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読書録/歩きながらはじまること

「庭文庫」を訪れた際に、ひときわ私の目と心を引いたのがこの本だった。日頃、詩集を手に取ることは滅多にないのだが…妙に気になり、購入した。人生2度目の詩集。

読み始めたとたんに、ああこれはいい本だ、と思って、ちびちびと読み始めた。

朝に珈琲を飲みながらだったり、
午前8時通勤バスの中揺られながらだったり、夜諸々が落ち着いた後にだったり。

もったいぶりながら、ページをめくる。すべて読んでしまうのが惜しいほど。

最近は心がユラユラとしていた。なんかちょっと、つかれたな、と思うことが多くて、衣食住もちゃんとできなくて。
でもこの本を読んでいると、ふやふやに、自由に、穏やかに、なれた。

読み終わってしまって、ちょっとまた元通りになって、安寧を求めているけど。
拠り所が見つかった感じ。いつでもまたページをめくれば救われる。

のほほんと飄々と、町と散歩を愛する西尾さんならではのタイトルが乳白色の美しい表紙に映え、正方形に近い柔らかな造本も手に取りやすい優しい姿の一冊。西尾さんがこれまでゆっくりと歩んできた詩作の道をたどる本書は、装丁そのままに薄日が差す午後の通りをのんびり行くかのような空気に満ちています。それぞれの詩から醸し出される飄逸としたユーモア、独特のリズムを持った周囲とのまじわり、一人きりの思索。それらは読む人に懐かしさと新たな発見をもたらしてくれるでしょう。
『歩きながらはじまること』(恵文社HP)