境問題の取り組み方への視座が一段と高まりました。ヨーロッパの方が市民の環境活動は盛んですが、行政がビジョンを出している点では日本の方が進んでいる印象だそうです。同時にそれは、市民からの突き上げが日本はまだまだ弱いということでもあります。

京都出身の人がいない部屋では、「京都いいよね、絶対に住みたい」と思わせる不思議な惹きつける力が、京都という土地にはあることに共感しあったようでした。

桃農家さんやコンポスト経験者がいるグループでは、参加者の中で循環モデルを考えた部屋もありました。

「コンポストでつくった堆肥を桃の苗にあげて育て、桃の節句のときにみんなで桜餅をつくったり、苗や種の交換会をしたりできそうだと話が膨らみました。」

また別の部屋では、いかに広い層を活動に巻き込むかについて盛り上がりました。いろんな分野の人に来てもらうためにはやはり「楽しいテーマ設定」が鍵になりそうです。

「刑事をしていたとき、警察の防犯教室はつまらなくて子供たちが集まりませんでした。ですが警察官と子供たちでリアルケイドロをしてから防犯教室をすると、子供たちはめちゃくちゃ楽しんでくれました。関心がない人に来てもらうためには、楽しい入り口と自然と学びにつながる流れが大事だなと思いました。」

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まとめ

環境問題はシリアスで大きな問題というイメージを持ちがちですが、今回のイベントを通して、すでにある慣習やご近所づきあい、楽しいイベントの中に活動のヒントがたくさんあることに気づきました。日常の見方を変えて、まずは参加してみるところから。

9/8(水)からはセッションプログラムが始まります。関心ある方はぜひご参加ください!キックオフの参加者のみなさん、ゲストのみなさん、ありがとうございました!


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