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[016]節約・貯蓄・投資の前に今さら聞けない お金の超基本|今月の一冊〈2020年5月〉


こんにちは、まっちゃんです。

年齢をひとつ重ねるにあたって大手保険会社が提案している個人型の確定拠出年金を始めてみたり、ふるさと納税の返礼品を選ばずにそっちのけにしてたことを思い出したりと、「お金」を身近に感じられる機会にできた一冊を紹介したい。

だいたいの書店で平積みされているのを見かけるが、なかには「1,200円+税、払ってもお釣りがきますよ!!!」といった書店員の熱い思いというか、魂のこもったポップが躍っていたりと、どうやら人気の書籍のようである。


①とっつきやすさ

どうして人気書籍になっているかと言えば、まずはなんといっても、表紙の“とっつきやすさ”は外せないと思う。

最近のビジネス書は、表紙をポップな絵柄にしてとっつきやすさを出しているものが多く、これもまた、インターネットとの攻防戦、マーケット対象(主に若年世代)が本をなかなか読んでくれない……などの出版業界を悩ませる死活問題から生まれた新しい本のカタチのように思う。

内容もシンプルで、お金の動きや専門用語が絵でわかるような構成になっていて、サクサク読めてしまう。
やはり、どのページから読んでもOKなところは、専門分野の入口とされる「新書」と比較にならないほど、とっつきやすい。
もし、わからない用語や構造が出てきても、前のページに戻っていけばわかるような、本当にカンタンな入門書だった。

ここで新書の悪口を言うわけではないが、本を読まなくなった世代(おそらく私も含まれるのでしょう)にとっては、新書を読むことすらキツいことが多く、ハードルは思った以上に高いことが往々にしてある。

入門書と呼ばれる書籍全体のあり方の潮目、変わり目なのかもしれない、なんてことをここ数年で感じる。

「堅苦しいものを読まない読者が増えた」、「インターネットの普及による出版業界の厳しい現状」など、出版社(著者)とマーケット(読者)の立場が逆転したことで、いわゆる「専門分野に足を踏み入れるなら、ガチガチの学術書を読むべき!」が、ほとんど効かなくなっているように思う。

一般にカンタンな本で踏み入れていくことにおいては、年配の方にちょっと叱られそうなのと、読んでミスリードが起きてしまいそうな側面もあるため、あまりオススメできない姿勢なのは確かな一方、時代の流れやニーズについていけなければ容赦なく振り落とされていくのも確かだということを考えれば、そうなっていった変遷理由や過程の評価を一度抜きにしたとして、読者の「読む(学ぶ)」スタイルが大きく変わった、ということなのかもしれない。

そうやって、出版する側から主導権を得た読者が最も優先した条件が「とっつきやすさ」だった、ということなのかもしれない。


②「お金」を学ぶ機会がほとんどない

今でさえ、ポイントカード化されたり、ICカードにチャージしたり、現物貨幣を伴わないキャッシュレス決済があっという間に生活の一端に入り込むなど、直接「お金」を触れなくなったことで、そこの部分を和らげているような気がしているが、「お金」と聞くと一般に日本では良いイメージがあまりないことが多い。

古来、日本では、「お金」という言葉は決して良いイメージをともないません。江戸時代より武士の中で「お金」は不浄なもの、「お金のことを口にする」のは下品なことである、とされていました。
(本書「はじめに」より抜粋)

なるほど、落語の噺を聴いていても「お金」の話題になった途端に、「卑しい」とか、「はしたない」とか、そういう言葉が随所に出てくるわけで、「昭和の時代までは『不文律』とされていた」ことは、日本社会で生活するほとんどの人たちにとって、当たり前すぎてあまり不思議じゃないように思ってしまう。

その「『不文律』とされてきた」歴史的な背景によって、弊害を受けている人がいるとすれば、新社会人はわかりやすい一例かもしれない。

世代や地域、家族構成によって微妙に異なるが、仕事のあり方が金太郎飴のように均一、一律に近かった昭和の時代に比べ、副職、転職、Wワークといった仕事スタイル、二拠点居住などの生活スタイルが登場してきている今、年金やら保険やらの選択肢(商品)が前の時代より多様になってきている。
一方で、そういう時代の到来をあまり想定しなかったのか、「お金」を勉強する、知るということに抵抗感を生むそのような「不文律」なこの社会は、「お金」をちゃんと学ぶタイミングを与えてこなかったという事態を引き起こしてしまったように思う。

