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設計図と模型からはじまる。(after展覧会No.11「菊竹清訓 山陰と建築」展)

はじめに。

皆さん、こんにちは。
アートブロガーの町平亮です。
さっそく、本日のafter展覧会のレポートになります。

「菊竹清訓 山陰と建築」
会期:2021年1月22日(金)~3月22日(月)
場所:島根県立美術館

before展覧会の記事はこちらです ↓

なお、今回は展覧会だけではなく、訪問日に催された記念講演会にも参加しました。これはまた別記事で感想をアップします。

建築系展覧会をいかに見るか。

絵画や工芸の展覧会をメインに行っていて、建築に関する展覧会ははじめて行きました。
また、菊竹清訓氏のこともこの展覧会の開催をきっかけに調べた次第です。
本展では主にどのようなものが展示されていたかと言いますと、
・設計図面
・建築模型
・目玉企画
・建築年表
それでは一つずつ見ていきましょう。

設計図面を見せられて。

不動産の間取り図なんかを見るのが好きな方は、楽しめるのかもしれません。建築初心者の私はそんな設計図目線を持ち合わせておりません。
では、どんなところに目がいったかというと、書き込まれている文字です。菊竹氏ご本人の筆跡だとは思いますが、文字が可愛らしくしかも読みやすい。小さい文字で書き込まれているのに、流れ文字になっておらず目で追っても苦痛に感じませんでした。それにしても、CADなんてなかった時代。図面をひくのも全部手書き。素人でもその精密さには驚きました。

建築模型も作品のひとつ。

これは記念講演会で聴いた話ですが、西欧では日本以上に建築模型を作品として捉えて、展示や保全がされているようです。
ドラマ「名建築で昼食を」で、建築倉庫が紹介されていたのを思い出しました。

建築模型はそれが制作された段階では、関係者しか見ることができないものです。制作者はまさか美術館の展覧会で展示されるとは、よもや思っていなかったでしょう。実際の建築物を見るのと、その模型を見ることは違った楽しみがあります。アクリルや木材が素材となり、色彩が付けられていないものがほとんどでしたが、それがかえって味わい深さを演出しているように感じました。よく見ると小さな犬か猫がちょこんといたりとか、生活感を垣間見せてくれるものもありました。

目玉企画はスカイハウス。

通称スカイハウスと呼ばれている菊竹氏の自邸があります。
1958年に竣工された家で、正方形のワンルームが屈強そうな4本のぶ厚いコンクリート柱で支えられている、あるいは持ち上げられているように見える建物です。インターネットで検索して頂ければ、当時の写真が見られると思います。
本展ではその実寸大の屋根の部分が展示室に鎮座しています。
ここだけ写真撮影が可能でしたが、会場の高さいっぱいに再現されているので、まったく上手に撮れませんでした。写真上部が切れてしまっていますが、そこに肝心の屋根があります。

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建築年表で最後の驚き。

展覧会によっては、出口間際の壁にアーティストの生涯年表が掲げられていたりしますが、今回は菊竹氏が設計に携わった建築物がすべて年表化されていました。
じっくり拝見すると、今までに住んできた場所で身近に在ったり、自転車でよく通りかかっていたり、などしていた建物もありました。
年表には公的な施設だけでなく、信用金庫とかショッピングセンターとかもあり、事務所として請け負っているはずなので、所員の方々で分担されていると思いますが、その完成件数に圧倒されました。

おわりに。

before展覧会の記事のタイトルは、「建築か建築家か。」でした。
そして本日のafter展覧会では、「設計図と模型からはじまる。」にしました。
当然のことながら建築系の展覧会といっても、美術館の中に実際の建物を運んで展示することはできません。そうなると、イメージボードのようなスケッチや設計図面、建築模型が展示物の主なものになります。
建築家にとってそれらは多くの人に見てもらっても構わないのか、または出来るなら見せたくないのか、色々と考えてしまいました。
けれども、前述のとおり優れた建築模型は作品として保存されています。私だけではないと思いますが、どんなジャンルのアートでも完成品よりもそれがどのようにして出来上がったのか、を知る方が興味深い場合があります。アーティスト泣かせな心情かもしれませんが、メイキング映像を見て、こんなにも心血を注いで作られたのかと思いたいのです。完成作品の美と同じくらいに、制作過程の血と汗と涙が美しく思えてなりません。

本日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。

((タイトルで設計図と模型からはじまる。と言い切ってしまいましたが、建築家の方からしたらそれ以前からもっと始めなきゃならないことがたくさんある、と言われそうです))

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