実際のところ、商業科のある高校に進学した子や、経済や経営、商学系統の学部・大学院へ進学した子ぐらいしか、10~20代のうちで「お金」をしっかり学ぶ機会がない実情である。


逆張りの発想をすれば、この部分のおもしろいところは、「お金」の知識に偏差値はあまり関係ない、という点である。

一般に偏差値が高いとされる大学に行った私(教育学部卒)がまさに好例で、「可処分所得」も、「バランスシート」も、「年末調整」も社会人になって自分で調べて、やっとなんとなく知る程度だった。

それなのに、いざ社会に出た途端、当たり前のようにそんな用語が飛んでくるために、「えぇっと……その『ねんまつちょうせい』ってのは、いつやるんですか……あと、なんで年度ごとの計算じゃなくて1~12月くくりなんですか、それ……(ガチで困る)」となってしまった。商業科の高校生の方がよっぽどスムーズに理解できたと思う。

文系というそもそものハンデもあるが、関係した学部に行かなければ、大学では経済、経営、会計に全くと言っていいほど触れることはない。
自分からそういう講義を取りに行けば別だが、結局のところ、本課の講義を訥々とこなしていくため、社会人に必要不可欠な「お金」の知識を見る、触れる機会すらなく、卒業していく。


発想がねじ曲がっている私なんかは、「小中学生ならともかく、高校生以上の教育課程の必修科目に『お金』を扱わないのは、未来の税収が減るからだろうか…(飛躍)」なんてことも考えたが、国の真意がどうあれ、この本を手に取って読んでみる、みたいな行動をしない限りは、ずーーーっと「お金」について無知なままである。

また、今後の時代背景を鑑みれば、無知で損はすれど得をしない仕組みはどんどん加速して作られていくと思うので、やっぱり知っておいたほうがいい。

だから、私のように「お金」に縁遠い人にとっては、かなり有益な情報が詰まった本だと思う。


③すでに「1,200円+税」は回収した

その後も「ねんまつちょうせい」について、正直なところよくわかっていなかった私。

なんとなく、で済ませていた部分があったからだろうと思う。

でもそれは、会社の人事や福利厚生を担当している人がやってくれているからなんとかなっていただけ、と言い換えることができる。

例えば、コロナ禍の影響のみならず、次の時代にむけた組織の見直しとして―悲しいことに―人員の削減が一番手っ取り早く効果を生んでしまうため、人員削減のニュースがまたそこかしこで聞かれるようになった。

しかし職場をスリム化させた一方、なぜか「組織は存続(または、成長)させていかなければならない」という大前提には大きなメスが入らず、一人あたりの業務量が増えていくことは、みなさんご承知のとおりである。

流行りの「業務の効率化」によって業務のスリム化も幾分なされることもあるが、そういった変化の最中は特にミスや欠陥が生じる確率も大きい。

例えばそのミスが「ねんまつちょうせい」で起きた場合、どうなるだろうか。

「会社の担当者に任せておけばあとはぜーーーんぶ大丈夫!」という楽観的な考えは崩れ、「なにも知らない自分」を頼らざるを得ない状態になってしまう。ここまで想定しなければならない。これが一番怖い事態だと感じた。


個人的には、今回の確定拠出年金の開始でこの本の元は取れたように思う。
この“とっつきやすい辞書”を手元に置いて、どんどん無知を蹴っ飛ばしていきたい。
学校現場でカバーができない等、いろいろと考えなければならない点もあるが、アレコレ言っていても始まらない。

ちょこちょこ、確実に吸収していきたいところである。


『節約・貯蓄・投資の前に今さら聞けない お金の超基本』(坂本綾子/朝日新聞出版)

Index
Chapter 1 お金とは?
Chapter 2 稼ぐ
Chapter 3 納める
Chapter 4 貯める
Chapter 5 使う
Chapter 6 備える
Chapter 7 増やす


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